時々の雑記帳

音楽のこと、ポリーニのこと、日々の雑感を、
時々(気まぐれに)、書き入れます。

更新状況もここに載せます。
Menuへ

このほかの日記帳はこちらを、すぐ前のものは「冬」1〜3月を、後のものは「夏」7〜9月をご覧ください。

(4月〜6月)

雨の季節は心静かに
紫陽花が色づき、次第に彩を増してきました。大きな緑の葉の間に小さな緑の蕾が生まれ、日が経つにつれ紫や白に染まりながら手毬のような華やかな姿になって、雨に濡れた花も風情ある美しさ。時間の移りと季節の変わり様が目に見えるような花ですね。
真夏みたいな陽射しの日もあった5月でしたが、水無月の夕風は涼しく、ちょっと湿った空気はそろそろ梅雨入りも間近かと感じさせます。

マエストロ・ポリーニのアメリカ・ツァーは無事に終りました。4月の「腕の怪我」報道は大きなショックで、本当に心配しましたが、4月末のパリに続いて、アメリカでも元気にリサイタルが行われ、良かった〜〜〜!と、心から安堵しました。
もしかしたら「伝言ゲーム」のように、情報が大きくなって伝えられたのかもしれませんね。アメリカ公演を待ち望むファンの方達も「キャンセルも、あり?」と心配されたそうですが、「杞憂」に終わって、本当に良かった・・・。

掲示板でも速報でお知らせしましたが、ワシントンとニューヨークに聴きに行かれた方からメールを頂きました。
ワシントンでは“絶好調!”という感じで、ほぼ完璧な(幾つかミスタッチなどあったとしても)素晴らしい演奏だったそうです。マエストロはご機嫌良く、曲と曲の合間にもずっと笑みを浮かべていらしたとか。集中力の高まりからか、1〜2曲を終えて普段ならステージ袖に戻る時もそのままピアノの側に留まり、次々と興趣の赴くままに演奏されたようです。
ただ、そうして演奏される曲と曲の間がとても短く、そのせいで最初の方は遅れて来た聴衆が席に辿り着くまでに、少しワサワサした雰囲気だったようです。幾度か携帯も鳴ったとか・・・。
後半は、次第に明澄さを増して行き、しっかり歌うノクターンop.55と、確固として生き生きとしたソナタ第3番。総立ちの聴衆の喝采に応えて、スケルツォ3番とバラード1番のアンコール。「このホールでは珍しいことだが、満員の聴衆の誰もが、アンコールの最後の1音までホールを去らなかった」と、ある評にありました(途中で帰っちゃうなんて、勿体ない!)。でも他の評に「2つの長いアンコールでは、次第に疲労感が滲み出てきて、ほろ苦さ(bittersweet)を感じた」とありました。怪我の後で、旅行・時差もあり、本当にお疲れだったことでしょう。

ニューヨークでは、やはり素晴らしい感動的な演奏会で、ポリーニ様健在!で、聴衆も大喝采だったようですが、やはり疲労と、ワシントンよりも少し緊張感も感じられたそうです。
16〜21日のリサイタルの間にアメリカ北東部では異常気象の状態があり、猛暑の次に気温の急降下があったりと、体調管理が難しかったそうです。訪米中の演奏家には、きっと苛酷な滞在だったことでしょう。
それでも活気ある演奏で、ある評には「妥協しないポリーニはスケルツォも高速で弾き進み、ベースで少々乱れがあった」「ペダルの多用で音の明瞭さが失われた」という指摘もありました。ソナタも迫力いっぱいに弾き終え(緩徐楽章も速かったとか・・・)、興奮・感動した総立ちの聴衆の5回のカーテンコールに、アンコールはバラード1番。その後も拍手は鳴り止まなかったけれど「彼はお疲れのようだ、もう休ませようよ」と言うファンも居たと。
アンコールは1つ、それなら大好きな(ご自身も聴衆も)バラード、と、決めていらしたのかもしれませんね。

カーネギーホールでは、これまでは終演後の楽屋を自由に訪れたり、近年ではCDサイン会があったりと、マエストロと聴衆が触れ合う機会があったそうですが、今回はそれが無く、また長年にわたり恒例のように花束を贈っていた女性が、ご自身が高齢となって渡せなかったとか、時間の流れを思わされたとのこと。やはりbittersweet″の感があります。

1週間後のシカゴ。十分に休養を取られたのでしょうか、評で見るのみですが、ワシントンの時のようにお元気で充実した演奏会だったようです。ポリーニのショパンの美質を発揮して、強さと輝きに満ちた、また精緻で美しい演奏。こちらではアンコールもスケルツォとバラードの2曲、聴衆を更に熱い興奮へと誘ったようです。

お疲れ様でした、マエストロ!
今はミラノに戻られて、十分休養を取り、リラックスされているでしょうか。そしてきっと、今シーズン最後のウィーン・リサイタルに備えていられるのでしょう。
夏に向けて、お元気に、怪我など“絶対に!”なさらずに、美しい初夏を楽しみながら、良い時をお過ごしください、マエストロ。

今日のニュースでは、四国〜関東甲信も梅雨入りとのこと、しばらく鬱陶しい日が続くのでしょう。皆様も体調に気を付けて、お元気でお過ごしください。

幾つか新たな日程が判りましたので、スケジュール表に付け加えました。

2017年 6月7日 14:30

眩しい春、の憂い
今年の桜は長く楽しめました。と言っても東京でいち早く開花宣言が出たものの、なかなか開花が進まずヤキモキする時間が長かった、咲いた後は風雨にさらされ、いつまで花がもつか、お花見が出来るか、ハラハラする時間が長かった・・・。
まあ、結果的には入学式の頃に満開で、めでたし、めでたし!でした。桜吹雪を浴びて春爛漫と思ううちに、小さな若葉がどんどん育ち、今や爽やかな緑が視界いっぱいに広がる初夏の景色です。自然の成長力が一番感じられる、美しい季節ですね・・・。

ここ数日、ポリーニのスケジュール表を何度か更新しました。
3月半ばのアムステルダムのリサイタルは高熱のためキャンセル(ブレハッチが代りました)。でも、10日ほどのちのフランクフルトとベルリンでは無事に開催され、素晴らしいオール・ショパン・プログラムを披露したそうです。
ドイツへ聴きにいらした方からのメールでは、2月のケルンではソナタ第3番はやや慎重に、丁寧な弾き方だったが、回を追うごとにフレーズの歌わせ方にのびやかさと自由さが増し、ベルリンでは息の長いフレージングにポリーニの音楽の醍醐味を味わえた、とのこと。特に第4楽章はエネルギーと推進力、躍動感に溢れて、圧巻だったと。スタンディング・オヴェーションに応え、アンコールは壮大なバラード第1番。
なぜか、このドイツの3都市すべてで、ソナタ第1楽章の後で拍手が起こったそうです。ちょっと珍しい“現象”ですね。それほど聴衆の心をつかみ、熱くする演奏だったのでしょうか。

実は、3月半ばのロンドンのリサイタルを聴かれた方から、ご感想をメールで伺っていました。
シェーンベルクとベートーヴェンのプログラムで、シェーンベルクの短い曲は氷のかけらのように静かで美しく、会場からはため息が漏れた、とのこと。ベートーヴェン「悲愴」では、少し技巧的に危ない箇所もあったようですが、後半は次第にポリーニらしさを発揮し、最後の「熱情」は、凄まじい文字通りの“熱情”で、終わるや速攻ブラボー、ほぼ全員のスタンディング・オヴェーションだったとのこと。
ベルリン在住の方と一緒に聴かれたそうですが、紳士淑女のイギリス人がこれだけブラボーするとは、と驚き、ドイツではまずこんなことは起こらない、と感心していた、とのことでした。

イギリス人を、ドイツ人をも、熱狂の渦に巻き込むとは! マエストロ・ポリーニは、彼の音楽は、“奇跡”を起こす力を持っているのでしょうか。。。

さて、スケジュールに戻ります。辛いお知らせをしなければなりません。
急遽エクサン・プロヴァンスのリサイタルが発表されました。ミンコフスキ(指揮)が降板して、その代わりを引き受けられたのです。ところが、そのすぐ後にキャンセルの報が・・・。転倒して腕を傷めた、とのこと、1ヶ月の休養となるようです。嗚呼! お足もとには十分に、十二分に、もっともっと、気を付けてください、マエストロ!!
アルゲリッチとコワセビッチが、代わって演奏するそうです。アルゲリッチがキャンセルした時にはポリーニが代役を務めたことがありました。2人の大ピアニストの、長い友情の証しなのでしょう。

次のパリのリサイタルは、今のところキャンセルの報はありません。
5月のアメリカのリサイタルについては、室内楽は前からキャンセルになっていました(公演は行われ、ブロンフマンがピアノのパートを受け持ちます)が、リサイタルはそのまま告示されています。
また、カーネギー・ホールでも、ドビュッシーでなく、オール・ショパン・プログラムに変更されました。

1か月の休養を経て、すっかり恢復されて、無事にアメリカ・ツァーを行われますように!!(でも、無理はなさらずに!)
音楽の力、不老長寿に効く力が、どうか怪我にも効きますように!! 本当に、祈る思いです。

11月のミュンヘンに続き、来年2月のチューリッヒも発表されました。早く怪我を克服し、体調を整えて、夏の音楽祭も、来シーズンも、活躍していただきたいです。

今回、大変遅くなりましたが、やっと、2016年の来日について、まとめました。スキャナが上手く使えず、写真がキレイに録れず・・・なかなか進められなかったのですが、やっと、なんとか、形が付きました〜。
掲示板に寄せられたご感想も、載せさせていただきました、ご協力に感謝いたします。

2017年 4月21日 0:30

Topへ