時々の雑記帳

音楽のこと、ポリーニのこと、日々の雑感を、
時々(気まぐれに)、書き入れます。

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(7月〜9月)

コスモスが揺れて
晴れた空には秋の気配が漂い、夕方には虫の音も聞こえてきます。朝夕は気温も収まってきて、あの猛暑はもう過ぎ去った!と、ホッとしています。
台風が次々とやって来て、大雨や土砂崩れの被害が日本の南から北まで、絶えず報道されていた今年の夏でした。被災された方々にはお見舞い申し上げます。そしてまだまだ台風発生が続き、大雨の被害も懸念されるこの秋です。旅先で見たコスモスの咲く原や、トンボの舞う空が、ずっと穏やかでありますように・・・。
輝かしい時の過ぎゆくのを惜しむ“晩夏”の心情も、爽やかな空に気持ちを新たにする“初秋”の風情も感じられぬままに、もう9月も半ばに差し掛かりました。落ち着いて音楽や美術に触れ合える清々しい“秋”に、早くなって欲しいものです。

さて、マエストロはルツェルン、ザルツブルクの音楽祭を成功裡に終えられ、9月はユックリ休養、そして新たなシーズンの活動に備えていらっしゃることでしょう。

ルツェルンでは40周年のアニバーサリー・イヤーということを前に書きました。今回で35回目の演奏会とのこと、2年毎くらいの登場と思っていましたが、もっと頻繁に出演していたようです。プロジェクトも行われたし、秋のピアノ・フェスティヴァルへの登場もカウントされているのでしょうか。ルツェルン音楽祭とは本当に深い繋がりがあると言えるでしょう。
ルツェルン音楽祭は若い才能の起用に力を入れているようですが、実は1960年にも、ポリーニに出演オファーがあったそうです。でも、若いポリーニは応じずに長い研鑚の時に入り、やっと1975年に出演が決まったとのこと。ところが不運にも交通事故に逢い、キャンセル、翌1976年に初登場となったのだそうです。
今回のリサイタルも大きな感動を呼び、スタンディング・オヴェーションに応えて、アンコールは3曲、まずドビュッシーで「沈める寺」、ショパンのバラード1番、子守唄。

ザルツブルク音楽祭には、1973年にデビューしています。知る限りでは(少なくとも21世紀になってからは)毎年出演されている“常連”のマエストロ。カラヤンとの唯一(?)の共演、敬愛するベームとの共演、フィッシャー=ディースカウとの珍しい共演、そして数々の名演奏を残した(ラジオで放送され、また非正規盤にもなって)リサイタル。意欲溢れる“ポリーニ・プロジェクト”を最初に行ったのも、この音楽祭でした。ポリーニの音楽活動にとって大切な、新たな試みやチャレンジを受け入れる、懐の深い(?)音楽祭なのでしょう。
今回のリサイタルも“恒例の”スタンディング・オヴェーションとなり、2曲のショパンの作品(曲名は判らず)でアンコールに応えました。
(どちらの音楽祭も2〜3の評が載っていたのですが、難し〜いドイツ語を読む気力が出ず・・・。スミマセンm(_ _;)m)

さて、「音楽の友」誌7月号に、「現代の3大ピアニスト、アシュケナージ、アルゲリッチ、ポリーニとその後継者たち」という特集があることを前にお知らせしました。既にお読みになったかもしれませんが、その中に興味深い文がありました。
「1956年のブゾーニ国際コンクールの作曲部門(ピアノ作品部門)では、公式ピアニストのヴィドゥッソが諸事情で出演できなくなり、弟子のポリーニに託した。関係者らは若すぎるポリーニに難色を示したが、短時間の練習時間だったにもかかわらず難なく弾いてのけ、しかも暗譜だったというから驚きだ。このときポリーニ14歳。」(上田弘子氏・文)
以前読んだポリーニの詳しいバイオグラフィに、14歳の時にある現代音楽(手元に資料がなく、曲名・作曲者が判りません)の初演をした、と記されていました。ああ、このことだったんだ!と思い至りました。そして、翌年15歳でリサイタルを行い「24の前奏曲」全曲演奏で成功を収めたのですが、この時「すでに有名な」と書かれていたようです。センセーショナルな登場だったのですね。

今回の更新は、2017年1月16日のミラノでの演奏会(Tanti auguri, 75 anni! でしょうか(^^)と、新譜リリース情報を付け加えました。

2016年 9月14日 13:40

夏の祭典
残暑きびしい日が続いています。皆さまお元気で夏をお過ごしでしょうか。
私は、熱中症にならぬよう、不要な外出は避けて室内で適切に冷房を点けて(とのお天気キャスターさんの忠告に従って)過ごしています。
ブラジルでは今やオリンピックがたけなわ、普段スポーツには興味が無い私も、お蔭でテレビで競技を観戦することも多く、厳しい鍛錬のもたらす素晴らしい技に魅了され、記録を塗り替える速さ・強さに目を見張りながら、日本の選手に、またメダルに輝く世界のトップ・アスリートに、拍手を送っています。
しかし4年後にはこの大会が東京で行われると思うと、ちょっと複雑な気持ちです。だって、この酷しい暑さの中で、こんな激しいスポーツを選手の皆さんにさせて、良いのかしら? 熱中症厳重注意のこの環境で、外国からのお客様を「お・も・て・な・し」なんて、出来るのかしら? と思ってしまいますから。爽やかなスポーツの秋に、開催されれば良いのに・・・。

さて、夏恒例の音楽の祭典も各地で開かれています。マエストロ・ポリーニは、8月9日にウィースバーデンにて、ラインガウ音楽祭に出演されました。プログラムはショパンとドビュッシー、それに冒頭にブーレーズに捧げるため、シェーンベルクの「6つのピアノ小品」が追加されました。次のルツェルン、ザルツブルクでもこの曲目の追加が発表されています。

評を見ると、前半のショパンではマエストロの調子はあまり良くなかったようで、不確かな部分や、ペダルの多用で明瞭さが損なわれたりしたこともあったようです。でも後半のドビュッシーでは音も透明感を得て、素晴らしい演奏だったようです。抒情的な繊細さ、アポロ的な輝き、慎み深い誇り高さ・・・抜きん出た音楽家としての彼の全てを表した演奏だったと、評にありました。
スタンディング・オヴェーションの喝采となり、アンコールは3曲、「沈める寺」、ショパンの曲(不明)、最後に美しい「子守唄」。熱心に耳を傾けていたホールの静寂の中に、感動した女性の心からのDanke!"という声が響いた、と。

17日にはルツェルン音楽祭への登場です。
今夏はポリーニの音楽祭40周年を記念する年です。1976年8月26日に初めて登場し、ベートーヴェンのソナタ3曲、「田園」「熱情」「ハンマークラヴィーア」を演奏したと、記録にありました。若きポリーニの意欲的なプログラム、どんなに素晴らしい演奏だったことでしょうね。(録音など・・・ないのでしょうか?)

ちなみに、40周年といえば、ヴァイオリニストのムターさんも今年同じ記念年を迎えます。彼女は僅か13歳で「若き芸術家達」というテーマの下に登場したそうです。若い才能を見出し、育てることがこの音楽祭の重要なテーマなのでしょう。

ポリーニはこの音楽祭で何回もリサイタルを開いていると思いますが、2003年にアバドがルツェルン祝祭管弦楽団を再創設(トスカニーニが1938年にスイスの主要オーケストラの団員を集めて、音楽祭のために創設、その後1990年代に活動を止めていた)してからは、協奏曲でも多くの演奏を行っています。
2004年にはベートーヴェンの第4番を弾き、ルツェルン・アカデミーでマスター・クラスを行い、ブーレーズ指揮でアカデミー管とシェーンベルクの協奏曲を共演、と大活躍。
ほぼ1年おきに登場し、2006年にはブラームスの第2番で共演しました。その年の秋には「ルツェルン・フェスティヴァルin東京」のツァーに同行し、素晴らしい演奏の数々を堪能させてくれました。日本のファンにとって、本当に嬉しい来日でしたね。
その後Pollini Project(2008年、2010年)やPollini Perspectives(2011−2012年)で、古典〜現代音楽の演奏や、音楽祭と共に新作委嘱も行ってきました。 2012年の来日では日本にもその成果がもたらされましたし、多くの都市で披露されてきました。
この音楽祭はポリーニにとって重要な活動の場であり、また音楽祭にとっても真に大切な演奏家なのでしょう。
2014年、アバドの逝去の年には、A.ネルソンス指揮でショパンの協奏曲第1番を演奏しました。秋にはピアノ・フェスティヴァルに出演していますが、夏の音楽祭出演はそれ以来となります。

今年からはR.シャイーがルツェルン祝祭管弦楽団を率いることになりました。マーラー室内管弦楽団を母体に、ベルリンフィルのメンバーやアバドと親交の深い音楽家たちが自発的に参加した、まさに“アバドの元に”集まった楽団ですが、シャイー自身も弱冠18歳の時に、ミラノ・スカラ座でアバドのアシスタントを務めて音楽人生を始めた、という指揮者です。きっと、アバドの遺志を継いで、共に素晴らしい演奏活動を続けて行くことでしょう。

ブーレーズもこの音楽祭に非常に深い関わりのある音楽家でした。
2003年にルツェルン・アカデミーを創設、20-21世紀の現代音楽を中心に、若い音楽家を育てることに力を注ぎました。
1月の逝去はまさに「巨星墜つ」でしたが、4月には120名のアカデミー卒業生が集まって、ブーレーズ追悼のコンサートが開かれたそうです。
今夏からは作曲家のウォルフガンク・リームが芸術監督になり、(ブーレーズのように指揮は得意でないので)若いマティアス・ピンツァー(ブーレーズが創設したアンサンブル・アンテルコンテンポランの音楽監督)が正指揮者としてアカデミー管弦楽団を指導するそうです。また今年はA.ギルバートがマスター・クラスを行い、秋のピアノ・フェスティヴァルではR.レヴィンがピアノのマスター・クラスを開くそうです。
巨匠亡き後も、遺志を継いだ音楽家達によって、若い才能を育てる活動は続けられるのですね。

1月以来、ブーレーズへの追悼としてシェーンベルクの作品を捧げ続けてきたポリーニにとっても、このルツェルンでの演奏会は、とりわけ感慨深いものでしょう。どうか素晴らしい演奏会となりますように! 心からお祈りしています。

2017年のスケジュール表を作りました。まだ情報はごく僅かですが、ご覧になってください。

2016年 8月16日 22:30

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