9月の声を聞いたら、涼しく感じられた・・・のは、一時的なこと? 猛暑とは言わなくとも残暑の厳しい日が続きます。日中はまだセミの合唱がにぎやかです。
でも、少しずつ日暮れが早まり、夜には秋の虫の音が繁くなり、確かに秋は近づいていると感じられます。
日本では虫の音(ネ)を「虫の声」として聞き、蝉=夏=暑さ、松虫・鈴虫etc=秋=涼しさ、と感じられると思いますが、ある研究(角田忠信博士)によれば、そういう聞き方をするのは日本人とポリネシア人だけ、世界の多くの国々では、虫の音は機械音や雑音と同じような“オト”と聞こえるそうです。とすると夏は昼も夜も、機械音・雑音が上(樹上)からも下(草むら)からも聞こえ続けているのでしょうか・・・。或は他の雑音と入り交じって、虫の音としては捉えられないのでしょうか?
日本の夏は蝉しぐれの中で音楽を聴く、いやいや、セミが煩くて音楽を聴けない!という感じですが、欧米などのワルト・ビューネやピクニック・コンサートなど戸外での演奏会では、音楽自体に雑音が交じって聞こえてくるのかしら? まあ、オーケストラなら音量で虫の声など圧倒してしまうのでしょうけれど。
虫の声などを右脳(音楽脳、音楽や機械音・雑音などを扱う)で聞く他国の人々に対して、日本人(日本語を母語とする人)は左脳(言語脳、論理的な処理を行う)に於いて、言語だけでなく虫の声や動物の鳴き声、風・波など自然音も聞くのだそうです。
日本人に情緒的な物の見方が多く、論理的思考(左脳で司る)が苦手(私だけかもしれないけど)なのは、左脳のオーバーワーク(?)で、情報の整理整頓が出来ないようになっているのかしら・・・。
さて、イタリアでは各地で音楽会が再開されてきています。
8月31日のアルト・アディジェ音楽祭でのポリーニの演奏会は、無事に行われました(良かった〜〜)。9月3日にはチャリティー演奏会が催され、この州の2つのボランティア団体“Debra-難病の子供のための”、“Mamazone-女性と乳癌の研究のための”にその収益が贈られます。
またポリーニはインタヴューで、コロナ禍の下で保健医療に従事する人々に感謝の意を表し、音楽の役割について述べているようです。
ドッビアーコはトレンティーノ=アルト・アディジェ州の北部の街で、第1次大戦まではオーストリアに属しトブラッハと呼ばれていました。マーラーが晩年の夏を数回ここで過ごし、「大地の歌」や「交響曲第9番」を作曲した街で、その名を冠した音楽堂を中心に音楽祭が行われています。
ポリーニは2015年に出演予定だったもののキャンセルとなり、今回がこの音楽祭への初めての登場です。ちなみに、この州の南部の街ロヴェレートはポリーニの両親の出身地です。縁のある地方で、マエストロも親しみを感じていらっしゃるかもしれませんね。
ミラノでは9月4日にドゥオーモにて、シャイーとスカラ座管弦楽団・合唱団によりヴェルディのレクイエムが演奏されます。マッタレッラ大統領も臨席し、RAIでTV・ラジオ中継されるとのこと。その後7日はベルガモ、9日はブレーシャで、その地の大聖堂で再演されます。どちらも新型コロナのために多くの犠牲者が出た街です。
その後スカラ座では14日にベートーヴェンの「第九」を医療関係者を招待して演奏され、16・17日に一般向けに再演(シャイー指揮)、次いで15日〜28日に数回「椿姫」が演奏会形式で行われ(メータ指揮)、27日にはポリーニ・リサイタルとなります。客席は3分の1に減らされるため、チケットは改めて発売されるそうです。
フィレンツェでは8月30・31日にメータの指揮でヴェルディ「レクイエム」が、トスカーナ地方の新型コロナ犠牲者のために、また医療従事者を招待し、感謝を表して演奏されました。会場はCAVEA=(古代の円形劇場の)観客席だそうですが、どうやら劇場の屋根の上にあるらしいです。
9月になると劇場内でオペラ公演が始まり(ヘンデル「リナルド」)、12日にガッティの指揮でストラヴィンスキーのミサ曲、バッハのカンタータなどの演奏会が行われ、次いで18日ポリーニのピアノ・リサイタルが行われます。
ローマでもまずCAVEAでの公演ですが、こちらはParco della Musicaの広大な敷地に配された大中小のホールの間に位置する大きな広場(3000人も収容!)です。
この場所で7月9日に夏シーズンが始まり、パッパーノの指揮でベートーヴェンの交響曲が五夜にわたって演奏されました。8月には「星の下でモーツァルト」という演奏会が1回ありました。
9月4日にはロンクィッヒの弾き振りでベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番、合唱幻想曲など、11日にはパッパーノ指揮でモーツァルトとメンデルスゾーンの曲、24日もビゼーなどフランス音楽の演奏会がオープン・エアーの下に行われます。
25日のポリーニの演奏会は大ホール内で行われ、4月のリサイタル用に発売されたチケットが有効となっています。
(※〜 9/5追記)
そしてこの演奏会で夏シーズンは終了となります・・・のはずだったのですが。
急遽、延期のお知らせが載り、“11月30日”に変更となりました。4日付のインターネット記事(Suonare.it)に、25日の演奏会の予告が載っていたので、曲目など確かめようとサンタ・チェチーリアのHPを見て判ったのです。
チケットの払戻し場所や、利用する場合の入場に際しての注意事項、対コロナの規制に基づいた座席の再配分について、問合せ先などが報じられています。ホール内での演奏会(ポリーニのそれがコロナ禍のもとでは最初でした)には、より厳重な注意や詳細な規制が必要と、改めて認識されたのでしょうか。(〜※)
ヴェネツィア、フェッラーラ、ラヴェンナ・・・多くの都市で様々な工夫の下で音楽会が、また色々なジャンルの公演が再開されています。なかなか収まらない新型コロナ、再流行も不安な現状ですが、文化活動の広がりが明るい灯となり、喜びを生み出し、良い活力となって、社会の復興と健全な発展に繋がることを願うばかりです。
そして活動する音楽家たち、特に高齢のマエストロ達の安全と健康を、心から祈っています。
一つショッキングなニュースが!
ニューヨークのColumbia Artists Management Inc.(CAMI)が8月31日で閉鎖されたとのこと。この度のコロナのパンデミックで甚大な被害を受けたようです。1930年創業の音楽マネージメントの老舗。かのホロヴィッツ、クライバーン。オーマンディー、クレンペラーからカラヤン、バーンスタイン、オザワ、ゲルギエフ。名花シュワルツコップ、プライス、テバルディ・・・錚々たる音楽界のスター達のエージェントで、マエストロ・ポリーニもその一人でした。ニューヨークとシカゴ、来年のアメリカ公演はどうなってしまうのでしょう。(そもそもアメリカでの公演が、難しいのでしょうけれど。)
そろそろ夏も終わり、という頃になって、やっと夏の日記帳を書いています。全くこの数ヶ月は何をやっていたのやら・・・。コロナと熱中症の不安から、自粛=Stay Home。それなら腰を落ち着けて、ジックリ何かに取り組めばよいのに、この暑さでは・・・。
でも、一念発起して(?)LINKの見直しを行ってみました。Linkの切れたページ、Not Foundのページが幾つもあり、日頃のイイカゲンさを反省するばかりでした。新たに加えたLinkもあります。宜しければご覧になってください。