時々の雑記帳

音楽のこと、ポリーニのこと、日々の雑感を、
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(4月〜6月)

Im wundershoenen Monat Mai
「肺の中まで緑色になっているような〇〇より」 山国に住む友人からの便りです。いつもなら遅い春が訪れ、いろいろな花々が一斉に咲き出す5月。一年で一番美しい季節が今年は早くも過ぎて、今は見渡す限りの緑・緑・緑・・・だそうです。

今年は季節の移ろいが早いのでしょうか。梅が次々と咲いて春めいてきて、3月には白木蓮が、すぐに紫木蓮も咲き出し、半ば過ぎには桜が早い開花を迎えたと思うと、あっという間に何処もかしこも満開に、山桜や八重桜も続き、そして葉桜に。4月、柔らかい緑の中にハナミズキの白、紅が映え、月半ばには藤の花房が風に揺れて、新緑が広がる中に赤、白、ピンクのツツジが鮮やかな彩りを添え、5月には木々の緑が濃さを増してきて、乳白色のヤマボウシの花がクッキリと青空に映える・・・。
そして今は、はしり梅雨のような不安定な空の下、紫陽花が色づいてきています。

Stay Homeのなか、小一時間のお散歩を日課とする私には、街や公園や家々の庭に咲く花を見るのが楽しみで、今年はやや早い季節の移ろいに目を見張りながらも、ゆっくり味わうことが出来ました。
花々が開く様は稚い命が生まれ出るかのよう、木々が緑の葉に覆われていく姿は生命の強さを目の当たりにするようで、その瑞々しさ、旺盛な力に、コロナ禍の暮らしの閉塞感も、少しは拭い去られるような気がします。

梅雨入りも例年よりずっと早く、九州・東海でも豪雨に襲われているとのこと、お見舞い申し上げます。四国・中国、近畿・東海も梅雨入りし、関東・甲信越地方も間もなく梅雨の雲に覆われるのでしょう。長い梅雨になるかもしれず、また大雨の危険もありそうで心配ですが、コロナ禍の今年は、何より安全・安心(聞き飽きた言葉ですが)に、健康第一に過ごしたいものです。穏やかな静かな雨季であってほしいと願うばかりです。
体調を崩しやすい時季ですが、ワクチン接種もそろそろ始まる頃(若い方々にはまだ先の話かもしれませんが)、どうぞ皆さま、お身体に気を付けてお過ごしください。

ヨーロッパでは何回目かのロックダウンを経て、コロナの収束の道筋も、弱い光ではあっても見え始めてきたところでしょうか。
パリではルーブル美術館が再開し、入館者数が限られて入口には行列ができたものの、内部ではゆっくり鑑賞ができたと、報道で知りました。テラス席の営業が始まったカフェにも、ティータイムを楽しむ市民(マクロン大統領も!)の姿があったそうです。

またスペイン、オランダではテストコンサートが開かれているとか。感染拡大につながらない形でのイベントの開催方法を探るために、1500〜5000人規模で、参加者はPCR検査で陰性を確認し、マスク着用で行ったそうです。結果は「感染のリスクが高くはない」とのこと。ベルギーやフランスでも検討され、オランダではサッカー試合でも10000人規模で行われたとか。
ワクチン接種の効果もあり、コロナ禍の出口がそろそろ見えて来て、文化・芸術・スポーツ活動の再開が模索されているようです。変異株など未知のモノやコトに不安は尽きませんが、この流れが順調に進むようにと祈る気持ちです。
周回(1周or2周or more?)遅れの日本では、実施はもちろん、計画すら出来ないようなイベントですが、今後の参考にはできるかもしれません。(“一大国際スポーツ祭典”には、とても参考にならないと思われますが・・・)

イタリアでも4月下旬から、多くの州でコロナの感染が抑えられているとして、外出規制や店舗の営業の制限が緩和されたようです。カフェやレストランも屋外での営業が始められ、映画館、劇場、コンサートホールは収容人数を50%以下、または500人(屋外では1000人)を上限として、再開され、各地で音楽会も開催されはじめました。

マエストロ・ポリーニは5月16日、ヴェルディ音楽院のホールでミラノ・ムジカの演奏会に出演されました。昨年秋に予定されていた公演で、創立者のルチア・ペスタロッツァ女史とクラウディオのアバド姉弟に捧げられました。プログラムはシェーンベルクとノーノの作品に、当初のベートーヴェンから代わって、シューマン「アラベスク」、「幻想曲」が奏されました。
500人ほどの聴衆を前にした久しぶりのライブ演奏会、マエストロも感慨深く、聴衆と喜びを共にしたことでしょう。収益は新作の委託のためにミラノ・ムジカ創設の「新しい音楽のための基金」に寄付されました。

ミラノ・スカラ座では5月10日シャイーの指揮でスカラ座再建75周年記念の演奏会がありました。大戦後の1946年5月11日のトスカニーニ指揮の演奏会へのオマージュで、ヴェルディ、パーセル、チャイコフスキー、ワグナーなど多彩な曲が演奏され、Rai等により放送、ストリーミングでも鑑賞できるようになっていました。
翌11日には、ムーティ指揮のウィーンフィルの演奏会で、メンデルスゾーン、シューマン、ブラームスの曲が演奏されました。これはウィーンフィルのイタリア・ツアーで、9日ラベンナ、10日フィレンツェと3日連続しての公演でした。
17日にはハーディング指揮で「新世界から」などの演奏会。これらの3公演は“当面の規定により”500人以下で、ギャラリーとボックス席にのみ聴衆を入れて行われたそうです。

その後のANSAの報道で、ポリーニのリサイタルが6月25日にスカラ座で予定されていて、その日から、聴衆はplatea(平土間)に座れる、との記事がありました。それまではオーケストラ団員のディスタンスを確保するためにplateaの座席を取り外していると。
エッ? どういうこと?と思いましたが、平土間一杯に舞台を作り、オーケストラを拡散させる、コーラスが入る場合はステージを使う、ということです。なるほど、それで聴衆はギャラリーとボックス席のみ、なのですね。ホールの平面全部に拡大するオーケストラ・・・どんな響きになるのでしょう?

“スカラ座の桟敷席”・・・憧れではありますが、マエストロ・ポリーニのピアノ・リサイタルは、やっぱりplateaで聴きたい・・・ですね。どうぞお元気で、素晴らしい演奏会となりますように。

フィレンツェでは、第83回フィレンツェ五月音楽祭が始まりました。4月26日ガッティの指揮、ストラヴィンスキーの没後50年を記念して、詩篇交響曲、交響曲ハ調で幕を開けました。ハーディングがチレア「アドリアーナ・ルクヴルール」(全4回あり)、翌々日にはモーツァルト「レクイエム」を、5月になると5日チュン・ミョンフン指揮でマーラー「交響曲第2番」、数日後に同「交響曲第9番」。10日にはムーティ指揮ウィーンフィルが登場。
19日はメータ指揮プッチーニ「トスカ」の演奏会形式での上演。この日は数日前に85歳の誕生日を迎えたメータを称える会でもありました。音楽界の大御所ともいうべきメータさんはこの音楽祭の名誉指揮者であり、今年も「トスカ」を5回指揮し、ブラームス・チクルスとして交響曲4曲、ヴァイオリン協奏曲、ヴァイオリンとチェロの協奏曲、ピアノ協奏曲2曲を4夜にわたり演奏と、大活躍。お元気で何よりです。

お元気なのは、ムーティさんも同じ。ウィーンフィルとのイタリア・ツァーは7月に80歳の誕生日を迎える彼を祝って行われたそうです。ラヴェンナ〜フィレンツェ〜ミラノと巡り、その後6月にはラヴェンナ音楽祭が始まり、2〜4日はバーリでケルビーニ・ユース管の演奏会、7月1日はLugoにてLa Vie dell'Amiciziaの演奏会。今年はアルメニアのエレヴァンとのAmiciziaで、かの地の合唱団を迎え、ハイドン「テ・デウム」、モーツァルト「キリエ」、シューベルト「ミサ曲」と「未完成」を演奏する予定です。

ローマでは、サンタ・チェチーリアで、ベアトリーチェ・ラナ出演の演奏会(ブラームスのピアノ協奏曲第1番)で聴衆を入れての音楽会が始まりました。彼女はホール閉鎖でストリーミング中心の演奏会になった際も最初に登場したそうで、ホール再開の先駆けとなったことをとても喜んでいたそうです。その後5月下旬から「春のコンサート」シリーズが6・7月にかけて行われるようです。

また、戸外ですが、チルコ・マッシモ(古代ローマの大競技場跡)にて、昨年に続いてローマ・オペラ劇場の夏シーズンとして26のオペラ、バレー、コンサートが予定されています。6月半ばから始まり、ヴェルディ「トロバトーレ」(ガッティ指揮)、「レクイエム」(チョン・ミョンフン指揮)、プッチーニ「蝶々夫人」や「ラ・ボエーム」、バレーでは「白鳥の湖」などが上演されます。壮大な野外の空間、ディスタンスは問題なさそうですね。

ナポリではサン・カルロ劇場で今月半ばからヴェルディ「椿姫」が上演されました。総裁リスナーの呼びかけで“Covid犠牲者への黙祷”を皆が起立して捧げました。

パレルモではテアトロ・マッシモが5月22日に再開され、ドニゼッティ「ランメルモールのルチア」(ロベルト・アバド指揮)が上演されました。ここでも平土間にオーケストラを配置し、舞台には歌手とコーラスが位置し、セミ舞台(動きを抑えた芝居?)的な上演で、観客500人はボックス席や桟敷で鑑賞したそうです。

ヴェネチアではフェニーチェ劇場が5月22日から再開され、ロンクィッヒの弾き振りでモーツァルト「ピアノ協奏曲第17番」とシューベルトの「ザ・グレート」が演奏されました。

ジェノヴァ、トリノ、フェッラーラなど多くの都市でもオペラ・ハウス、コンサートホールが開き始めています。人の流れが多くなり、接触も増える訳で、まだまだ楽観はできないと思いますが、この流れが順調に進むことを、イタリアの誇る音楽文化が再び活気と輝きを取り戻すことを、願っています。

マエストロ・ポリーニの日程は、前述のように6月25日のスカラ座でのリサイタルがあり、また、来シーズン、11月にはフランクフルトとパリでリサイタルが行われることが新たに判りました。
ウィーンの6月のリサイタルは、曲目が発表されました。シューマンとショパンのプログラムです。スケジュール表に追記して更新といたします。

2021年 5月24日 10:30
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