4月並みの暖かさに心浮かれて歩き、次の日は冷たい風に身を縮めている、そんな日の繰り返される弥生です。
3月11日、あの日から4年、各地で鎮魂の祈りが捧げられる時。今日も真冬の寒さが日本を覆っています。「復興」という言葉が空しくなるような現地の情景と、それでも「希望」を垣間見させてくれるそこに住む人々。暖かく、逞しく、謙虚で、真剣に物事に向き合う姿勢。
5年目の一日一日が実りあるものとなりますようにと、祈らずにはいられません。そして私達も忘れずに、何か出来ることをしよう!と、心を新たにしています。
梅は満開となり、桜の蕾も少〜し膨らんできて、時に足踏みしながらも春は一歩一歩近づいているようです。
卒業式の晴姿やお祝い・お礼のパーティーに臨む華やかな姿も、街で目にする機会が増えました。これまでを振り返り、色々なことに区切りをつけ、春には心新たにまた一歩を踏み出す、3月はそんな特別な月ですね。光りと暖かさの佳き春が、早く来ますように。
先月はフィレンツェ、ケルン、バーデン・バーデンで演奏されたマエストロ。どのリサイタルも大成功だったようです。
フィレンツェで聴かれた方からメールを頂きました(ありがとうございました!)。会場のオペラ・ディ・フィレンツェはこの古都の中心から少し離れたところに出来た新しいホールで、広々としたアプローチを持ち、設備の良い、そして音響の素晴らしいホールだそうです。
優雅で華やかなイタリアの老若男女が待つ高揚した雰囲気の中、歓声と大拍手に迎えられてのマエストロの登場。前半のベートーヴェン「テンペスト」と「熱情」は、速めのテンポながら、前のめりぎみに弾き急ぐという感のない、情感の大きさがそのまま演奏の大きな量感に繋がるという印象だったとのこと。キラキラと美しい高音と低音の重さのバランスが絶妙な、クリアで明るさのある、強く邁進する力のある生き生きとした演奏だったようです。
後半は曲順が変わり、まず幻想ポロネーズから。美しく繊細ながら力強さと深さも溢れ、まるで巨大な蜃気楼のような印象で、心を惑わされたとのこと。3曲のマズルカは活力と明るさがあり、しかも品格が高い美しい演奏だった、と。ワルツ2曲も速いテンポでクリアな美しい音の見事な演奏だったとのこと。そして1曲目のいわゆる「子犬のワルツ」が終わると、どこからともなく拍手が起こり、すぐに会場中に歓声とともに広まり、マエストロは一瞬鍵盤にうつ伏され、その後本当に嬉しそうに立ち上がって聴衆に応えられたとのことでした。
最後のスケルツォ第3番も力強いのに儚さも感じられる、美しい演奏だったそうです。アンコールは3曲、十八番のノクターン(op.27-2)、「革命」、バラード第1番。この曲も終わらないうちから拍手が徐々に巻き起こり、マエストロはそれも嬉しそうに受けていらしたとのこと。
ストイックなポリーニ、とよく言われますが、この日のマエストロはご自分を解放して、感情の赴くままに演奏していたようです。そして孤独感のない幸せそうなマエストロがいた、とのこと。フィレンツェの聴衆の愛と尊敬が伝わって、素晴らしい演奏で応えられたのでしょうね。
ケルンではシューマンとショパンのリサイタル。ポジティブな評があったと、Janさんが知らせてくれました。アンコールはノクターンop.27-2と「革命」。
バーデン・バーデンではショパンとドビュッシーのプログラム。お聴きになったSuzanneさんからすぐにメールが来ました。いつものように素晴らしかった〜、プログラムの他に3曲も弾いてくれて、その後にサイン会もあって、私はまだ(翌朝)ボーッとしています・・・と(^^)。「革命」、ノクターンop.27-2にスケルツォ第3番というアンコールでした。
とても好調に、また意欲的に演奏会を続けていられる様子が伺えて嬉しくなります。そしてこれまでと変わらぬポリーニ″でありながら、また何か新しい次元に進んでいるような印象のマエストロの演奏。聴きたくなりますねぇ(*^^*)。
3月はロンドンとパリでの演奏会。
ロンドンでは今回はシューマン:アラベスク、クライスレリアーナが弾かれますが、もう来シーズンの登場(2016年2月23日)も発表され、シューマン:幻想曲が予定されています。
今月末のパリでは新しいホール、フィルハーモニー・ド・パリでの演奏会。サル・プレイエルの隣に建設された、曲線の美しい、音響も素晴らしい(永田音響設計)ホールで、パリ管弦楽団やアンサンブル・アンテルコンテンポランの本拠地となり、サル・プレイエルでのリサイタルも今後はこちらで行われるようです。26日に90歳となるブーレーズを祝う催しがあり(展示や演奏会)、ポリーニのソナタ第2番の演奏も献呈されます。
他にも新たになった日程、発表されたプログラムがあります。
夏の音楽祭ではザルツブルクに先立って、シュレスウィッヒ・ホルシュタイン音楽祭に出演。
秋のアメリカ・ツァーにはストラスモアでもリサイタル。
12月6日にはバーデン・バーデンでリサイタル。来シーズンとはいえ同年に2回なんて、バーデン・バーデンのファンが羨ましいですね。
プログラムでは、これまで各地で「ショパンの作品」とのみ記されていた曲目が発表されました。舟歌、幻想ポロネーズ、子守唄、英雄ポロネーズ。どれも聴き応えある素晴らしい曲ばかりですね。
マエストロ・ポリーニの意欲溢れる演奏活動に、幸多かれ、と祈るばかりです。