時々の雑記帳

音楽のこと、ポリーニのこと、日々の雑感を、
時々(気まぐれに)、書き入れます。

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このほかの日記帳はこちらを、すぐ前のものは「冬」1〜3月を、後のものは「夏」7〜9月をご覧ください。

(4月〜6月)

初夏の惑い
もう、6月・・・沖縄に続き、九州・四国でも梅雨入り。間もなく日本全国で雨の季節となるでしょう。無為な時間は長く感じられ、ふと気付くと時の流れの速さを思わされる、そんな3ヶ月でした。

桜をはじめ彩り豊かな花の季節も、新緑の芽吹きから色を増していく若葉の季節も、ただ、空しく時が過ぎていく・・・ばかりで、自然を味わい楽しむ余裕のない日々でした。といって忙しいわけでは全くなく、心が落ち着かないだけ。それでも、散歩の道すがら目にする垣根のツツジやバラ、ヤマボウシの白い花、道端に咲く名も知らぬ小さな花々に、心癒される日々でしたが。

緊急事態宣言が解除され、学校の再開、施設の開館・解放も徐々に始まった6月。雨の1日でしたが、子供たちは久しぶりの登校、お友達との再会、初めての新学年の授業、どうだったかな・・・。街の人出が増えて、通勤の電車もまた混雑が始まり、大人も子供も「コロナ感染経路不明」の社会に、放り出されたような感じです。 早期に解除された都市で起こったように、第二波の感染の不安に曝されながらも、社会を再び動かさなければならない、そんなに長い間ストップしてはいられない、のかもしれません。でも、その「長い間」に何が為されたか、何が為されなかったか、と思うと、索漠たる思いに捉われます(一応“マスク”は届きましたが・・・)。

ウィルスとの闘いは人類の歴史上、幾度も起こったこと。その度に大きな被害・犠牲と共に、変革があり、新たな進歩がもたらされたのでしょう。この新型コロナウィルスの後には、何が残され、改められ、新たに生まれるのか。きっと、ず〜っと後になって、やっと判ることなのでしょうけれど。世界中の人がより良く生きていけるシステム、安定した社会が作られる契機となることを、望むばかりです。
ともあれ、まだまだ闘いの真最中、終息は大分先のことでしょう。気を緩めずに、日々を過ごさなくては!

スポーツ・文化的イベントは、世界中で、中止や延期に追い込まれました。「3密」を避けるため、外出自粛あるいは禁止の中では当然のこと、いや、それどころじゃない!状況だから・・・。殆どの地域で3月〜5月、状況は収まらずさらに延長して6月〜7月まで、施設の閉鎖があり、イベントは中止に。音楽界でも今シーズン終りまで、全て中止となった所が殆どでした。

ポリーニのコンサートもほぼ全て中止か延期となりました。ただフィレンツェ五月祭は6月半ばまでの中止・延期は発表されましたが、6月22日のポリーニ・リサイタルには未だ変更の知らせが無く、もしかしたら行われる?・・・ですが、プログラムの発表も、チケットについての情報も無いのでは、やはり中止なのかも、と思わされます。(もともとAmici della Musica Firenzeとの共催なので、チケットはそちらで扱うのかも、と思いましたが、そのサイトには当初から、ポリーニのリサイタルが掲載されていません。なんで???)

今夏は、ザルツブルク音楽祭は期日を短く(8月のみ)、少ない会場(6か所)で、規模を縮小して(90のイベント)行うことになりました。
今年はザルツブルク音楽祭100周年、開催を望む思いは強かったことでしょう。100周年記念の催しもいろいろ計画されていたようですが、それらは2021年まで延期されるとのことでした。
マエストロの8月13日のリサイタルも「調整中」と記されていますが、行われるかどうかは不明です。縮小した新編成のプログラムは、6月上旬に発表されるとのことです。

演奏者としては、ステージに立ちたい、聴衆を迎えたい、との思いは強いのかもしれません。でも、高齢のマエストロには、何よりもご自身の健康第一、安全第一に過ごしていただきたいと、祈るばかりです。

新譜のBluray Discをご覧になったでしょうか。確かな技巧と毅然とした打鍵で、ポリーニ独自の澄明な音で奏でられる美しい曲達。年輪をうかがわせる深みある演奏は、作曲者の意思に迫りつつ、演奏者の自由さも増しているようで、ポリーニの心の底から奏されているよう。神々しい音楽に、思わず頭を垂れ、手を合わせていました。現在のポリーニの進境、至高の演奏を現前させてくれたことに感謝するほかありません。でも、演奏後の姿には、年齢を重ねられての疲労がにじみ出て、労わしい思いになりました。
この宝物のような演奏を、これからもずっと続けていただきたい、今はただ静かに、安全に過ごしていただきたい、また良い状況のもと素晴らしい演奏を披露していただきたいと、心から願っています。

夏は音楽祭シーズン。(マエストロの出演は有りませんが)他の音楽祭も見てみると、いろいろ工夫して開催したり、来年に延期を決めたり、また思い切って中止にしたり、対応は様々ですが、苦心の決断が窺われます。

バイロイト音楽祭は、全て来年に延期になったことは、以前お知らせしました。

ルツェルン音楽祭は一旦は中止となりました。でも、8月後半に小規模な音楽祭を、聴衆を前にして行う予定で、プログラムを再編成しているようです。

ボンのベートーヴェン・フェストは来年に延期、生誕250年を祝う年だけに、残念なことです。

一方、ルール・ピアノ・フェスティヴァルは、予定より早く6月上旬に幾つかのホールが開かれ、開催が可能となったようです。不思議に思ったのが、同じ日に2回、夕方と夜に同一の内容の公演が行われることがあり、演奏者には負担が多いと思われますが・・・客席に余裕を持たせるための、二分公演なのでしょうか。一方、キャンセルとなったもの、秋に延期されたものも多数ありました。

ラヴェンナ音楽祭は6月下旬から、中世の古い城塞を舞台に、オープンエアーの下で観客を入れて行われます。ムーティの指揮でモーツァルト「ジュピター」で開幕されます。

これらの音楽祭や多くのホールで、デジタル配信が行われることは、コロナ禍の世界での一つの収穫といえるかもしれません。この動きはジャンルを越えて、また個人や小集団のプレイヤーの手でも行われています。音楽の灯を灯し続けよう、音楽の響きを世界に送り続けよう、との意思が、遠く離れた私達のもとに届き、励ましとなり、喜びとなります。

10月開催予定のショパン・コンクールも、来年秋に延期となりました。日本からも多くのコンテスタントが参加する予定だったでしょう。1年の延期をむしろチャンスと捉えて、より高みを目指されますように。

(初めに書いた)「無為な」は、私個人の過ごし方。この社会には、厳しい環境の中でも、大切な仕事をこなし、重責を担って、多忙を極めている方が沢山いらっしゃいます。その方々によって辛くも支えられている、私達の暮らしです。社会の根幹を支えている方、特に医療に従事されている方、その関係者の方々に、心から感謝を送りたいと思います。

2020年6月5日 17:30
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