時々の雑記帳

音楽のこと、ポリーニのこと、日々の雑感を、
時々(気まぐれに)、書き入れます。

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このほかの日記帳はこちらを、すぐ前のものは「冬」1〜3月を、後のものは「夏」7〜9月をご覧ください。

(4月〜6月)

レインブーツで歩こう
雨の中、青や紫の花が街のそこかしこを彩っています。突風や強風、豪雨が続いたり、6月というのに台風が上陸したり、この春から初夏にかけては本当に天候不順で、なんだか、いつも心にまで雲がかかっているような日々でした。
梅雨となり、紫陽花が色を増してくるのを見ると、少し心が安らいできます。シトシト雨の涼しい日には紫陽花の咲く寺にでもお参りして来ようかしら・・・。
豪雨となることなく、落ち着きをもたらす慈雨でありますように、祈りながら。

シーズンも終わりに近づき、音楽界にもホッと一段落の空気が流れているでしょうか。
マエストロ・ポリーニは春先から病気静養が続き、私たちファンも皆とても心配で、寂しい思いがしましたね。
7月はいつも休養に充てられるマエストロですが、きっと夏の音楽祭に向けて、気持ちを新たに、体調を整えていられることでしょう。
演奏スケジュールの見直し、公演内容の変更など、Webで見られるいくつかの情報からも、慎重に活動を進めて行こうとされている様子が判ります。

シエナの演奏会は8月3日の1回のみとなり、曲はベートーヴェンの最後期のソナタ3曲です。
ルツェルン音楽祭、Pollini Perspectives 3では、曲目が変更となり、ベートーヴェンのソナタ第4番と第8番「悲愴」となります。
ザルツブルク音楽祭は予定どおり、ベートーヴェンの最後のソナタ3曲を演奏します。
ルツェルンのPollini Perspectives 4では、前にゲストブックでもお知らせしたように、シャリーノ作品のピアノは子息のダニエーレ・ポリーニが担当し、マエストロはベートーヴェンの最後のソナタ3曲を演奏します。
シエナの2回の演奏会で、またルツェルンのPollini Perspectives 3でも予定されていたのは、ベートーヴェンのソナタ第28番と29番「ハンマークラヴィーア」でした。強靭な精神力と大きな体力を要するこの難曲(特に29番!)は、現在のマエストロの体調には、負担が大き過ぎるのかもしれませんね。
それでもご自身のPerspectiveを、キチンと成し遂げようとされるマエストロ。
おそらく秋の日本公演でも、見直し・変更をもって臨まれるものと思われます。

つい先日、名古屋公演の中止が発表されたことを、お知らせいただきました(K様、N様、ありがとうございました)。
主催の中京テレビ、名古屋クラシックフェスティバルのページには、次のように中止の理由が書かれています。

「現在、ポリーニは健康上の理由で演奏活動 を制限し、3月より世界各地での公演を全て中止しております。また、主治医ととも に慎重に自身の演奏活動スケジュールを検討しておりましたが、先ごろ本人より、今秋の来日公演では、東京で行われる自身のライフワークである「ポリーニ・パースペクティヴ」の実現に集中し、それ以外の公演を自粛したい旨の意向が伝えられました。中京テレビ事業と致しまして は、公演実現に向け最大限の努力を続けて参りましたが、非常に残念ながら今回の名古屋公演は断念せざるを得ないという結論に至りました。」

23年ぶりの名古屋公演。楽しみにしていた音楽ファンも多かったことでしょう、本当に残念なことです。
でも、マエストロは東京へおいでになると判り、ホッとし、(中京地区の方々には悪いけれど)嬉しくなりました。大切な「ポリーニ・パースペクティヴ」を日本で開催して下さることに、改めて感謝したいです。そしてその実現に向けて、大きな力を傾けていられることに、感激しています。
お待ちしています、マエストロ! でも、決して無理をなさらないで! という気持ちを、伝えたいものですね。

「音楽の友」7月号には、[特集T「音楽の友」いち押し日本人ピアニスト、"私のこだわり作曲家"]があります。61人もの多士済々な日本のピアニストに取材した記事ですが、巻頭言ではピアニストのレパートリーにかける思い、音楽に向き合う姿勢を、ポリーニ、エマール、ツィメルマンを例に、真嶋雄大氏が記されています。中にポリーニの現代音楽への熱い思いを述べた部分がありますが、実はこのサイトの「ポリーニは語る(5)」の、ルツェルンでのインタビューを参照されたとのこと。真嶋さんからメールを頂き、驚きましたが、ポリーニの言葉が誌上に載って広く伝わるのなら、嬉しいことと思いました。と同時にこのインタビューをコンテンツにした時、S様やH様のご尽力を頂いたことを思い、多くの方に支えられ、また見ていただいているのだと、改めて感謝の思いで一杯になりました。

今回は、上に書いた変更点や、今後の日程のいくつかを追加して、スケジュール表の更新をしました。

2012年 6月25日 13:15

空のかなたに
金環日食、ご覧になりましたか? 私は見ました! 今後もう一生見ることはないだろうと、楽しみにしていたのです。宇宙の有り様、天体の運動は、物理の法則に則った合理的で必然的なものなのでしょうが、時に世にも稀な美しい姿を表し、広大な空間と永遠の時間の中で、人間がそれを目にできるのは全くの偶然。“神の摂理”とも思えます。東京は曇りがちと言われていたけれど、偶然にもちょうどその時は雲が切れて、意外としっかり金の輪(いえ、もちろんオレンジ色の輪でした)が見えて、嬉しかったです。
一転して翌日22日は冷たい雨、東京スカイツリー開業の日なのに。折角のイベントも視界不良では残念でしたね。
この5月は本当に天候不順で、雨・風・雷それに雹、寒暖の変動も大きく、何となく落ち着かない日々のうちに、もう下旬となってしまいました。今日は夏のような陽ざしに、ヤマボウシの白い花が空を向いて笑っているようです。梅雨を迎えるまでもう少し、しばらくは初夏の爽やかさと太陽の恵みを楽しみたいものです。

ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウ氏の訃報(18日)には、ああ、巨星墜つ・・・との感がありました。私が音楽に親しみはじめた頃、シューベルトやシューマンのリートの世界に惹かれたのは、この人の名演に触れた(LPでしたが)からこそ、でした。大学で外国語を選択する時、ある友人は「オペラが判るようになるといいな」とイタリア語を選びましたが、私は「ドイツ・リートの方が好き」とドイツ語を取ったのです(あの時イタリア語を選んでいれば・・・と、今は思いますが (^^;)。
20世紀後半からの声楽(特にドイツ・リート)への氏の功績は余りに大きく、時代を画した人と言っても過言ではないでしょう。知的な解釈で内面を掘り下げた表現、柔らかさとともに重厚さもある美声で、深みある心情を繊細に表しつつ、情緒に流されない凛とした歌唱。主にドイツ・オペラとリート、また宗教曲の分野で活躍したので、オペラ歌手的な“華やかさ”はないけれど、誰もが認める実力で声楽界に揺るぎない位置を占め、影響を与え、尊敬を集めていました。演奏活動からはすでに退いて久しかったけれど、その後は指揮やマスタークラスに活躍の場を移し、優れた若手の歌手を世に送り出した功績もあります。一つの時代が過ぎ去ったような、寂しさを覚えます。

マエストロ・ポリーニは1978年にザルツブルク音楽祭で、シューベルト「冬の旅」を共演しています。歌はもちろん素晴らしく、心情を込めて、時に雄弁に弾かれたピアノも美しい名演と思われますが、残念なことに正規盤では残されていません。「素晴らしい格別な経験でした」と懐かしそうに語っているマエストロ、きっと深い感慨をもって訃報に接したことでしょう。
私も感謝の気持ちとともに、ご冥福をお祈りしようと思います。

今回はほんの少〜しの更新です。12月ベルリンでは12日〜15日の4日間、ティーレマンとの共演でブラームスのピアノ協奏曲第1番を演奏します。またロイヤル・フィルハーモニック・ソサエティ賞の受賞を「ポリーニの栄誉」に入れました。

2012年 5月24日 21:45

春の憂い 春の喜び
桜が咲くと、春・春・春・・・と気分も浮き立ちます。今年は少しおそく来た春、おかげで春先の花々、梅や桃、木蓮や辛夷も、桜と一緒に楽しむことができました。花吹雪もなかなか良いものだけれど、今年の春の嵐の激しさは、本当に恐ろしいほど。風雨に耐えていた花々に感謝!でした。
今はようやく気候も落ち着いて、初々しいほど若い緑が目に優しく映ります。明るさとともに安らぎを与えてくれる木々の緑、気持ちを切り替えて、歩み出そうよ、と語りかけるようです。

先月の更新後に、ベルリンの"Perspectives Pollini"がキャンセルになったことは、ゲストブックでお知らせしました。ご自分の企画になる演奏会を中止するのは、とても辛いことだったでしょう。
その後間もなく、今度はアメリカ・ツアーのキャンセルの報が届きました。昨年に続いてのアメリカ公演の中止。多くのファンが待ちに待っているリサイタル、デュトワ&フィラデルフィア管との共演・・・マエストロはどんなに残念に思っていられるかと、胸がつぶれる思いでした。マエストロの病状が、気懸かりでした。
ずっと世界を舞台にしてきたマエストロでも、やはり長い演奏旅行の体力・精神力への負担は、言葉にならないほどなのでしょう。体調不良ならツアーの取り止めは当然のこと、今はゆっくり、しっかり養生して、一日も早く恢復されますようにと、祈るばかりでした。

そしてこの数日、いくつか新しいニュースを目にして、やっと明るい気持ちになったところです。

一つは、シエナの夏の音楽祭の告示。毎年参加する音楽祭ですが、今年は2回のリサイタル(8月3日、7日)。ベートーヴェンの後期5曲のソナタを演奏するとのことでした(が、その後、二晩とも第31番、32番を演奏すると変更された様です、とのお知らせがありました)。

名古屋公演(10月28日)のあることが判ったのも、嬉しいニュースでした。
Perspectiveの1回目と2回目の間が随分空いているけど・・・と気になって、横浜?大阪?それとも・・・?と思っていたのですが、名古屋とは! 1989年以来23年ぶりだそうです。名古屋なら移動距離も長くないし・・・。第30回を迎える名古屋クラシックフェスティバル、毎年秋に行われる歴史ある音楽祭のようですが、春の来日が多かったポリーニは初登場。曲目は「告別」や「熱情」を含むベートーヴェンのソナタ5曲、きっと素晴らしい演奏会になることでしょう。

イギリスのロイヤル・フィルハーモニック・ソサエティ主催の音楽賞に、ポリーニがノミネートされました。器楽部門で、他にアムラン、テツラフの名も挙がっています。また指揮者部門ではアバドさんがノミネートされています。5月8日に発表になるようですが、授賞式に出席されるほど、体調を恢復されると良いですね。

来年の公演も新たに一つ判りました。パリでPerspectivesの後半2回です。また協奏曲などの曲目変更もあります。更新したスケジュール表をご覧ください。
いろいろ情報をお知らせくださった皆様、ありがとうございました。

2012年 4月19日 14:35

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