時々の雑記帳

音楽のこと、ポリーニのこと、日々の雑感を、
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(4月〜6月)

紫陽花は日本の花
今年は梅雨入り宣言が難しい気圧配置と言われましたが、ほぼ平年通りの梅雨入りをした関東地方でした。でも雨の日は少なく、晴れれば真夏の蒸し暑さに。それでもやっぱり晴れ間は嬉しいものです。洗濯も掃除もサッサと片付けて、紫陽花を見に出かけたり、花菖蒲の写真を撮りに行ったり。雨に洗われた青や紫の花は生気があり、シットリと落ち着いた美しさに輝いています。花々の色に癒されて、雨もまた良し、と思えます。・・・でも、一方で九州では梅雨に似つかわしくない豪雨。被害に合われた方々に、お見舞い申し上げます。
ここ数年、梅雨〜台風、それ以外の時も、豪雨や洪水、土砂崩れの被害が各地で相次いでいます。それは日本だけでなく地球上の広い範囲にも及んでいますが、気象条件は人間の手に余るもの、天を仰ぐしかない・・・のかしら。でも、人間活動ゆえの地球温暖化の所為ならば、やはりなんとかしなくては。世界のリーダー達には地上(地球の表面)の「政治」問題ばかりでなく、天上も地下もひっくるめて、地球の問題を真剣に取り上げて欲しいものです。まさにインターナショナルな問題なのですから。

6月のウィーンで、マエストロは今シーズンの活動を無事に終えられました。腱炎(足)がすっかり治って、かどうかはよく判りません。というのも、ある評には「慎重に、躓かぬように、とてもゆっくりと歩いて登場した。」とありました。「けれども、彼のピアノの所に来ると、年齢に制約された躊躇いはすべて止揚され、熟練に席を譲った」と。ピアノの側に立つと、小柄なマエストロがスッと大きく見える・・・登場シーンが思い出されます。
演奏は、流麗で明晰、鍵盤の上を飛ぶように指が滑らかだったが、前半のシューマンでは、ユックリした部分はとても美しかったけれど、急速な部分ではちょっと早すぎて特徴が失せてしまったかのようだった、と。
後半のショパンは、「異議の唱えようのない」演奏で、しなやかに、上質な響きで弾かれた舟歌、幻想ポロネーズ。フォルティッシモで丸みある温かい響きと組み合わされた素晴らしい軽やかさが、ピアニッシモでは 内奥を輝かせ、曲の理想と一致するかのようだった。全て角という角を無しに(Ohne Ecken und Kanten)演奏するという意識的な決意。音楽的にも技巧的な面でも完璧な奏法で、どんな高度な音楽的レベルに於いても、そのようにして滑らかな印象を与えたのだ。子守唄と英雄ポロネーズは何とも言えぬほど美しく、感情を込めて弾かれ、輝きをもたらした。聴衆は立ち上がって彼を讃え、アンコールは再び彼の偉大さを示した。とても成功した夕べだった。
(Ohne Ecken und Kanten--Wiener Zeitung)

アンコールは4曲で、「革命」、スケルツォ第3番、ノクターン第8番、バラード第1番でした。

ベルリンに続いてウィーンでもお聴きになったJanさんからも、すぐにメールを頂きました。

ベルリンでは、前半のシューマンで不安定な部分もあったようですが、ウィーンではより美しく安定した演奏だったこと。
舟歌、幻想ポロネーズ、バラードの始まりの部分での透明な美しい音色が本当に素晴らしかった・・・と。
またベルリンでは英雄ポロネーズの143〜151小節でCの音を強調(ショパンの楽譜にもアクセントが付けられている)して演奏したそうですが、ウィーンではそれはなく、滑らかで美しいメロディラインだった、と。

上記の評にある「角」の無い滑らかな演奏の証左のようですが、ベルリンでは新たな試みを、ウィーンではまた別の途を探る・・・ポリーニの探求心の深さを示しているようです。

ウィーン芸術週間の常連で、ムジークフェラインとコンツェルトハウスで交互にリサイタルを開くのが常であるポリーニ。2012年には体調不良でキャンセルとなりましたが、昨年も転倒により急遽キャンセルとなってしまったマエストロのリサイタルでした。ウィーンの聴衆がどんなに待ち望んでいたことか。またマエストロ自身も期するところある公演だったのではないでしょうか。4曲のアンコールは、プログラムの後半にも匹敵するボリューム、豪華な曲目です。ウィーンで、好調の裡に今シーズンを終えられたマエストロの、高揚した気持ちが伝わってくるような気がします。

これから夏の音楽祭シーズンまで、しばらく長い休みのマエストロです。レコーディングは?と見ると、Chris Alderさんのtwitterに、こんなツブヤキが。
2 weeks of piano recordings ahead! Munich Pollini father then son, thereafter Paris with Lang Lang″(5月24日)

5月の最後の週にレコーディングが行われたようです。曲目は???? DGとの契約ではシュトックハウゼンのレコーディングがありますから、それでしょうか? それとも・・・。それにダニエーレさんは何をレコーディングしたのでしょう?(ちなみにLang Langは、ショパンです) 
ともあれ、次は何がリリースされるのか、楽しみですね。

ミュンヘンの公演が新たに発表されました。来年3月11日です。4月にキャンセルとなった公演の代替と思われますが、曲目はまだ決まっていないようです。
ベ ルリン、ウィーンのアンコール曲と、ストラスモアのプログラムを追記して、更新といたします。

2015年 6月15日 15時50分

皐月の空は
初夏の陽射しに爽やかな風が心地よい季節になりました。新緑は目を洗われるよう、五月晴れには心も晴れやかになります。
ゴールデン・ウィークの前半に箱根に行ってきました。お天気に恵まれ、富士山がよく見えて、新緑の美しさを満喫できる旅でした。ツツジは五分咲きでしたが芳香を漂わせ、赤、白、紫と鮮やかな色が目を楽しませてくれました。遊覧船やロープウェーに乗り、美味しい食事と温泉で癒されて東京に帰ってくると、「箱根山で火山性微動」とのニュース。エ〜〜ッ! ちっとも知らなかったわ!
その後爆発の危険ありと大涌谷付近は立入り禁止、ロープウェーは運行中止、温泉供給もストップ・・・。良い時に行ってきたネ〜と、安堵。でも、これからがツツジの最も美しい時、その後は紫陽花も咲いて箱根の魅力が一段と増す時なのに。ホテルやお店、交通機関や観光に関わる人達の落胆を思うと、残念でなりません。尤もツツジの名所も紫陽花を楽しめる電車も、危険とされる場所からは離れているので、安心して観光することができます。大きな災害に至ることなく、早く終息することを願うばかりです。

4月のポリーニのリサイタルは、チューリッヒ、ミュンヘンに続いて後半のリサイタルもバルセロナは中止(A.ヴォロドスが代役)、マドリッドは延期(来年1月21日)となりました。腱炎(tendinitis)によるとのこと、前半のキャンセルもその為だったそうです。
私も(私事ながら)腱鞘炎(腱炎とは違うけど)に悩まされていますが、マエストロの腱炎は何処なのか、ピアニストにとって大切な肩、腕、手首、指の痛みはどんなに辛いことだろう、長引かないと良いけれど・・・と心配でした。
5月5日のフランクフルトでの演奏会が無事に、成功裡に行われたことを知った時は、本当に嬉しく思いました。アンコールに「革命」とスケルツォ第3番。きっと体調も良く、素敵なリサイタルだったのでしょう。
・・・と思ったのですが。
次の11日ミラノのリサイタルは中止となり、すぐに11月16日に延期と発表されました。やはり腱炎のため、ということです。安静が何よりも大切という腱炎の治療。5日の登場は少々無理をなさっていたのでしょうか。
今後はベルリンとウィーンの演奏会で今シーズンを終えるマエストロ。一日も早く恢復されることを切に祈りつつ、でも決して無理はなさらずに、と心から思います。

来シーズンの予定がまた幾つか発表されました。
9月半ばには南チロル(アルト・アディジェ)音楽祭へ出演します。開催地のドッビアーコは北部イタリア山岳地帯(ドロミテ)にある風光明媚な町で、20世紀初頭はオーストリア領(当時の地名はトプラッハ)であり、マーラーが夏を過ごした土地でした。2011年から始まった音楽祭で、マエストロ・ポリーニの登場は初めてです。
10月のアメリカ・ツァー、シカゴとニューヨークでのショパンの曲目が発表されました。後期の聴き応えある曲ばかりです。
ルツェルン・ピアノ・フェスティヴァルの最終日に演奏する曲目も発表されました。シューマンとショパンのプログラムです。
来年になると、1月にはティーレマン指揮のベルリンフィルと共演でショパンのピアノ協奏曲を3回演奏します。
2月はパリ、シュトゥットガルト、5月にはハンブルク、ベルリンでのリサイタルが行われます。
3月、4月のスケジュールが空いている・・・まあ、これから徐々に判ってくるのでしょうけれど、アジア・ツァーなんて、ないかなぁ。

2015年 5月11日 21時10分

花冷え
いつもより早く桜が咲き始め、お花見日和の日が続き、寒さから解放されてホッとしたのも束の間、数日前から寒さが戻ってきました。都心でも雪がチラついたようで、「花冷え」というキレイな言葉では追いつかないほどの真冬の寒さです。こんな時は体調を崩しがち、気を付けなくては、と思っていたら・・・。

マエストロが・・・。もうすぐスイスのチューリッヒでリサイタル、と思ってトーンハレのホームページを見たら、なんとabgesagt wegen krankheit(病気のため取消し)の字が。緊急のことだったようで、この時点では3日後11日のミュンヘンのリサイタルには告知が無かったのですが、翌日にはこちらにも"ABSAGE WEGEN KRANKHEIT"。“いつか代替公演を行うよう努力します、チケットはそのまま持っていても、返金しても結構です”との主催者の言葉でした。
ヨーロッパも天候不順なのでしょうか、季節の変わり目の体調不良で、きっと慎重に対処されているのでしょう。後半のスペインのスケジュールには変化は有りません。一日も早く回復されて、演奏活動を再開されますよう、願っています。

3月はロンドンとパリでのリサイタル。どちらも素晴らしい演奏だったようです。
ロンドンで聴かれた方から、メールを頂きました(ありがとうございました!)
シューマンの詩心がそのまま音楽になったような曲「アラベスク」と「クライスレリアーナ」を、マエストロはその根源を理解したように、書かれた詩を朗読するかのような演奏をされた、とのこと。
ショパンの24の前奏曲は、シューマンの詩心の音楽とは全く異なり、まるで小宇宙だったと。革新と優美さが絶妙に入り混じり、エレガントでありながらショパンの前衛精神を確かに捉えた見事な演奏で、確信に満ちて、大きく強く、様々な世界をはらんだ小宇宙のように感じられる演奏だったそうです。
聴衆は前半終了からすでに大きな拍手と喝采で讃え、後半終了後はスタンディング・オヴェーションとブラボーの嵐。マエストロも嬉しそうに応えて、アンコールは3曲、「革命」、ノクターン8番、そしてスケルツォ第3番でした。公演後にはサイン会も行われたようです。

パリの演奏会は、ある方のFacebookに載せられた感想を読ませていただきました。
一つ一つの音が極めて自然な色合いとテクスチャーで、あるべき位置へと配されていく。音のヴァリエーションが増し、ボリュームも加わり豊かになってきた、というように書かれていました。
その魅力的な音で演奏されたのは、ショパン:24の前奏曲、ドビュッシーは前奏曲集第2巻から6曲、「霧」「枯葉」「ヴィーノの門」「月の光の降り注ぐテラス」「水の精」「花火」。
そして最後のブーレーズの第2ソナタを、マエストロは口ずさみながら(!)弾いていたそうです。
アンコールは2曲、ドビュッシーの「沈める寺」とショパンのバラード第1番でした。

近頃のマエストロの演奏会の評や感想を読んでいると、美しい音がさらに磨かれ表情豊かになり、演奏は深みを増しながら若々しい前進性を維持して、表現の高い次元へと進んでいるように思わされます。聴きたいなぁ、今のマエストロの音楽を・・・。

などと思いながら、今、私は、ポリーニ若き日の、ショパン「協奏曲第1番」にハマっています。
1960年5月クレツキ指揮フランス国立放送管弦楽団とのライヴ音源によるステレオ盤。正規盤なので、レコード芸術4月号、協奏曲の部でも取り上げられていて、準(歌崎和彦氏)と推薦(岡部真一郎氏)で準特選盤となっていました。
冴えた技巧、繊細でありながら自由なロマン性、若々しく熱いパッション溢れる演奏、素敵です〜〜。
この演奏会は先ずブラームスの交響曲第3番(最初にCDに入っています)、ショパンの協奏曲、その後にストラヴィンスキー「ペトルーシュカ」というプログラムだったそうです。若きポリーニへ送られた熱烈な拍手喝采(CDでも聞こえます)、「ペトルーシュカ」でクールダウン? それとも更にヒートアップ?だったのでしょうか・・・?

CDの話題としては、POLLINI & ABBADO The Complete Deutsche Grammophon Recordings が発売されます。
DGに録音された、二人の音楽家の親和から生み出された名演奏を、8枚のディスクに納めたものです。ベートーヴェンの協奏曲第1番〜第5番、合唱幻想曲。ブラームスの協奏曲第1番・第2番(BPOとVPOの2種)。シューマンとシェーンベルクの協奏曲。バルトークの第1番・第2番。そしてノーノ「力と光の波のように」。二人のために書かれたこの曲が、1973年に初めて一緒に録音した曲なのだそうです。
もう二度と聴くことのできない二人の協演。遺された不滅の名演に、改めて、集中して耳を傾けるのも、良いかもしれませんね。


2015年 4月11日 13時50分

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