晩秋の街を彩っていた銀杏。黄色の葉が舗道に積もり、風に舞うようになると、そして木々がむき出しの枝をさらす姿を見ると、いよいよ厳しい冬がやってきた、と思わされます。今年は天候不順で、気持ち良い秋日和は数えるほど。雨や風が激しい日もあり、早くから寒い日が続いていましたが、もう暫らく秋を楽しみたい、音楽も、美術も、行楽も・・・と、秋への未練(?)を抱いていました。でも、でも、気が付けばもう12月、師走の、それも早くも下旬ではありませんか! これからは今年の残りわずかな時間が、本当にア〜〜ッという間に、飛ぶように過ぎていくことでしょう。新しい年を迎える前に、ここでちょっとだけ更新をしておきましょう。
マエストロはこの秋、ローマ(延期となりましたが)、ミラノに続き、パリ、ミュンヘン、ルツェルンというヨーロッパの主要都市でのリサイタル、そして最後にボローニャとウィーンでの協奏曲の演奏会というスケジュールでした。今月5日に今年すべてのスケジュールを無事終えられて、今はのんびり冬休み(?)を楽しんでいられるのでしょうか。
パリでは、昨年から今年上旬にかけてPerspectives Pollini″として、現代音楽とベートーヴェンのソナタを組合わせての4回の公演が行われました。「それは素晴らしいシリーズだったが、今回はショパンとドビュッシーでポリーニの美しい音楽を堪能できる機会であり、パリのファンが待ち望んでいたものだった」というような評がありました。
ミュンヘンのリサイタルには、Janさんからアンコール(「革命」とバラード1番)の知らせと共に、レヴューを教えてくれましたが、時間と気力が不足してちゃんと読めずm(_ _;)m・・・ ストイックな演奏、だが平静な中に深淵を予感させるショパン、描写(彩色)ではなく、抽象のドビュッシー、といいうような言葉がありました。Janさんに拠れば「とてもポジティヴなレヴュー」だそうです。
ルツェルン・フェスティヴァルは、今年創立75周年を迎え、また祝祭管弦楽団、アカデミーも創設10周年という記念年でした。秋のピアノ・フェスティヴァルも2週間に亘って行われ、錚々たるピアニスト(キーシン、ポゴレリッチ(ソコロフの代役)、サイ、児玉桃、ペライヤなど)が出演したのですが、ポリーニはその最後を締めくくるリサイタルを行いました。ほぼ1年おきに出演しているマエストロですが、来年もまた出演し、今度はオープニング(11月22日)を飾る予定です。
さて、12月初旬のアバドと共演するモーツァルト管弦楽団との演奏会は、残念なことにアバドが病気のため降板し、ハイティンクを指揮者として行われました。ハイティンクは同管の秋のヨーロッパ・ツアーもアバドに代わって率いたgeneroso(心の広い)な老巨匠です。曲目はシューマンの交響曲「ライン」から、ベートーヴェンの「田園」に変更されましたが、前半はポリーニの弾く「皇帝」でした(わざわざ「ポリーニの出演は確約されている」と書いている記事もありました^^)。この管弦楽団の本拠地ボローニャでは、ポリーニの演奏に拍手喝采で、多くの花が舞台に降り注いだ、が、やはりアバドの不在に聴衆は寂しさを隠せなかったようだ、と、ある評にありました。
ウィーンでお聴きになった方からもメールをいただきました。
ハイティンクの持ち味かオーケストラの特色なのか、端正で落ち着いた柔らかな音の管弦楽に乗せて、深みがありながら重苦しくない、クリアで明るいピアノの音色が“戴冠したばかりの若々しい皇帝”を思わせる第1楽章、伸びやかに豊かに響く第2楽章、ピアノが力強さを増し飛翔力の高められた第3楽章、と、素晴らしい演奏だったそうです。若々しいとともに、“総てをし尽くした老皇帝のよう”でもあった、とのこと。
きっと深みのある、大らかな演奏だったのでしょう。
後半、落ち着きと品のある端正な「田園」の演奏が終わると、アバドの急場をしのいでくれたハイティンクに感謝と敬愛が堰を切ったかのように溢れ、オーケストラは弦をたたいて賞賛、聴衆からも拍手とブラボーの洪水となったとのこと。マエストロも前方の席で鑑賞され、最後のカーテンコールまで立って拍手を送っていらしたそうです。アバドへの思いはオーケストラの人々と同じ、いえそれ以上(倍・・・10倍?)のポリーニの気持ちだと思います。。。
マエストロ・アバドが一日も早く恢復されるよう、心から願っています。
更新として、スケジュール表にベルリンの曲目とロンドンの一部曲目、ルツェルンの曲目変更(あ、ポリーニの協奏曲は変わりませんが)、ルツェルン・ピアノ・フェスティバルの日程を付け加えました。
今年は、私の周りでは慌ただしく、また落ち着きなく時間が流れているようでした。高齢の母を見送った後の寂寥と一方で安堵感。その後は日々成長する孫たちとの楽しいけれど忙しい時間。♪疲れを知らない子供のように〜という歌がありましたが、こちらは体力・気力・知力の衰えを感じさせられる毎日でした。そして少し内に(家にも)籠り過ぎていたような気がする日々でした。音楽に触れる時が、ホッと安らいで自分に立ち返り元気をチャージできる時。インターネットを通じてポリーニの報に触れ得ることで、元気が湧いて外に目が向けられる私・・・。世界には、社会には、いろいろな問題が山のようにあるというのに。
新しい年は、新たな気持ちで迎えたいものです。残り少ない2013年の日々を、家だけでなく、気持ちの大掃除にも充てたいと思っています。
皆様、今年一年、更新もなかなかできないこのページでしたが、お訪ねいただき、またお声をお寄せいただきまして、本当にありがとうございました。
厳しい天候が続きますが、どうぞお元気で、良いお年をお迎えください。