時々の雑記帳

音楽のこと、ポリーニのこと、日々の雑感を、
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(4月〜6月)

梅雨の晴れ間に
紫陽花が青、紫、白、ピンクと、毬のような花をつけて、曇り空の街を、雨に濡れる道を、彩っています。しっとりと雨の似合う花は、心を落ち着かせ、和やかな気持ちにしてくれます。

昨日は低気圧の影響で、全国的に大雨・強風・雷雨との予報が出ていて、家に籠っていました。でも東京ではあまり激しい降り方ではなく、シトシトと梅雨の雨という感じです。東北北部も梅雨入りとされましたが、西日本はまだのよう。今年も日本付近の天候に例年とは異なるものがあるのでしょうか。近年は集中豪雨、土砂崩れなど被害をもたらことの多い雨季でしたが、穏やかに、静かに降る梅雨であって欲しいですね。植物には慈雨となるように・・・。
さて一夜明けて、今日は梅雨の晴れ間! 爽やかな風が吹いています。

ラヴェンナ音楽祭に出演のマエストロは、お元気に登場し、素敵な演奏を披露されたようです。演奏会前の告知記事や、終了直後の批評(報告)の記事も目にしました。聴きにいらした方からも素敵なメールをいただきました。

"Andiamo, Maurizio!"「さあ、行こう、マウリツィオ! ムーティとポリーニが笑顔で登場すると、埋め尽くされたホールが拍手で湧いた。」

第30回ラヴェンナ音楽祭のオープニングを飾る、輝かしい演奏会。プログラムの変更がアナウンスされ、まずモーツァルトのピアノ協奏曲第14番と20番、休憩後にメンデルスゾーンの「静かな海と楽しい航海」、最後にラヴェルの「ボレロ」となりました。
モーツァルトの協奏曲は、ムーティの指揮のもと、ルイジ・ケルビーニ・ジョヴァニーレ管弦楽団と崇高な対話を繰り広げながら、ポリーニのヴィルトゥオジティが遺憾なく発揮された比類ないもの、特に緩徐楽章の崇高な美しさは、深く心に染み入るようだった、と。

曲が終わるごとに大拍手喝采にブラボーの嵐で、何度も舞台に呼び戻されたマエストロ。20番の後には少し足元が危いこともあった、とか・・・お疲れ様でした、マエストロ!
続いて音楽祭総裁のクリスティーナ・ムーティさんから、称賛とお礼の言葉と共に2019年のラヴェンナ音楽祭プレミアを贈られました。「ラヴェンナの有名なモザイク職人の手による大きなオブジェ」だそうです。ポリーニはそれに応え「身に余る言葉を光栄に思う、マエストロムーティと共演できて嬉しい」と短いスピーチをなさったとのこと。

この演奏会には市長をはじめ、政財界のお歴々が顔を揃えていたそうで、きっと休憩時には楽屋で挨拶を交わし賛辞を受け、忙しかったのかもしれません、「静かな海と楽しい航海」が終わってから奥様と一緒に客席に現れたマエストロ。その時にも客席から拍手が起こったそうですが、マエストロはそれをメンデルスゾーンの演奏へ向けられたものと思い込んでいたようです。謙虚なお人柄がうかがわれるエピソードですね。

ラヴェルのボレロは、「非常に官能的でそれでいて緻密で」素晴らしい演奏だったようです。マエストロも「珍しいうっとりなさった表情で拍手」されていたとのこと。巨大なホールに満員の聴衆も、興奮と昂揚のうちに魅了され尽くしていたようです。

ラヴェンナ音楽祭は1990年に始まり、今回で30周年。ポリーニは1992年登場後、90年代に2回、2004年にも出演(いずれもソロ・リサイタル)しています。2002年には子息のダニエーレさんが指揮者としてデビュー、ベートーヴェンの交響曲第4番、第7番をRAIと演奏しました。ポリーニ家と縁のある音楽祭なのですね。
ムーティを中心に、ブーレーズ、ジュリーニ、マゼール(1990年)、アバド(1993、2011年)、シノーポリ、サヴァリッシュ、オザワ、チュン(1994年)、アルゲリッチ、マイスキー、ロストロポーヴィッチ、ゲルギエフ(1995年)、クライバー(1997年)、メータ(2011年)等錚々たる音楽家が出演し、大きく育ててきた音楽祭。
クラシックばかりでなく、ジャズや民族音楽、ポピュラーミュージックにも開かれ、オペラの新演出は勿論、バレエなど舞台芸術にも力が入れられています。
また2005年にはムーティが創設、養成した若手音楽家からなるルイジ・ケルビーニ・ジョヴァニーレ・オーケストラがレジデンスとして活躍を始めました。

またこの音楽祭から生まれた"Le vie dell'amicizia"(友情の道)というプロジェクトも特筆すべきものでしょう。
1997年サラエヴォに始まり、ベイルート、エルサレム、モスクワ・・・と、戦争で傷を受けた街、様々な対立や悲劇的な出来事により傷ついた場所を訪れ、その地の音楽家と共に演奏する音楽会です。音楽によって、音楽の力を以って、異なる人種、文化、宗教の架け橋となることを目指す活動です。
イスタンブール、ニューヨーク(9.11の後)、カイロ、ダマスカス、チュニジアのエル・ジェムなどを年ごとに巡るツアーに、ムーティ指揮のもとスカラ座管弦楽団、フィレンツェ歌劇場管弦楽団などが参加しました。2005年からはケルビーニ管がその任を負っています。2016年には日伊国交樹立150周年を記念し、東京春音楽祭にムーティが招かれました。日本の若手演奏者がケルビーニ管と共に演奏し、その後ラヴェンナ音楽祭に参加、友情の道が日本へと通じたのでした。
2017年テヘラン、2018年キエフを経て、今年はアテネのオーケストラと共演するようです。

キナ臭さが消えないこの世界。音楽の持つ力が争いや対立を鎮め、音楽する人達の交流が友情を育て、音楽を愛する人達が、互いに理解し合い、親和し、世界の平和を守れるように、願わずにいられません。

11日のウィーンのリサイタルは無事に行われたようです。アンコールなどご存知の方はお教え頂けると幸いです。

26日のミュンヘン、ベートーヴェンの3曲の後期ソナタ。ライブ録音も予定されているリサイタルで、マエストロの今シーズンは閉じられます。お元気で、良いリサイタルになりますように! 素晴らしいCDが早くリリースされますように!(って、来年でしょうけど)お祈りしています。

新たに12月のベルリンでの演奏会の日程が発表されました。ソロの曲のほかに、ハーゲン四重奏団との共演で、ブラームスのピアノ5重奏曲が演奏されます。スケジュール表に付け加えました。

2019年 6月16日 14:00

みどりの風が好き
ヤマボウシの白い花が目に鮮やかに、初夏の風に揺れています。木々の緑は色を濃くし、視界いっぱいに広がってきました。柔らかい若葉からしっかりした葉へと成長し、木陰に涼を求める人々を誘う・・・令和初の美しい季節を楽しみたい時です。が、やがて梅雨へと移るその前に、日本列島を大雨が襲っています。50年に一度とかの大雨、突風・暴風、それに雷。皆さまにはご無事にお過ごしでしょうか。お見舞い申し上げます。

さて、ヨーロッパの天候は? マエストロ・ポリーニはお元気かしら? と、気になるところです。

アメリカ・ツアーは4月のニューヨーク1度だけとなりましたが、お元気にカーネギーの舞台に登場されたようです。
聴きにいらした方からメールをいただきました。
背筋を真っ直ぐに、しっかりした足取りで登場され、前半はやや緊張気味ながら、とても美しいブラームス、シューマンのソナタはエネルギッシュで、CDよりも更に速い演奏だったようです。前半でもう、スタンディング・オヴェーション。
後半は、美しく光を放つショパンの曲たち。心に響く演奏に、ホール中が幸福感に満たされたようだった、と。総立ちの拍手に応えて、2曲のアンコールは、バラード1番と「木枯し」のエチュード。凄いですね〜〜〜〜(バラード1番、聴きたいなぁ〜)。
その後はサイン会も催され、延々長蛇の列をなすファンに、にこやかに応じられていたそうです。ニューヨークっ子も熱い思いでマエストロを称えていたと。

1カ月後のミラノでの協奏曲は、シューマンからモーツァルトに変更になったことは、掲示板でもお知らせしました。シューマンを弾きたい!お気持ちも強くあったようですが・・・(聴きたい!!方も、また多かったでしょう)。
でもモーツァルトの第23番、素敵な選択ではないでしょうか。私は大好きで、ポリーニにとても相応しい曲と思っています。晴れやかで気品ある第1楽章、抒情的で陰影ある第2楽章、愉悦感に満ちたフィナーレ。若き日のベームとの録音は、ポリーニのアポロン的資質が美しい結晶となったような、素晴らしいものでした。

聴きにいらした方から、メールをいただきました。
今回の公演は、インドのハンディある子供の施設へのチャリティー・コンサートで、両マエストロは無料出演、初めにスカラ座の総裁からの謝辞があり、ミラノの音楽ファンで一杯になった輝かしいホールは、熱気に溢れた雰囲気だったようです。
  旧知の仲のズビン・メータと、オーケストラはスカラ座アカデミーの若い演奏者達との共演。二人の巨匠、特に地元のポリーニを迎えて、学生さんたちは嬉しくて、楽しくてたまらない、という感じだったとか。
メータはやや足が不自由で、ゆっくり登壇し、座っての指揮。若々しいエグモント序曲の演奏だったようです。終って舞台袖に向かうと、ポリーニが笑顔で待ち受けていて、大きな拍手を送り、肩を抱いて話しかけていたそうです。
ピアノの設置のあと、二人の巨匠が登場すると、またまた大きな、敬愛のこもった拍手、それに応えるマエストロの明るい笑顔(あぁ、目に浮かぶようです)。
演奏は「明るく、朗々として、賀ぐ、という言葉が合うような音」で、美しく典雅な第1楽章、クールで透明な中に温もりのあるエレガントなアダージョ、第3楽章は活気と躍動感に溢れた素晴らしい演奏。(ただ、ピアノ・ソロで始まるこの楽章を、ポリーニは超快速で弾きはじめ、学生オケは必死で合わせていく・・・という感じもあったようです。それだけに集中力に満ちた熱い演奏だったのでしょう。)
ブラヴォー!!に続く拍手喝采の大きかったことは「スカラは度を越していました。。」とメールに書かれていました。ヨーロッパの幾つかの都市で音楽を鑑賞されている方の言です。ミラノっ子にとって、やはりマエストロ達は特別な、別格な音楽家なのでしょう。

休憩後はベートーヴェンの交響曲第7番を、マエストロは舞台近くの桟敷席で聴かれ、若々しい演奏に大きな拍手を送っていらしたそうです。カーテンコールになりホール中一斉の手拍子拍手になると、マエストロも一緒に、最後まで手拍子をしていらしたとか。

ニューヨーク、ミラノからのメールを読んで、マエストロの誠実で愛すべきお人柄がうかがえ、お元気でご機嫌よい様子を目に浮かべられました。お二人に深く感謝いたします。

次の演奏会は、久々にストックホルムにて。ノーベル賞授賞式も執り行われる由緒あるホールでのリサイタル、ステキだなぁと、ホームページを見ていましたが、直前になって、キャンセルの報が載りました。肩を傷められたとのこと。ミラノから日が浅く、お疲れが出たのか、ちょっと頑張り過ぎてしまわれたのか・・・残念なことでした。
キリル・ガーシュタインというロシアの若手ピアニストが、代わりに登場しました。

さて、今日21日は、シュトゥットガルトにて、無事にリサイタルが行われるようです。大きなケガでなくて、良かった〜〜〜。ベートーヴェンの後期ソナタ3曲、素晴らしい演奏会になりますように!

幾つか新しい予定が判りました。
夏の音楽祭シーズンでは、9月にストレーザ音楽祭に登場、ルツェルンのすぐ前に、同一プログラムでの参加です。
12月にはスイス、チューリッヒに登場。
2020年は3月にハンブルク、4月にはローマに登場です。これらの日程をスケジュール表に追記して、簡単な更新といたします。

2019年 5月21日 23:15

桜の花びら ふるころ
美しい季節が訪れました。春の花が次々と咲きはじめています。白木蓮、紫木蓮は空に高々と開き、桃の花はあでやかに、純白の雪柳が風に揺れ、菜の花の黄は明るさを広げ、子供達の笑顔みたいな色とりどりのチューリップも。
そして桜、桜、桜。遠くには淡い紅の雲のように浮かび、近くでは手に触れるほどしなやかに伸びた枝に小さな花を一杯つけて。その繊細な形と優しい桜色は、はんなりと、なぜか幸せな気持ちにしてくれます。“造化の妙”というけれど、自然の為すワザの霊妙さに感じ入るばかりです。
花冷え、春雨、春の嵐。気まぐれな春の天候にもめげず、花開き、伸びていく“生命の力”にも励まされます。

植物だけでなく、動物にも“造化の妙”、“生命の力”があります。春休み、孫を連れて「大哺乳類展」を見に行きましたが、動物の進化の過程に驚かされました。長い長い時を経てそれぞれが“妙”としか思えない発展を遂げているのですから。
私たち人間も自然の一部、自然が生み出し、おそらく最高度に進化を遂げた生物なのでしょう。自然の恵みを受け、利用し、また試練と戦い、克服しながら。
でも自然を征服し、支配して文明を築き上げた人類のワザに、“妙”は有ったのだろうか、やがて「破壊」にしか繋がらないものなのでは・・・大地も、海も、空も。辺野古の海を、サンゴ礁を思い、そこに暮らす人を思う時、自然への“畏れ”を忘れてはならないと思わされます。

さて、嬉しいお知らせです。ポリーニのニューヨーク、カーネギーホールでのリサイタルが無事に行われました! 聴きにいらした方から、「お元気でした!」とホットなメールをいただきました。

この春のアメリカ・ツァーは3回の予定でしたが、ニューヨーク・フィルと共演のシューマンのピアノ協奏曲は、体調不良によりキャンセルとなりました。代わりにユジャ・ワンさんが登場し(珍しく白いロングドレスで)、アンコール2曲を披露するほどの喝采だったようですが、"Too much Yuja and not enough Schumann"とのタイトルの評が載っていました。

次のシカゴでのリサイタルも中止でしたが、これはオーケストラのストライキのため。3月半ばに始まったストライキは当初25日までの予定、31日は大丈夫かな・・・と思われましたが、結局延長され4月9日までに。シンフォニーホールは閉鎖され、その間の演奏会はすべて中止か延期となりました。(楽団員のストライキと言えば、ミラノ、スカラ座を思い出します。ムーティさんはどんな風に受け止めているのかしら・・・。)

そして7日のニューヨーク。数日前にニューヨーク・タイムズに演奏会の告知が載ってホッとしましたが、本当に舞台にマエストロの姿を見るまでは、気がかり・・・がファンの気持ち。無事に登場し、お元気で演奏されたようで、本当〜に良かったです。
プログラムも1曲追加され、ポロネーズの後にマズルカop.56-3が演奏されたとのこと。アンコールはバラード1番と「木枯し」だったそうです。

2月のパリ、3月のロンドンでのアンコールも判りました。どちらも「花火」と「バラード第1番」。

実はパリでは・・・。
あるパリ在住の方のブログに、ポリーニの演奏会の感想が載せられていて、美しい音色で“非常に端正でエレガント。同時にとても表情豊か”と、素敵な演奏の様子が覗われ、嬉しく読ませて頂きました。しかもプログラムに追加があったとのこと。前に「子守歌」の追加をスケジュール表に載せましたが(その時見落としていたのかもしれませんが)、さらにもう1曲、マズルカが演奏されたそうです。プログラムの写真も載っていて、"Mazurka op.59 no.3 en ut mineur"、エッ? op.59-3 ハ短調?っと思ってサイトで確かめると、“Mazurka en Ut mineur Opus 56 n°3”でした。な〜んだ、ミスプリだったのね。
ところが、このブログには全部で7曲と書かれていて、「変更プログラムからさらに一曲増えたのは、・・・」との記述が。どうやらマエストロはマズルカをもう1曲演奏されたようなのです。律儀なマエストロはop.59-3も弾いたのかしら、それともop.56の他の曲かも・・・詳細は判りませんが、聴衆には素敵なサプライズだったことでしょう。

5月のストックホルムの曲目も発表されました。ベートーヴェンの後期ソナタ3曲です。

また、来シーズンの演奏会も10月アムステルダム、11月パリの予定が判りました。

アンコールやプログラム、新しい日程の情報をスケジュール表に追加して、平成最後の更新といたします。

新しい時代「令和」。「命令で同調」でなく、お互いを尊重する「よい調和」が日本に実現する時代となりますように。

2019年 4月8日 14:45

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