時々の雑記帳

音楽のこと、ポリーニのこと、日々の雑感を、
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(7月〜9月)

秋のブラームス
ようやく秋らしい晴天が訪れました。荒々しい梅雨から記録的な猛暑を経て、猛烈な台風が連続で襲い、怖ろしい豪雨を齎したこの夏〜秋。異常気象は日本の美しい“四季”の概念を覆してしまうのだろうか、爽やかな秋という季節は来るのかしら・・・と案じられましたが。人間の営みが招いた地球温暖化が根底にあるのなら、現代人、特に都会人が生活を見直さない限り、これからは“異常”がフツウになっていくのかもしれませんね。
自然の猛威は各地に深い傷跡を残したまま、復旧・復興は未だ緒についたばかり。被災された方々に、心からお見舞い申し上げます。そして穏やかな秋の日が続くことを願うばかりです。

予約していた“B4”というセットが届きました。Brahms作品の4枚組、ドレスデン・シュターツカペレの演奏で交響曲4曲他のCD3枚に、ポリーニのピアノ協奏曲2曲とバイオリン協奏曲がDVDに納められたもの。以前にNHKのBSプレミアムで放送されたものと同じ音源(確かめてはいませんが)と思われますが、こうしてセットとしてリリースされ、手に出来たのは、やはり嬉しいことです。今回はまずパソコンで、真近で、画面を食い入るように見つめて聴きました。
まだ協奏曲第1番しか聴いて(見て)いないのですが、そしてCDではとっくに聴いていたのですが、やはり映像で見る(聴く)のは格別です。胸を深くえぐる激しい第1楽章、優しい寂寥感に包まれる第2楽章、力と熱に溢れた緊迫した終楽章。ポリーニの集中した表情、醸し出す緊張感、オーケストラへの眼差し、思いのこもった打鍵。演奏後の嬉しげな、満足したマエストロの笑顔。ティーレマンの指揮、重厚な響きのシュターツカペレとの息もよく合って、2011年のこの演奏から2013年の協奏曲第2番の共演へと確かに繋がる糸を見たように思いました。

そしてCDのリリースでは、嬉しいニュースが発表されましたね!
ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集!! 最後の1枚が近いうちにリリースされると、期待はしていたのですが、同時に全集の完成という形で発表されるとは! 驚きでした。でも本当に素晴らしいことですね!!! おめでとうございます、マエストロ! 
1975年に第30番・第31番を録音して始まった、ポリーニのベートーヴェンのソナタへの取り組み。その後1曲ずつ、時期を選んで、慎重に、丁寧に進められた録音。どの曲集にもその時々のポリーニの“現在”が刻印された優れた演奏でした。39年という長い年月をかけて完成した全集は、ピアニスト・ポリーニの歩みそのもの。改めて、心して、耳を傾けたいと思います。ありがとう、マエストロ!

さて、大分遅くなりましたが、夏のポリーニの活躍について、少し触れたいと思います。

ザルツブルクでは幾つかの評が載りました。“柔らかなポエジーのある演奏”、“歌いながらピアノの詩を奏でる”、“革命家(感傷的・ロマンティックではなく、明瞭・真摯なショパンの演奏をする)の秋の収穫”・・・というようなタイトルが見えました(本文はあまり読ま(め)ず、すみませんm(_ _;)m)。
アンコールは、革命のエチュード、バラード第1番、そして“何とも言えぬほど美しい、柔らかな、真珠のような子守唄”だったとのこと。

ルツェルンの演奏は、ラジオでお聴きになった方もいらっしゃるでしょう。私も眠い目こすりつつ耳を傾けました。久しぶりに聴くショパンの協奏曲、なにやら「懐かしい!」という感じで胸が熱くなりました。でも受信状態が良くなく、音の質もくぐもったものでしたが、ポリーニのピアノの高音はキラキラと輝いて聞こえました。
Janさんからメールで、急遽2日目の24日の演奏会を聴きに行ったことを知らせてくれました。とても素晴らしい演奏、美しく輝かしい音で、前へ前へと進む素敵な演奏だったと(不自然に突進するようではなく)。そしてなんと、アンコールにバラード第1番を弾いたとのことです。協奏曲の後にアンコールに応えるマエストロ・・・、Janさん(全聴衆?)にも嬉しい驚きだったようですが、本当に近年にはないことのように思われます。きっと十分に満足のいく演奏だったのでしょうね。
批評はさまざまでした。主に1日目の評で、厳しい評としては、ミスタッチが目立ったとか、ネルソンスの演奏と合っていなくて、別々の作品を弾いているようだった、とか。好評の方では、音の美しさを讃え、ショパンの作品を誠実に、明瞭に演奏して、作品本来の美しさを引き出していた、とか。
ある評に拠れば、2日目は午後にランランがリサイタルを開き、ショパンのバラード4曲もプログラムにあったそうです。夜のポリーニのアンコールで、奇しくも競演のようになったバラード第1番。ヴァリアントが多く、輝かしく豪華なランランの演奏に対し、真摯にショパンの楽譜に向き合い、美しさと共にその深さ、偉大さを明らかにして聴衆を感動させたポリーニの演奏。ポリーニの演奏は現代的(modern)と言われるが、いや、これはもはや時を超越したものだ、ランランは煌めく流星だ、とこの評は結んでいました。

Piano Echos''14という音楽祭があります。ピエモンテ州モンフェラートを中心に、若手ピアニストが集い約1か月に亘って行われます。そこに、Il PremioTasto d'Argento″(“銀の鍵盤”賞)があり、今年はアンジェロ・ファッブリーニさんに贈られることになりました。
ミケランジェリ、マガロフ、ルービンシュタイン、バレンボイムらのために働き、特にポリーニとは長い間の友情(連帯)関係を築いている。その仕事はいくらかフォーミュラ1におけるメカのトップ技術者の仕事にも準えられる。世界的に著名なファッブリーニ氏に授与することで、いつも陰で働き、さまざまな芸術的な問題に直面したピアニスト達が本来の演奏を行えるようコンディションを整え、支える全ての人に、讃辞を贈りたいと願う、とありました。
Fabbriniさん、おめでとうございます! これからも良きご活躍を!

今回の更新は、夏の音楽祭のアンコール曲、マッカーター劇場、ルツェルンでの曲目、そしてミラノの日程を付け加えました。

2014年 9月15日 15:00

ワインをどうぞ
夏のページを一文字も書かないうちに、早くも“暦の上では秋”になりました。この2か月ほどの猛暑を思えば、秋の到来はありがたいことですが・・・でも、暑さはすぐには退かないようですし、台風という自然の猛威も次々と現れます。今年は異常なほどの雨に襲われた地域が、九州、四国から東北、北海道まで・・・結局日本全国で、何度も何か所もありました。皆様にはご無事で夏を楽しんでいられることを願っています。

さて、先月終り頃からPollini″の字がいくつかweb上で見られるようになりました。ラインガウ音楽祭の紹介記事です。あぁ、マエストロはお元気に出演されるんだ・・・と思いながらも、突然にAbsage(キャンセル)″などという文字が表れないようにと、祈るような思いでいました。そして8月8日を無事に迎えられて、本当に良かったです〜。

ラインガウ音楽祭は1988年から始まった音楽祭。フランクフルト(am Main)から少し西に、マイン川とライン川が合流する街マインツ、ヴィースバーデンをはじめ、ライン川の流域の町や村、周辺の丘陵、山岳までの広い範囲で、夏の長い期間に亘って行われます。
今年は6月下旬から9月中旬まで、会場もコンサートホールだけでなく、教会、修道院、僧院、城、ホテル、ワイナリー、大学キャンパスなど様々な場所で行われます。
出演者も無名の新人から期待される若手、中堅、そして著名な演奏家や団体まで、様々な興趣溢れる演奏に触れることが出来ます。

今年はピアニストはポリーニを筆頭に、D.フレイ、P.L.エマール、I.レヴィット、J.ビス、A.ヴォロドス、K.リフシッツ、などが登場。
J.リシェツキ/K.ヤルヴィ指揮バルト海ユース・フィル、M.ペライア/Academy of St Martin in the Fieldsの協奏曲もあります。
バイオリン/ツィンマーマンとピアノ/ツァハリアス、ソプラノ/ダムラウとハープ/メストレのデュオ。
ヤノウスキ指揮ベルリン放送響(Vn./シュタインバッハー)、エッシェンバッハ指揮G.マーラー・ユーゲント管、バレンボイム指揮ベルリン・シュターツカペレ、ガーディナー指揮ロンドン交響楽団(Vc./カプソン)・・・錚々たるメンバー、団体が名を連ねています。

ヴィースバーデンはその名(Baden)のように豊富な温泉や鉱泉のある所で、ヨーロッパで最も早く開けた温泉地と言われます。Kurhaus″は辞書には「療養所、温泉旅館」となっていますが、このような特色ある街の中心的な文化施設という存在なのでしょう。大ホール、中小のホールは演奏会だけでなく各種の会議にも使用され、カジノ、レストラン、スパがあり、背後には美しい公園もあるようです。
音楽祭主催者は、何年も前からポリーニに出演を依頼していたが、ついに実現できた。それはFriedrich von Thiersch Saalの素晴らしさに拠るものだ、というようなことを言っています。

このホールは著名な建築家・画家(その功績により騎士に叙せられた)のThierschによって1907年に建設されました。
高い天井にドームを戴き、背景に金の彫刻の施された舞台はシャンデリアに華麗に輝き、大円柱に支えられた空間の窓には美しいステンドグラスが映える壮麗なホール。何よりも音響の素晴らしさはドイツで一番と言われます。
歴史的ホールゆえにこの度改修を施していたのでしょうか、先月末からの記事に、このホールで「再び演奏会が開かれるようになった」「一時的に公演が可能となった」などという記述がありました。
8月7日にシェークスピア生誕450年にちなむ朗読と音楽の会、そして8月8日に待ちに待ったイタリアの巨匠マウリツィオ・ポリーニの演奏会が開かれる、と。
建築にも造詣が深く、何より音の響きを重視するマエストロ。きっと素晴らしい空間の中で、心地良く音楽を奏でられたことでしょう。

ちなみに昨年はNHK交響楽団がデュトワに率いられて音楽祭に出演し、このホールで演奏して高評を博したそうです。Webに記事があり、ホールの写真なども載っています。

http://www.nhkso.or.jp/news/6365/

ラインガウ・・・ワイン好きな方はよくご存じでしょう。ドイツを代表するワインの産地。音楽祭を記念して上質なリースリング・ワインも作られているそうです。音楽祭のマークもブドウをかたどった洒落たものです。
マエストロも演奏後には、美酒を楽しまれたにちがいありませんネ(^^)。

2015年のスケジュール表を作りました。来シーズンの6月までで、まだ情報が少なく、曲目も未定ばかりでちょっと寂しいものですが、ご覧になってください。来々シーズン9月以降が判るのはもっと先でしょうけれど、そこに「日本」の字が表れると良いですね・・・。

2014年 8月10日 17:15

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