紫陽花が青、紫、白、ピンクと、毬のような花をつけて、曇り空の街を、雨に濡れる道を、彩っています。しっとりと雨の似合う花は、心を落ち着かせ、和やかな気持ちにしてくれます。
昨日は低気圧の影響で、全国的に大雨・強風・雷雨との予報が出ていて、家に籠っていました。でも東京ではあまり激しい降り方ではなく、シトシトと梅雨の雨という感じです。東北北部も梅雨入りとされましたが、西日本はまだのよう。今年も日本付近の天候に例年とは異なるものがあるのでしょうか。近年は集中豪雨、土砂崩れなど被害をもたらことの多い雨季でしたが、穏やかに、静かに降る梅雨であって欲しいですね。植物には慈雨となるように・・・。
さて一夜明けて、今日は梅雨の晴れ間! 爽やかな風が吹いています。
ラヴェンナ音楽祭に出演のマエストロは、お元気に登場し、素敵な演奏を披露されたようです。演奏会前の告知記事や、終了直後の批評(報告)の記事も目にしました。聴きにいらした方からも素敵なメールをいただきました。
"Andiamo, Maurizio!"「さあ、行こう、マウリツィオ! ムーティとポリーニが笑顔で登場すると、埋め尽くされたホールが拍手で湧いた。」
第30回ラヴェンナ音楽祭のオープニングを飾る、輝かしい演奏会。プログラムの変更がアナウンスされ、まずモーツァルトのピアノ協奏曲第14番と20番、休憩後にメンデルスゾーンの「静かな海と楽しい航海」、最後にラヴェルの「ボレロ」となりました。
モーツァルトの協奏曲は、ムーティの指揮のもと、ルイジ・ケルビーニ・ジョヴァニーレ管弦楽団と崇高な対話を繰り広げながら、ポリーニのヴィルトゥオジティが遺憾なく発揮された比類ないもの、特に緩徐楽章の崇高な美しさは、深く心に染み入るようだった、と。
曲が終わるごとに大拍手喝采にブラボーの嵐で、何度も舞台に呼び戻されたマエストロ。20番の後には少し足元が危いこともあった、とか・・・お疲れ様でした、マエストロ!
続いて音楽祭総裁のクリスティーナ・ムーティさんから、称賛とお礼の言葉と共に2019年のラヴェンナ音楽祭プレミアを贈られました。「ラヴェンナの有名なモザイク職人の手による大きなオブジェ」だそうです。ポリーニはそれに応え「身に余る言葉を光栄に思う、マエストロムーティと共演できて嬉しい」と短いスピーチをなさったとのこと。
この演奏会には市長をはじめ、政財界のお歴々が顔を揃えていたそうで、きっと休憩時には楽屋で挨拶を交わし賛辞を受け、忙しかったのかもしれません、「静かな海と楽しい航海」が終わってから奥様と一緒に客席に現れたマエストロ。その時にも客席から拍手が起こったそうですが、マエストロはそれをメンデルスゾーンの演奏へ向けられたものと思い込んでいたようです。謙虚なお人柄がうかがわれるエピソードですね。
ラヴェルのボレロは、「非常に官能的でそれでいて緻密で」素晴らしい演奏だったようです。マエストロも「珍しいうっとりなさった表情で拍手」されていたとのこと。巨大なホールに満員の聴衆も、興奮と昂揚のうちに魅了され尽くしていたようです。
ラヴェンナ音楽祭は1990年に始まり、今回で30周年。ポリーニは1992年登場後、90年代に2回、2004年にも出演(いずれもソロ・リサイタル)しています。2002年には子息のダニエーレさんが指揮者としてデビュー、ベートーヴェンの交響曲第4番、第7番をRAIと演奏しました。ポリーニ家と縁のある音楽祭なのですね。
ムーティを中心に、ブーレーズ、ジュリーニ、マゼール(1990年)、アバド(1993、2011年)、シノーポリ、サヴァリッシュ、オザワ、チュン(1994年)、アルゲリッチ、マイスキー、ロストロポーヴィッチ、ゲルギエフ(1995年)、クライバー(1997年)、メータ(2011年)等錚々たる音楽家が出演し、大きく育ててきた音楽祭。
クラシックばかりでなく、ジャズや民族音楽、ポピュラーミュージックにも開かれ、オペラの新演出は勿論、バレエなど舞台芸術にも力が入れられています。
また2005年にはムーティが創設、養成した若手音楽家からなるルイジ・ケルビーニ・ジョヴァニーレ・オーケストラがレジデンスとして活躍を始めました。
またこの音楽祭から生まれた"Le vie dell'amicizia"(友情の道)というプロジェクトも特筆すべきものでしょう。
1997年サラエヴォに始まり、ベイルート、エルサレム、モスクワ・・・と、戦争で傷を受けた街、様々な対立や悲劇的な出来事により傷ついた場所を訪れ、その地の音楽家と共に演奏する音楽会です。音楽によって、音楽の力を以って、異なる人種、文化、宗教の架け橋となることを目指す活動です。
イスタンブール、ニューヨーク(9.11の後)、カイロ、ダマスカス、チュニジアのエル・ジェムなどを年ごとに巡るツアーに、ムーティ指揮のもとスカラ座管弦楽団、フィレンツェ歌劇場管弦楽団などが参加しました。2005年からはケルビーニ管がその任を負っています。2016年には日伊国交樹立150周年を記念し、東京春音楽祭にムーティが招かれました。日本の若手演奏者がケルビーニ管と共に演奏し、その後ラヴェンナ音楽祭に参加、友情の道が日本へと通じたのでした。
2017年テヘラン、2018年キエフを経て、今年はアテネのオーケストラと共演するようです。
キナ臭さが消えないこの世界。音楽の持つ力が争いや対立を鎮め、音楽する人達の交流が友情を育て、音楽を愛する人達が、互いに理解し合い、親和し、世界の平和を守れるように、願わずにいられません。
11日のウィーンのリサイタルは無事に行われたようです。アンコールなどご存知の方はお教え頂けると幸いです。
26日のミュンヘン、ベートーヴェンの3曲の後期ソナタ。ライブ録音も予定されているリサイタルで、マエストロの今シーズンは閉じられます。お元気で、良いリサイタルになりますように! 素晴らしいCDが早くリリースされますように!(って、来年でしょうけど)お祈りしています。
新たに12月のベルリンでの演奏会の日程が発表されました。ソロの曲のほかに、ハーゲン四重奏団との共演で、ブラームスのピアノ5重奏曲が演奏されます。スケジュール表に付け加えました。