時々の雑記帳

音楽のこと、ポリーニのこと、日々の雑感を、
時々(気まぐれに)、書き入れます。

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(4月〜6月)

新たなシーズン
夜道を歩いていると、ふいに甘い香りに包まれました。見ると白い花が夜目にも鮮やかに咲いています。 あ、くちなし? 乳白色の匂い立つ花は初夏を告げているかのよう。花言葉は「とても幸せです」「優雅」「洗練」「清潔」「喜びを運ぶ」・・・確かに姿形は優雅、洗練を思わせ、甘い香りは幸せな気持ちや喜びを伝えるのにピッタリかもしれません。
梅雨には青い紫陽花や、紫の花菖蒲が、その涼しげな色と静かな佇まいが水の季節に相応しいと、愛でられています。紫陽花の寺や公園や高原。花菖蒲の池や庭園や水郷。微妙に変わる色々、沢山の花々、青や紫の色を目に一杯納めたくて、どこかへ見に行きたいな〜と思いつつ、なかなか足を運べません。でも町の中でも、道端の紫陽花や、住宅の庭に咲くくちなしの香りから、季節の便りを貰うのも、また幸せなことですね。

マエストロはウィーンのリサイタルで今シーズンを終えられました。中国・日本ツアー有り、アメリカ・ツアー有りの忙しかったシーズンでしたが、お元気で過ごされて、本当に良かったです。今はノンビリとお好きなことを楽しんでいられるのでしょうか。どうぞ、ごゆっくり! でも、もしレコーディングなどされているのなら・・・それは勿論、楽しみです!

さて、来シーズンの予定も大分明らかになってきたので、スケジュール表を新たにしました。ヨーロッパ中心で活躍される予定のマエストロですが、エッ?と思う珍しい日程も! 2月に中東のオマーン、マスカット市へのツアー、マエストロ・アバドとモーツァルト管に同行しての共演です。おそらく初めての中東での公演ではないでしょうか。
オマーン国はスルタンを君主と仰ぐアラビア半島東端の産油国。豊かな経済力を背景に、安定した政治体制のもと、欧米の文化を積極的に取り入れ、人々は芸術にも深い造詣を持っているとのこと。 公演会場であるROHM(Royal Opera House Muscat)は9月にナポリのサンカルロ劇場による「セヴィリャの理髪師」で幕を開け、「椿姫」、「ルサルカ」を上演、そしてウィーン国立歌劇場による「フィガロの結婚」も上演されるとのこと。バレーはマリインスキーやバイエルン国立、ウィーン国立バレー団の公演。またヨー・ヨー・マ、ヴェンゲーロフ、ドゥダメルも公演し、ハイライトはアバド & モーツァルト管とポリーニ。華々しいラインアップです。その多くはオマーンに“デビュー”ということですから、我がマエストロ達もやはり初めてのツアーなのでしょうね。

イタリアではミラノでPollini Project″が開かれます。ルツェルンで始まったProjectのミラノ版ですが、幾つか変化した部分もあります。10月27日の第1回目はマンゾーニに代わりブーレーズのSur Incisesu'″が演奏されます。2回目以降は来年になりますが、これまでとは順番が入れ替わったり、新しい作品が演奏されたり。2013-2014年のスケジュール表でお確かめください。

それから、5月のカーネギーホールでのリサイタルは、曲目が一部変更になっていました。ベートーヴェンのソナタ第24番が第22番に代わっていました(批評文を読んでいたのに見過ごしていましたm(_ _)m)。訂正し、またアンコール曲なども追記しましたので、そちらもご覧ください。

2013年 6月24日 0:30

初夏の風に吹かれて
若い柔らかい緑が次第に濃さを増して、強さのある緑になってきました。我が家付近には銀杏の街路樹があるのですが、いつの間に?と思うほど青々とした葉を付けた木々の列となっていました。この木は晩秋の黄葉を愛でられますが、扇形の小さな葉が次第に育ちながら色づいていく、初夏の緑の光景も良いものです。でも今年の春は、寒さが続いたり、急に夏の暑さになったり、激しい雨や強風・突風が多くて、本当に心地よい長閑な春の時を味わえなかったような気がします。そしてそろそろ走り梅雨とか・・・ちょっとユウウツな季節ですが、皆様体調に気を付けてお過ごしください。

マエストロのアメリカ・ツアーも無事(とっくに)終了、今はミラノのご自宅でゆっくりしていられるでしょうか。3年ぶりのツアーは、マエストロにもファンにも、感慨深いものだったことでしょう。

演奏会評、感想をいくつか読みましたが、ショパンとドビュッシーのプログラムでは、ショパンの演奏に辛い評が多かったようです。美しい音、衰えぬ技巧で見事だが、曲を解明して見せているようで、どうも心に訴えてこない(ストラスモア)、一方カーネギーでは、技巧的に不安定で、しかも弾き急いでいるようで十分楽しめない、などと。
けれど後半のドビュッシーはどの日も素晴らしかったようで、前半に感じた満たされなさを補って余りある(NY)、反ポリーニ派も脱帽だろう(ストラスモア)などと有りました。カーネギーホールでは3曲のアンコールがあり、特に「革命のエチュード」がこの日のハイライトになったようです。

ベートーヴェンのソナタの日は、1曲目の「悲愴」ではミスタッチもあったものの、ポリーニの音楽へ注ぎ込む強烈さがそれらを気にならなくさせた、と。次第に調子が上がっていき、「ワルトシュタイン」は強い風の吹く明るい春の空のよう。22番はちょっと早過ぎて音楽を楽しむ暇がないほどだった。そして最後の「熱情」は熱と気迫のこもった素晴らしい演奏で、満場の聴衆のスタンディング・オヴェーションを引き起こしたそうです。アンコールはバガテル2曲。

ムーティと共演したモーツァルトの協奏曲は・・・日に依るのかもしれませんが、一方ではとても美しい磨かれた音色が際立っていた、他方ではひどい音だ、ホールのピアノを使えば良かったのに、などと異なる評価が出ていました。
好評の方を読むと、ポリーニの貴族的な優雅さにムーティは豊かな洗練さをマッチさせてよくサポートし、シカゴ響の管楽器もポリーニのしなやかなフレーズに合わせて歌に満ちた共演となった。有名な"Elvira Madigan"は「冷静」とか「感情が少ない」とポリーニ言われる批判を論破するもので、決してicy"などではなかった、とのことでした。第3楽章はもう少しテンポが緩かったら、オペラ・ブッファの魅力とウィットを味わえただろうに、と有りましたが、ポリーニは彼のプレストで駆け抜けたようです。

久しぶりの来訪ということで、インタヴュー(David Mermelstein氏)も行われました。簡単に訳してみます。

洒落たホテルのスィートルームにて、1時間半の対話。粋なダークスーツとネクタイで、愛想良く、穏やかに、小さなジェスチュアを交え、時には沈黙も交えながら。長年慣れ親しんだタバコは止めたようだが、落ち着きの無さなどが表面に出ることはなかった。

彼の芸術的資質について。
"aristocratic"(貴族的) というレッテルは、その言葉のあるニュアンスを彼は好感しないとしても、彼に喜ばれた。
「ありがとうとしか言えません。ええ、受け入れますよ。ピアニストとして私が何であるか、それを言うのは私ではないですが。でもこれはとても良い賛辞です。」

しかし、「光沢ある、ステンレス−スティールの摩天楼」と評したデヴィッド・デュバルの言葉には、反発した。
「全く違います。私の演奏を人それぞれ好きなように見てかまいません、でも私は自分と自分の演奏について、全く別の考えでいます。音楽へのクール・アプローチは確かに私には向いていません。これは音楽作品の力をおそらく制限するでしょう。客観性はある方法を以て理解できます。私は音楽にそれ自身で語って欲しいのです、しかしクールに演奏された音楽は十分ではありません。超然としていることは間違いでしょう。」

ポリーニの父は優れた建築家であり、構造をしっかり把握する彼の演奏をそこに結び付けようとする意見もある。だが、ポリーニはそれを強調することには反対だ。
「ベートーヴェンのソナタには、しばしば建築のようだと言われますが、それはベートーヴェンの作品にはとても強い構造があるからです。でも、その驚くべき建築の強さを実現するのに、人(演奏者)の助けは必要ありません。作曲家が(人に)望むのは、音楽のそれぞれの主題と内にある性質を理解することなのです。構造はもうそれ自体で強いのです。」

長いキャリアで、ポリーニのレパートリーはとても広い、が、コンクールで優勝して以来ショパンの作品に親しんで来た彼にとって、その魅力が色あせることはなかった。
「とても人気があるにも関わらす、ショパンは大きな謎です。ルービンシュタインは“誰もが彼を聞いて知っている”と言いましたし、それは本当です。でも彼の訴えかける内面的な要素は、とても謎に満ちています。ショパンは、秘かな思索の潜まぬ音楽は大嫌いだ、と言っています、しかし彼は内面的な要素を見せるのも、公表するのも、好まなかったのです。」

作曲家の意図を解読する(あるいはしようとする)ことは、演奏家としてポリーニを刺激するのみならず、彼の内面生活を形作るのにも役立つ。
「ショパンの『葬送ソナタ』の終楽章のことを考えます。作曲の時にショパンが何を考えていたかは我々には判らないけれど、演奏すればいつも、力が大きな衝撃と共に伝わってきます。私はこれらの作品と一緒に生きて演奏会で弾くのが好きですが、ただそれらを研究するだけでも、いつもそれらと関かわっているというのも好きなのです。」

器用なリズムのセンスはもとより、ダイナミクスを扱う驚くべき能力など彼のピアニストとしての特別の才能は勿論だが、ポリーニは音についてもよく考えている。
「きっと他の誰よりも、ショパンはこの楽器の音を良く認識して(センスを持って)いたでしょう。しかし彼にとって音の美しさは、彼に注意を払わせるために、聴衆をとりこにする手段でした。同じことが素晴らしく豊かな彼の旋律の想像力についても言えるでしょう。ショパンは、ベートーヴェンと同じように、聴衆の耳にとても強く留まるテーマを創り出す能力がありました。彼らはこれほど異なる作曲家でしたが、この素晴らしい性質を分かち持っていたのです。」

彼の演奏はその活力を持ち続けているし、これまで年齢によって譲歩したことはないと言う。
「私のレパートリーは変わりません。私は今まで弾いてきたどの作品も(弾くのを)やめません。そして新しい作品が付け加わることを望みます。」
ドイツの作曲家ラッヘンマンの作品の完成が遅れていると伝えられている。
「新しい音楽の最高の作品は、大きな内面的なフィーリングと力を持ち、表現力に満ちています。これは過去の偉大な音楽とそれらが分かち合う何かなのです。」

しかし年月が進むにつれ、別種の変化が齎される。
「一般に、私が弾いたすべての作品の解釈(演奏)は時とともに発展します。さもなければ、新たになるものもないでしょう。音楽作品を見るときはいつでも、小さな相違があります。異なる考えというよりは、人生がその相違を作るのです。時には異なる着想があります。それは突然生じるし、それは良いことです。でも、音楽への熱中は、概して、何が新たなものをもたらすか、なのです。」

DAVID MERMELSTEIN Journal on classical music and film″

今回の更新では、マドリッドの曲目、ベルリンの新日程、NYのアンコール曲を付け加えました。

2013年 5月20日 15:40

八重の桜
桜はすっかり散って葉桜となり、春の行事も一段落、新年度がスタートしました。八重桜の艶やかなピンク、つつじの燃えるような赤、それにハナミズキの柔らかな白が若い緑に明るい色をともして、春の歩みを伺わせます。でも、花冷えや春の嵐もあり、季節が行きつ戻りつしているようで、心から春爛漫を楽しめるのは、もう少し先でしょうか。

3月のベルリンで体調を崩されたマエストロでしたが、29日の演奏会にはお元気で登場され、素晴らしいベートーヴェンのソナタを披露。そして終演後はサイン会にも気さくに応じられたようです。早い快復で本当に良かった〜!

4月から5月はアメリカ・ツァー。昨年、一昨年には残念ながらキャンセルをされたマエストロでしたが、今年は無事に渡米されたようで、ホッとしました。ワシントンやニューヨークでの演奏会の予告記事も載って、いよいよ今日14日からスタートです。きっとアメリカのファンの方たちの熱い祈りが通じたのでしょうね。
今年はアメリカにおけるイタリア・イヤー、イタリアを代表する音楽家として、ピアニスト・ポリーニ、シカゴ響を率いる指揮者・ムーティさんが大きな目玉となっていますが、この二人の共演、夢の共演ともいうべき演奏会も行われます。ただ、当初のプログラムから変更があり、モーツァルトの協奏曲第21番が演奏されることとなりました。
ショパンとドビュッシーによるリサイタル、カーネギーホールで行われる2回目のリサイタルはベートーヴェン中期のソナタ。どれも聴き逃せない演奏会です。3年ぶりとなるアメリカでの演奏会を、ファンの方たちが存分にお楽しみになれますように。なによりマエストロがお元気で過ごされて、素晴らしい演奏をされますようにと、祈ってやみません。

今回の更新は、上記の変更とルツェルンの曲目、また来年の演奏会を幾つか付け加えました。
来シーズン、ウィーン楽友協会のArtist Residence″となるマエストロは、12月にアバドさんと協奏曲を2回、5月にはバレンボイムさんとも協奏曲で2回、6月のリサイタル1回で、Musikvereinの舞台になんと5回も登場される予定です。音楽の都ウィーン・・・聴きに行きたいですね〜。

2013年 4月14日 19:40

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