時々の雑記帳

音楽のこと、ポリーニのこと、日々の雑感を、
時々(気まぐれに)、書き入れます。

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このほかの日記帳はこちらを、すぐ前のものは「夏」7〜9月を、後のものは「冬」1〜3月をご覧ください。

(10月〜12月)

東京に雹?
晩秋の街を彩っていた銀杏。黄色の葉が舗道に積もり、風に舞うようになると、そして木々がむき出しの枝をさらす姿を見ると、いよいよ厳しい冬がやってきた、と思わされます。今年は天候不順で、気持ち良い秋日和は数えるほど。雨や風が激しい日もあり、早くから寒い日が続いていましたが、もう暫らく秋を楽しみたい、音楽も、美術も、行楽も・・・と、秋への未練(?)を抱いていました。でも、でも、気が付けばもう12月、師走の、それも早くも下旬ではありませんか! これからは今年の残りわずかな時間が、本当にア〜〜ッという間に、飛ぶように過ぎていくことでしょう。新しい年を迎える前に、ここでちょっとだけ更新をしておきましょう。

マエストロはこの秋、ローマ(延期となりましたが)、ミラノに続き、パリ、ミュンヘン、ルツェルンというヨーロッパの主要都市でのリサイタル、そして最後にボローニャとウィーンでの協奏曲の演奏会というスケジュールでした。今月5日に今年すべてのスケジュールを無事終えられて、今はのんびり冬休み(?)を楽しんでいられるのでしょうか。

パリでは、昨年から今年上旬にかけてPerspectives Pollini″として、現代音楽とベートーヴェンのソナタを組合わせての4回の公演が行われました。「それは素晴らしいシリーズだったが、今回はショパンとドビュッシーでポリーニの美しい音楽を堪能できる機会であり、パリのファンが待ち望んでいたものだった」というような評がありました。

ミュンヘンのリサイタルには、Janさんからアンコール(「革命」とバラード1番)の知らせと共に、レヴューを教えてくれましたが、時間と気力が不足してちゃんと読めずm(_ _;)m・・・ ストイックな演奏、だが平静な中に深淵を予感させるショパン、描写(彩色)ではなく、抽象のドビュッシー、といいうような言葉がありました。Janさんに拠れば「とてもポジティヴなレヴュー」だそうです。

ルツェルン・フェスティヴァルは、今年創立75周年を迎え、また祝祭管弦楽団、アカデミーも創設10周年という記念年でした。秋のピアノ・フェスティヴァルも2週間に亘って行われ、錚々たるピアニスト(キーシン、ポゴレリッチ(ソコロフの代役)、サイ、児玉桃、ペライヤなど)が出演したのですが、ポリーニはその最後を締めくくるリサイタルを行いました。ほぼ1年おきに出演しているマエストロですが、来年もまた出演し、今度はオープニング(11月22日)を飾る予定です。

さて、12月初旬のアバドと共演するモーツァルト管弦楽団との演奏会は、残念なことにアバドが病気のため降板し、ハイティンクを指揮者として行われました。ハイティンクは同管の秋のヨーロッパ・ツアーもアバドに代わって率いたgeneroso(心の広い)な老巨匠です。曲目はシューマンの交響曲「ライン」から、ベートーヴェンの「田園」に変更されましたが、前半はポリーニの弾く「皇帝」でした(わざわざ「ポリーニの出演は確約されている」と書いている記事もありました^^)。この管弦楽団の本拠地ボローニャでは、ポリーニの演奏に拍手喝采で、多くの花が舞台に降り注いだ、が、やはりアバドの不在に聴衆は寂しさを隠せなかったようだ、と、ある評にありました。

ウィーンでお聴きになった方からもメールをいただきました。

ハイティンクの持ち味かオーケストラの特色なのか、端正で落ち着いた柔らかな音の管弦楽に乗せて、深みがありながら重苦しくない、クリアで明るいピアノの音色が“戴冠したばかりの若々しい皇帝”を思わせる第1楽章、伸びやかに豊かに響く第2楽章、ピアノが力強さを増し飛翔力の高められた第3楽章、と、素晴らしい演奏だったそうです。若々しいとともに、“総てをし尽くした老皇帝のよう”でもあった、とのこと。 きっと深みのある、大らかな演奏だったのでしょう。
後半、落ち着きと品のある端正な「田園」の演奏が終わると、アバドの急場をしのいでくれたハイティンクに感謝と敬愛が堰を切ったかのように溢れ、オーケストラは弦をたたいて賞賛、聴衆からも拍手とブラボーの洪水となったとのこと。マエストロも前方の席で鑑賞され、最後のカーテンコールまで立って拍手を送っていらしたそうです。アバドへの思いはオーケストラの人々と同じ、いえそれ以上(倍・・・10倍?)のポリーニの気持ちだと思います。。。
マエストロ・アバドが一日も早く恢復されるよう、心から願っています。

更新として、スケジュール表にベルリンの曲目とロンドンの一部曲目、ルツェルンの曲目変更(あ、ポリーニの協奏曲は変わりませんが)、ルツェルン・ピアノ・フェスティバルの日程を付け加えました。

今年は、私の周りでは慌ただしく、また落ち着きなく時間が流れているようでした。高齢の母を見送った後の寂寥と一方で安堵感。その後は日々成長する孫たちとの楽しいけれど忙しい時間。♪疲れを知らない子供のように〜という歌がありましたが、こちらは体力・気力・知力の衰えを感じさせられる毎日でした。そして少し内に(家にも)籠り過ぎていたような気がする日々でした。音楽に触れる時が、ホッと安らいで自分に立ち返り元気をチャージできる時。インターネットを通じてポリーニの報に触れ得ることで、元気が湧いて外に目が向けられる私・・・。世界には、社会には、いろいろな問題が山のようにあるというのに。
新しい年は、新たな気持ちで迎えたいものです。残り少ない2013年の日々を、家だけでなく、気持ちの大掃除にも充てたいと思っています。

皆様、今年一年、更新もなかなかできないこのページでしたが、お訪ねいただき、またお声をお寄せいただきまして、本当にありがとうございました。
厳しい天候が続きますが、どうぞお元気で、良いお年をお迎えください。

2013年 12月23日 18:50

桜、楓、銀杏
我が家の窓から一本の大きな桜の木が見えます。紅葉が日に日に進み、赤や黄の葉が日に映えて、今とてもきれいです。たしか昨年は紅葉する前に落葉してしまったような気がしますが、異常な天候と思われた今年の夏〜秋を越えて、葉を美しく染めて冷たい空に温もりある色を点してくれることに感謝したくなります。紅葉狩りに遠出ができない私には、ささやかな秋景色”、目と心の保養になっています。
秋も深まり、今季一番の冷え込み、という言葉が毎日のように聞かれるようになりました。北の方からは積雪や吹雪の知らせ・・・秋から冬へ、季節の移ろいは思いのほか早いようです。
皆様も体調管理に気を付けてお過ごしください。

体調と言えば・・・。マエストロはしばし休養の時を経て、10月21日ローマでのリサイタルが今シーズンの始まりでした。が・・・残念なことに、インフルエンザのためキャンセルされ、1月に延期となりました(曲目もベートーヴェンからショパンとドビュッシーに変更されました)。
重いインフルエンザとは・・・と心配でしたが、6日後の27日にはお膝元ミラノでスカラ座の舞台に復帰されました。あ〜〜良かった! "Pollini Project"の1回目です、マエストロが居なくては始まりませんね。 ところが、こちらではブーレーズが病気のため降板し、ピンツァーが代わりに指揮をとりました。88歳の大御所ブーレーズさん、音楽界の前衛としていつまでもお元気で活躍していただきたいものです。彼の作曲したSur Incisesu'″という曲は、3台のピアノと3台のハープと3つのパーカッションのための曲だそうです。そのピアノ、1台はマエストロが弾いたのでしょうか・・・??
第1部のマエストロの演奏曲はベートーヴェンのソナタ第21番「ワルトシュタイン」、第22番、第23番「熱情」。これだけでも弾きでのある、聴き応えも十分な曲ですから・・・。どなたか公演の様子をご存知の方いらっしゃいましたら、お教えください。

次は11月14日のサレ・プレイエルでのリサイタルが予定されていますが、こちらもショパンの曲目に変更があり、前奏曲op.45、バラード第2番の次にソナタ第2番が演奏されることになりました。来年のアムステルダム、ロンドンも同じプログラムになっています。

先日はあるイタリアのサイトで面白い記事を見ました。Il Sipario Musicale"(音楽の緞帳)という音楽鑑賞ツアーを企画する会社のものです。
来年2月、マエストロの参加するアバド、モーツァルト管のオマーンへの音楽旅行を鑑賞する6日間のツアーです。ミラノからマスカットへは6時間ほどの飛行ですが、時差の関係で朝発って夕方到着。次の日は市内見物をして夜ロイヤル・オペラ・ハウスでモーツァルト管の演奏会(プログラムはまだ判りませんが、ベートーヴェンの協奏曲と思われます)。翌日からはオマーン国内の名所・旧跡・景勝地を訪ねまわり、砂漠でナイト・キャンプなども行って、5日目にマスカットに戻り、ヴェンゲーロフのリサイタルを鑑賞。翌日は昼過ぎに発って夜ミラノに戻る、という行程です。
マエストロ達も、演奏会のOffには、オマーン国内を観光したり、なさるのでしょうか・・・?
この旅行社は大小さまざまな個人・団体旅行を企画していますが、このツアーとロシアへのウィーンフィルのツアーを大きく取り扱っていました。イタリアの人達にもやはりユーロ圏外の旅は、気楽に旅立てないのかもしれませんね。ちなみに来年5月にはムーティとローマ歌劇場の日本公演を鑑賞するツアーも企画されています。

ローマの日程とプログラムを確認しようとそのサイトを見ると、ツィメルマンのリサイタルもキャンセルとなっていました。今秋来日の予定は・・・? と思っていたら、腰痛のため11月一杯は休養にあて、公演は12月に延期されたとの報に接しました。
長年演奏活動を続け、世界各地を飛び回るマエストロ達、一見華やかに見えるその活動も、時に過酷な日程もあり、大きなストレスにさらされたものなのでしょう。本当に、健康に気を付けて、いつまでも素晴らしい音楽を聴かせて頂きたいと、心から思います。

来年夏の音楽祭の情報も少し判りました。
ザルツブルク音楽祭には8月13日出演。ショパンとドビュッシー。
ルツェルン音楽祭では、8月22日、24日、25日にアバド&LFOと共演して、ブラームスの協奏曲第1番を演奏する予定です。

シューベルトの録音をすべて納めた3枚組のCDが発売されています。スケジュール表にも日程、プログラムの発表、変更など追加して更新といたします。

2013年 11月13日 15:00

香り初め
昨日、久しぶりに街を歩いてみると、フッと過ぎるあまい香り・・・。ああ、やっと金木犀の香りに会えたと、嬉しくなりました。かすかなかすかな香り初めでした。
我が家のベランダから、近くの建物の屋根に設けられたミニ庭園(?)が見えるのですが、そこに金木犀が植えられています。すでに黄色い小花をつけているのが見えるのですが、なぜか香りがちっとも漂ってこないのです。去年はふぅわりと優しい香りが漂い、その香りのもとを探して、そのミニ庭園に植えられていることが判ったのでしたが。風向きが悪いのかしら・・・。
ある方の話では、金木犀は9月末から10月初旬に花をつけ、“ある日突然一斉に”香りを放つのだそうです。小さな花がすっかり開いて、空いっぱいに芳香を放ち、風に乗って空気を染めて行くのですね。そのカラッとした風は夏の名残を消し去って、秋を感じさせてくれます。空を見上げて深呼吸したくなる清々しさ、明るく微笑みを交わしたいような優しい香り。そして強い風雨に会えば、また無数の小花が一斉に落ちて、黒い土を橙色に染める、その眺めにも秋の風情があります。短い間だけれど、はっきりと季節を感じさせる花なのですね。
今日はもっと“一斉に”空気中に芳香を放つに違いない、我が家の窓辺にも、どうぞ届きますように、と思いながらベランダに立つと、本当にはっきりと金木犀の香りが漂ってきました。曇り空がちょっと惜しいなぁ、青空が似会うのに、微風が流れる日が良いのに、と思いましたが、午後からは少し暑いほどの晴天となりました。

私としては本当に久しぶりの外出でした。夏の疲れからか先月半ばから体調を崩しがちで、ほとんど家に籠って過ごしていたのです。こんなことで秋を楽しめるかしら、音楽の秋なのに、美術の秋、食欲(これはあまり衰えなかったのですが)の秋だって・・・。でも、ありがたいことに、ポリーニの新譜が予定より早めに入荷して、9月の末に送られてきました。ワ〜〜〜〜イ! そしてマエストロのベートーヴェンに耳を傾けるうちに、体調も次第に良くなってきました。よし、10月は大丈夫! No music, No life.(レコード店の黄色いステッカー)

すでに輸入盤で新譜をお聴きになった方もいらっしゃるでしょう。掲示板にもご感想をいただきました(hiramasa様、ありがとうございます!)が、皆様はどんな風にお聴きになっているでしょうか。
私にとってこれらの曲は馴染みの薄い曲たち、でも、いつかどこかで耳にしたこともある曲、という感じでした。最初はリーフレットの英文を見ながら聴きましたが、途中で諦めて、素直に、素朴に耳を傾けることにしました。きっとベートーヴェンの創意、新たなものを創り出す工夫や、技法の巧みさが見え隠れする曲なのでしょう。そして音楽的な時代背景や、彼の人生ステージでの位置に着目しても、興味深い意味のある曲なのかもしれません。そういうことはまた追い追い勉強するとして、まず感じたことのみを書くと・・・。
ワ〜、ベートーヴェンだ! あぁ〜〜、ポリーニだ!   って、これでは感想とは言えませんねぇm(_ _;)m
ベートーヴェンの若々しさと勢いの感じられる曲、同時に優しい心と抒情性、またウィットの感じられる曲。
そして確かにポリーニの手から生まれた音楽。音の美しさ、技巧の確かさはもとより、デュナーミク、アゴーギクに、フレージング、タッチ、テンポ感に、まざまざと“ポリーニ”を感じさせられる演奏。
ベートーヴェンの若書きの曲を、そのフレッシュさ、盛り込んだ音楽的課題の大きさを、しっかり受け止めながら、現在のポリーニが応えた演奏。マエストロ・ポリーニの眼力、精神の深さで捉え、老練さを以って表現した、生気溢れる、人間味溢れる、若きベートーヴェンの作品の演奏。

ベートーヴェンの曲に感動しているのか、ポリーニの演奏に感動しているのか、判然としないままに、聴くほどに親しみを増して、魅せられていく、という感じです。そして、エネルギーをチャージされるような気がして、これからも頑張ろう!と思うのです。マエストロのベートーヴェンを聴けて良かった! 本当に嬉しい、ありがたいことです、ネ。

今回はディスクに新譜を付け加えて、ミニ更新です。(シューベルトの「冬の旅」はまだリリース前ですが、載せました。これも凄〜く楽しみな1枚ですね。)

2013年 10月7日 15:40

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