時々の雑記帳

音楽のこと、ポリーニのこと、日々の雑感を、
時々(気まぐれに)、書き入れます。

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このほかの日記帳はこちらを、すぐ前のものは「秋」10〜12月を、後のものは「春」4〜6月をご覧ください。

(1月〜3月)

静かな雪の日
今年の立春は例年になく暖かでした。近くの公園では白梅や紅梅が日ごとに花を増して目を楽しませてくれます。冬木立の枝先も少しずつ膨らんで、飛来する小鳥の賑やかな囀りは生気に溢れています。日脚も伸びて、春はもうそこまで、と思われたのに・・・やはり、そうはいかないようですネ。その後気温は乱高下、寒暖の差は大きく、週末から3連休中には北極から史上最強の寒波がやってくるとか。東京でも少し積雪がありましたが、厳寒の北国、雪国の方は、どうぞ十分に気をつけてお過ごしください。

ヨーロッパも寒さは厳しいのでしょうか・・・。マエストロは1月の2回のリサイタルをつつがなく終えられたものの、2月のスイスでのリサイタルは「突然の体調不良により」キャンセルとなりました(D.マツーエフさんが代わりに出演)。
けれども、一時的な不調だったようで、次の11日のマドリッドのリサイタルは開催を告げる記事が出て、9日付けでインタヴューも行われています。またミラノでも、リサイタルが告知され、その2日前16日にはスカラ座のロビーで、音楽学校の学生達との会合(incontro)も予定されています。音楽学者で評論家、スカラ座の編集主幹であるプルチーニ氏が共に登壇するようです。
無事に活動を再開されたようで、ホッとしました。リサイタルは勿論、音楽を広める活動も、若い人達に接する活動も、お心のままに、お元気で行われますように!

新譜“CHOPIN”。皆様お聴きになったでしょうか。ゲストブックにhiramasa様のご感想が寄せられ、素敵な文章に共感しながら読ませていただきました。つよし様のご投稿にも頷きながら、本当に同じ時代に生まれていて、良かった〜!と、改めて感謝しました(どなたの言葉なのでしょうね(*^^*)v)。ありがとうございました。

美しい音で紡がれる滋味溢れる演奏。低音の深い音色の上に高音が煌めき、息の長い旋律が歌われる抒情的なノクターン。全集で聴く時より親密感を増し、温かい感情が込められているように思われました。
新録音のマズルカは、動的なリズムが活気を生みつつ、ショパンの純な望郷の思いが詩情に乗って溢れ出すかのよう。陰影のある深い味わいの演奏は、今のポリーニならでは、と思わされます。
静かに流れ出す子守歌は慈愛に満ちた歌。輝きある美音が精緻に紡ぎ出され、心が蕩けそうになりますが、揺りかごのリズムは低くしっかりと曲を支え続けています。ショパンの創ったブリリアントカットの宝石みたいな小曲。その輝きを賛嘆しつつ愛でるかのようなポリーニのタッチです。
全体的に自由に、自在さを増し、ポリーニの息遣い、温かみを感じさせられる演奏です。スタジオ録音なのに、ライブのような感興を覚えることもあるのは、昨年の演奏会がふと甦るからでしょうか。

ソナタ第3番は、この様なポリーニの演奏の魅力をすべて集め、凝縮し、更にダイナミックに、自由に、表現の深さを増した演奏と思われました。確固たる技巧の冴えを以って、完璧に彫琢された大理石像・・・アポロンのような。ポリーニの演奏はよくその様に評されますが、30年余り前の初録音はまさにその印象でした。新録音は? やはり輝かしいアポロン像です。が、燃えるような感情を秘めた、憧憬の思いが溢れ出る、悲哀の涙を結晶としたような、彫像。ポリーニの共感のこもった、深い洞察から生まれた演奏は、絶妙な均整美を持った、ほのかに紅色を帯びた大理石像を、屹立させました。

私にとってソナタ第3番は“ショパンに目覚めさせられた”曲です。身じろぎもせずに聴き、心の底から“ショパンって、凄い! 素晴らしい!”と魅了されました。そう、気づかせてくれたのは、ポリーニの初録音でした。(ピアノ愛好者、ショパン好きの方、ポリーニ・ファンの方々には「エッ、なんで? それまでも素敵な曲、録音ばかりなのに?」と思われるでしょうけれど。)

この曲に、ポリーニに出会えて、本当に良かった。そして今また、新たにこの素晴らしい演奏を聴くことができて、私は、幸せです。ありがとうございます、マエストロ!

早くも2019-2020シーズンがアメリカで発表になりました。来年5月にはポリーニのアメリカ・ツァーが予定され、10日ワシントン、17日ニューヨーク、24日シカゴと登場の予定です。プログラムも早々に発表になり、ベートーヴェンの後期ソナタ(とバガテル)。2020年はベートーヴェン生誕250年のアニバーサリー・イヤー、特にシカゴでは“ベートーヴェンのソナタ+α”として、錚々たるピアニスト達による9回のピアノ・リサイタルが組まれていて、マエストロはその最後を飾る登場のようです。

今年春のシカゴとカーネギーホールでのリサイタル、ようやくプログラムが発表されました。ウィーンのプログラムと共にスケジュール表に追記しました。

2019年 2月9日 13:00

明るい春に
新春のお慶びを申し上げます。

昨年はこのページをお訪ねいただき、マエストロを巡る情報、また貴重なご意見・ご感想をお寄せいただき、ありがとうございました。本年もよろしくお願い申し上げます。

今年からサイトを移転しましたが、無事にこちらにお着きになりましたでしょうか(と、このページをご覧の皆様に申し上げるのも、ヘンですが・・・)。前のページは数カ月後には消滅する予定ですので、お手数を掛けますが、こちらへブックマークを付け替えていただきますよう、よろしくお願いいたします。

年末寒波に襲われ、北国の方では大雪による事故や帰省の混乱などもあったようですね。また九州では地震が起こり、不安な思いをされたことでしょう。お見舞い申し上げます。
関東地方は寒さは厳しかったものの、穏やかな晴天に恵まれたお正月でした。
我が家では地域の氏神様に初詣。由緒ある神社で、行列のできるほどの人出でしたが、元気な孫達も神妙にお参りし、おみくじを引いたり、お守りをいただいたり。柔らかな陽射しの中、楽しいひと時でした。
春からは下の孫も小学生、上の孫は3年生、中学年ともなれば(親離れはまだとして)ジジババ離れは始まりそう。何はともあれ、二人とも元気に、安全で楽しい小学校生活を送ってほしいものです。日本中の、いえ、世界中の子供たちが、そうであってほしいですね。

そのひと月後には平成という時代が終わり、新しい御代が始まる日本。公正で、明るい、希望の持てる国であってほしい、全ての働く人が尊重され、高齢者が安心して暮らし、若い人が未来を語れ、子供たちが夢を持てる社会であってほしい、と心から願います。

さて、今日は1月5日。マエストロは佳き新年を、幸せなお誕生日をお迎えのことでしょう。
西の空、イタリアに向けて、皆のお祝いの声を送りましょう、心を込めて!

Buon Compleanno!
Tanti Auguri!

マエストロ・ポリーニ、77歳のお誕生日おめでとうございます!

喜びの多い一年でありますよう、お祈りいたします。
お元気で、お心の赴くままに、演奏活動をなさいますように。

77歳は「喜寿」という長寿の祝い年ですが、草書体の「喜」=「七十七」となることから、日本で創られたお祝い、本来は数え年で祝うのだそうです。ですから今年77歳のイタリアのマエストロには、あまり関係ないかも・・・でも私達日本のファンとしては、大いに喜びを以ってお祝いしたいですね、マエストロが健康に恵まれ、いつまでも素晴らしい演奏をなさいますように! 祈りを込めて。

さて、昨年の日記帳で書いた内容について、訂正してお詫びすることがあります。
12月3日のジェノヴァのリサイタルは、キャンセルではなく「延期」でした。
GOGのサイトの記載が意味不明(?)になり、やがてその日時に他の演奏者(Dmitry Masleev、2015年のチャイコフスキー・コンクールの覇者)名が記載されたので、キャンセル→代役登場、と思ったのでした。でも、意味不明だったのは「延期」の期日調整が為されている最中だったからのようです。
新しい期日は新年明けての“1月14日月曜日”。曲目はシェーンベルクとベートーヴェン「悲愴」、「ハンマークラヴィーア」から変更となり、ベートーヴェンの最後の3つのソナタ、30番op.109、31番op.110、32番op.111となりました。
また、1月22日に予定されているケルンのリサイタルも、同様に曲目が変更となり、同じベートーヴェンの3曲となりました。

前回お知らせしたジュネーヴの曲目には、ベートーヴェンの29番「ハンマークラヴィーア」と共にソナタ28番が入っていました。
ポリーニの音楽への探求心が、これからベートーヴェンの後期ソナタへ向かうのかと想像され、なんだかゾクゾクします。
若き日、ベートーヴェンのソナタの初録音にこれらの曲を選んだポリーニが、年齢を重ね、経験を積んで、今その探求心はなお深く、熱いままに、鋭い洞察を以ってこれらの曲に対峙する時、どんな演奏が、どんな音楽が生み出されるのか・・・。
若き日の録音には「これ以上何をお望みですか」という言葉が今もなお当てはまると、聴くたびに思わされます。でも、以前から後期ソナタを再び録音したいと言っていたマエストロには、なお「望むもの」、新しい視点、深められた表現、表しつくせぬ感興があるのでしょう。
“今のマエストロ”の演奏を聴きたい、録音して欲しいと、心から思います。

これまでショパンの後期作品を深く探求し続けてきたポリーニ。素晴らしい成果を2枚のCDに納めて、一つ区切りが付いたような心境かもしれませんね。そして気持ちも新たに、またベートーヴェンの音楽と向かい合っていくお心なのでしょう。
1月末に発売される「CHOPIN」[op.55-op.58]は、本当に待ち遠しいですね。リリース情報はクリスマス・プレゼントでしたが、1月末の発売は“お年玉”みたいです(*^^*)v

マエストロからの贈り物を聴きながら、楽しい時を過ごされますように。皆様にとって、今年が良い一年となりますように、お祈りしています。

2019年 1月5日 9:00
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