窓から見える木々はすっかり葉を落として冬木立となり、地面には枯葉が散り敷いています。
師走も20日を過ぎ、今年も残り少なくなりました。
1月末、新譜をリリースしたポリーニ。ノクターンからソナタ第3番へと、ショパンの最晩年に連なる曲で、至高・至純ともいえる演奏を聴かせてくれました。
年間の活動回数は抑え気味になり、数回のキャンセル(「延期」という形も)もありましたが、ヨーロッパ各地、アメリカでも、意欲的な演奏会を行って、健在な姿を覗い知ることが出来ました。ブラームスの晩年の曲がプログラムに加えられ、ノーノの斬新な響きの曲にも新たな光が当てられ、彼の音楽の世界がまた広げられたようでした。
一方ベートーヴェン最後期の3曲のソナタ30・31・32番は、幾つかの演奏会で取り上げられ、探求を深めて、再録音、そして新たに録画も行われました。
来年のベートーヴェン・イヤーに向けて、ソナタ28番、29番も録音が予定されているようです。ポリーニがキャリアの最初から探求し続けたこれらの曲が、年齢を重ね円熟を深めた今、再びCDに納められ、リリースされる・・・本当に待ち遠しいことです。
12月、最後のベルリンの演奏会は、共演予定のハーゲン・クヮルテットのキャンセルでソロ・リサイタルとなり、ベートーヴェンのソナタ31番、32番という至高の曲で締めくくられたそうです。
今はご自宅で、ゆっくりした日々を過ごしていられるでしょうか。
良いクリスマスを! そして明るい新年を! マエストロ・ポリーニ!
今年もゲストブックをお訪ねいただき、ご感想や貴重な情報をお寄せいただき、ありがとうございました。
皆さま、どうぞお元気で、良いお年をお迎えください。
(以下は、マエストロ・ポリーニに関することではなく、私の年末のちっぽけな所感に過ぎないので、お読みいただかなくても結構です。)
振り返ってみると、日本でも多くのことがありました。
今年の漢字は「令」だそうです。新しい天皇の即位と改元「令和」は、寿ぐべき大きな出来事でした。海外からの賓客を迎えるのは大切な国際儀礼として、国民の祝日も良いとして、でも、もっと心静かに、現憲法で定められた“象徴”を迎えることに思いを巡らす時であっても良いのでは・・・。歓呼の大声の陰に、裏に隠され、蠢いているものがあるようで、少々違和感が拭えぬ思いでした。
ともあれ、新しい天皇皇后両陛下のお幸せを願い、「令和」の世が平和の裡に、末長く続くことを、心より願っています。
自然災害の多さ、大きさは近年各地で相次ぐ惨事となっていますが、台風15号、19号による猛烈な風と雨による災害は、本当に脅威でした。破壊され、崩壊し、ズタズタになった土地。ライフラインの復旧の遅れ、世界都市TOKYOに隣接する地での大規模な停電、進まぬ復旧は、これが21世紀の日本の現実? と、暗澹たる気持ちになりました。
自然の猛威は怖ろしく、畏れるべきだけど、天災が人災によって増悪されているとしたら・・・。
「一心桜体」。今年の四字熟語に選ばれたこの言葉は、ラグビーのワールド・カップでの日本チーム“ワンチーム”への賛辞です。桜のマークを付けた、多くの外国出身の選手からなる日本チームの活躍は、明るい話題であり、にわかラグビー・ファンをも生み出したようです。
でもラグビーに疎い私は、この言葉を見た時、別の意味と勘違いしていました。
“桜”の字から連想されること。税金の使途を質す問いに、無視、隠蔽、虚言、無責任で応じ、およそ言論の府に相応しくない言葉で埋め尽くされ、閉じられた国会。多くの関係者が一心に“桜を見る会”の疑惑を体を張って覆い隠そうとしているみたい。何のため? 誰のために?
日本で崩壊しているのは、土地だけではないと、絶望的な気分になりました。
真実を問う側も“ワンチーム”になって、壁を突破して欲しいものです。そして、春の日に、美しい清らかな桜を、愛でたいものです。
来年は、どんな年になるのでしょう。オリンピックの興奮に沸く年になることでしょうが、その為にも、なにより平和な年に、明るい希望の持てる年、人に優しい、温かい社会が実現する年になりますようにと、願うばかりです。