時々の雑記帳

音楽のこと、ポリーニのこと、日々の雑感を、
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このほかの日記帳はこちらを、すぐ前のものは「夏」7〜9月を、後のものは「冬」1〜3月をご覧ください。

(10月〜12月)

晩秋の木々は懐かしい色に
金木犀が秋を感じさせる香りなら、銀木犀は冬の初めを告げる香りでしょうか。オレンジ色の花の甘い香りも好きだけれど、白い小花の凛とした香りは初冬の清々しさを感じさせます。小さな花が密に咲いているのも、身を寄せ合って寒風に耐えているよう・・・とは、風邪をひいてしまった私の勝手な思い入れ、かしらね。
今年は秋らしい爽やかな日が少なく、暖か過ぎる日の後には急激に寒さが襲い、強風の日が続き、気温はもう12月並みとか、1月並みとか。“のどかな小春日和”なんて、もう夢・・・なのでしょうか。晴天の青い空は嬉しいけれど、もうスッキリ“冬晴れ”の感じ。まあ掃除・洗濯は捗りますから、冬支度に励みましょうか。。。

マエストロのECHO-KLASSIKでの演奏はご覧になったでしょうか。美しい、心に響くノクターンでした。ホールは今年1月に竣工となったばかり、エルベ川に沿った元工場の上に建てられた、斬新で巨大な建築物です。エルプ・フィルハーモニー=北ドイツ放送交響楽団の本拠地となる大ホールは、授賞式ということもあってか、煌びやかで豪華な雰囲気でした。ピアノの音が高く広い空間に拡がっていくのを感じながら、マエストロは演奏していられたのでしょうか。来年5月にリサイタルを開くのに、丁度良い音響のリハーサル(?テスト、かな)となったかもしれません。

11月半ばにはミュンヘンでのリサイタルでした。“Kuehle Eleganz”(クール・エレガンス)という評がありました(が、例によって難しくて。。。)

シューマンの「アラベスク」はドラマティックで熱い感情の籠った演奏。カンティレーナ風の魅力ある短調の間奏部も決然とした強さで熱く奏された。
「クライスレリアーナ」は、その献呈者であるショパンに間接的であれ、より近づいた演奏だった。熱情と夢想に耽る感情を行き来する、シューマンの複雑な弁証法のような曲を、ハーモニーの異質さを創り、「とても緩やかに」「とても早く」の急激な感情の交代する幻想曲を通して、集中して深めていった。フィナーレではシューマンの信条である「火(激情)の中で作曲する」を輝かしい妙技で実現した、と。
休憩後は全くのショパン。ノクターンでは上品なメランコリーの冷たい優雅さ(クール・エレガンス)の後ろに、ほの暗い背景にドラマティックな影を投げかける描写をした。 ショパンはソナタにおいては、テーマ進行の緊張した論述よりも、花飾りの付いた旋律の織物に力を入れ、純粋なるピアニストの演奏芸術を打ち立てた。
ポリーニは老練な妙技でそれを解き放った。ショパンのレトリック(美辞麗句)の充溢を明示し、殆どそれを忘れさせる。ラルゴでは高貴なノクターンの魂が息吹き、ロンド・フィナーレでは輝かしい妙技の陶酔でまたも聴衆を興奮の坩堝に引き込んだ。喝采と大歓声。だが、アンコールは一つだった。

熱演・力演で、さぞお疲れになったことでしょう。アンコールの曲は何だったのでしょう。。。

ECHO賞受賞の後、短いインタヴューがZDFで放送され、その中に「お気に入り(favorite piece)のショパンの曲は?」という質問があったそうです。Janさんが要約を送ってくれました。
ポリーニの答えは
「favorite pieceはありません。ショパンの全ての曲が非常に偉大なものだからです。彼はとても自分に厳しかった。彼は持っているペンが折れるほど、熱心に(hard and hard and hard)作曲したのです。だから彼の作品はどれも完璧です。不要な音も不十分な音もありません。」

う〜〜ん、なるほど。ショパンの全ての曲が、敬意と愛情の対象なのですね。
でも「バラード第1番はお気に入りじゃないかしら・・・」と書いたら、Janさんも「私もそう思います。それとノクターンop.27-2もね:)」と返してくれました(^^)v。

きっと、あの曲かしら? それとも・・・と思っているところへ、Joachimさんからメールが届きました(good timing! ありがとうございました!!)。
「ミュンヘンの演奏会に行きました。素晴らしいリサイタルで、アンコールは1曲、スケルツォ第3番でした。」

ああ、そうだったんだ! 近頃はソナタ第3番の演奏後に、スケルツォ第3番をアンコールに披露することが、度々ありましたね!
マエストロのお気に入りを、また一つ(勝手に)見つけた!気分です。

今回は、来年3月までのリサイタルのプログラム、ルール・ピアノ・フェスティヴァルの日程、夏のザルツブルク音楽祭の日程とプログラムを加えて、更新しました。
また、今日11月25日パレルモでの曲目に変更がありました。2つの夜想曲op.55から3つのマズルカop.56へ変わります。

2017年 11月25日 22:30

秋の色に染まって
金木犀の季節となりました。どこからか良い香りが漂ってきて、初めは鼻をヒクヒクさせ、黄色い小花を探しながら歩いていましたが、今は空気がすっかり芳香に染まっているようです。優しい香りに包まれると、気持ちも和みます。「音と香りは夕暮れの大気に漂う」・・・という題を思い出しますが、フランスの秋は何の香り、どんな音? 
爽やかな秋晴れ、と言いたいけれど、昨日は残暑厳しい日、今日は霞がかった曇り空となりました。秋の空は変わりやすいのですね。落ち着いた秋の日を過ごしたいけれど、あの賑やかな(?)選挙戦も始まりました。こちらも変わりやすい潮の流れ、混沌として、どうなることやら・・・。

さて、マエストロは今シーズンの活動を、ベルリンで始められました。バレンボイム指揮のシュターツカペレ・ベルリンと共演で、シューマンのピアノ協奏曲、久しぶりの演奏です。
会場のStaatsoper Unter den Lindenは、改装されて再オープンしたばかり、オーケストラの演奏会としても、最初の夕べだったようです。
素晴らしい音響の本拠地を得て、シュターツカペレ・ベルリンはバレンボイムの指揮のもと、Widmann作の現代音楽"Zweites Labyrinth fur Orchestergruppen"で、珍しい楽器も交えて妙技を披露し、2曲目のシューマンの協奏曲では、美しい音のアンサンブルでピアノに応え、ソリストを支えたとのこと。休憩後のドビュッシー"管弦楽のための映像"は、美しい音色、アンサンブル力、そして表現力で、本領発揮とばかりに名演を繰り広げたようです。

マエストロ・ポリーニの演奏は、曲の構築的な面を重視しつつ、内面を聴き取ろうとした演奏だったようです。早めのテンポで進み、ディテールはやや飛ばしがちだったとか。バレンボイムとあらゆる瞬間に協調し合い、木管奏者はシューマンの豊かなメロディに耽れば、ポリーニも共に歌っていた、と。「全ての角が丸くされた(=完成された)」演奏だった、とある文にはありました。

この演奏会は、隣接する公園ベーベルプラッツで生中継され、自由に聴くことができたそうです。また、Kulturradioで録音されており、12月25日20:04(ドイツ時間)から放送されるそうです。日本時間だと12月26日午前4時04分。素敵なクリスマス・プレゼントですね。(下記のページで、"LIVE HOEREN"ボタンを押してください。)

http://www.kulturradio.de/rezensionen/buehne/2017/10/Staatsoper-Staatskapelle-Barenboim-Pollini.html

翌日はフィルハーモニーで同じ曲目での再演。弾き慣れた、音響も知り尽くしたホールでの演奏は、きっとまた、素晴らしいものだったでしょう。

9日はパリでのリサイタル。ここではシューマン「クライスレリアーナ」が、やはり久しぶりに演奏されました。ポリーニの美しいこの曲の演奏、聴きたかったです・・・。

来年3月のロンドンでは、シューマンのソナタ第3番(管弦楽のない協奏曲)がプログラムに入りました。後半はショパンのソナタ第3番など、聴き応えあるリサイタルになります。

シューマンの作品に、また新たに魅了されたかのように、熱心に取り組むマエストロ。 次のシーズンに予定されている来日公演でも、ぜひ演奏していただきたいと、切に望みます。

10月の演奏会はこれで終りましたが、もしかすると、29日にハンブルクのエルプフィルハーモニー大ホールで行われる、ECHO KLASSIKの授賞式に、登場されるかもしれません。そして、もしかしたら、演奏をなさるかも(不確定なことばかり書いて、すみません)。その模様はZDF(テレビ)で中継されるのですが・・・残念ながら、日本では見られませんm(_ _;)m。

今回の更新は、まだ詳細は分からないものばかりですが「2018年のスケジュール表」を作りました。また、ECHO KLASSIKの受賞を「レコード賞の受賞」に付け加えました。

2017年 10月11日 12:30

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