時々の雑記帳

音楽のこと、ポリーニのこと、日々の雑感を、
時々(気まぐれに)、書き入れます。

更新状況もここに載せます。
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このほかの日記帳はこちらを、すぐ前のものは「冬」1〜3月を、後のものは「夏」7〜9月をご覧ください。

(4月〜6月)

梅の実は円やかに
紫陽花が色づきはじめ、木々の緑が濃さを増してきました。昨夜の雨に洗われて、葉が生き生きとかがやいています。今朝は近所の公園一周ウォーキングをしましたが、緑濃い梅林に、かがんで実を拾う人たちがいました。葉陰には丸い実が見え隠れして、なるほど、梅雨は“梅仕事”の季節だったっけ・・・と思いました。
梅雨の晴れ間は嬉しいけれど、夏めいた陽射しを浴びると、来るべき真夏を思わされてコワイような気もします・・・。でも、節電に努めて、自然の力を生かして、しのがなくては! 今年は全国的に早い梅雨の訪れでしたが、東北地方はまだ入梅前とのこと。彼の地には穏やかな雨、慈雨といえるような雨が降り注ぐ梅雨であって欲しいと、願わずにはいられません。

マエストロ・ポリーニは5月のベルリンで「復帰」、以来お元気で活動を続けていらっしゃるようです。
ドイツのJanさんから(ベルリンでの)「協奏曲は素晴らしい演奏でした。リサイタルも良かったよ! アンコールはノクターンop.27-2、“革命”、バラード1番でした」とのメールが来ました。
ロンドンのリサイタルも、2紙に★4つ、1紙は★3つの評でしたが、圧倒的な輝かしいシュトックハウゼン、熱いシューマン、冷静で知的な、でも詩情豊かなショパン・・・やっぱりポリーニ!という演奏だったようです。アンコールは(判っているのは)ノクターンop.27-2、“革命”。
つい先日のウィーンの評も出ていました。「ポリーニは新しいショパン弾きの巨匠であることを証 明した、そして妥協のないシューベルトを提示した」という(ような)タイトルで、アンコールは「ノクターン、革命のエチュード、バラード1番」(・・・最初と最後しか読ま(め)ない私(^^);)

さて、モーツァルトのピアノ協奏曲第17番、皆様もうお聴きになったことと思います。ライブは真夜中なのでパスして、アルヒーヴ入りを待ちかねていた私でしたが、何やらザワザワと気の落ち着かない日々、パソコンの調子も不安定・・・で、やっと落ち着いて聴くことができたのは、何日も過ぎてからでした。
透明感のある美しいピアノの音に「ああ、マエストロのピアノ!」と嬉しさがこみ上げてきました。アバドの指揮の下に一つになったベルリンフィル、ことに管楽器たちとの心の通ったやりとり、軽やかなリズムに乗って生き生きと流れる快いメロディー。第2楽章はオペラのアリアのよう、深い悲哀に心が打たれます。そして無邪気とも言える明るい喜びに満ちたテーマが、次第に大きさを増し、輝かしい大団円に至る、ドラマティックなフィナーレを、息を詰めるようにして聴き(見)入りました。聴き終わっての幸福感、満足感。素晴らしい演奏でしたね。ベルリンフィルの引き締まった音、力の秘められたアンサンブルと共に演奏されて、この曲が一回り大きな曲、より深みある曲のように感じられました。
そして今はまた、マエストロご自身がウィーンフィルを弾き振りしたCDを聴いていますが、こちらもやはりステキな演奏ですね。暖かみあるインティメートな協奏で、いつもユーモアを忘れないモーツァルトの微笑みが、目に浮かぶようです。繰り返し聴いて、飽きることのない音楽です。

そうそう、私のウォーキングする公園にはムクドリが沢山いて、草むらを歩いては黄色い嘴で何やら啄ばんでいます。モーツァルトが飼っていて、その鳴き声から第3楽章のテーマが生れたというムクドリ・・・。でも、この辺のムクドリ君たちは可愛い声を全然聞かせてくれません。やっぱりモーツァルト家に飼われると、才能(?)が目覚めるのかしら。。。

来(来々も)シーズンの日程が幾つか判りましたので、スケジュール表に追加しました。

2011年 6月9日 10:30

爽やかな音で
Golden Week・・・輝かしく明るく楽しいはずの初夏の日々も、今年はくすみがち。silver、いえbronze色の一週間でした。降ったり晴れたり曇ったりの天候も、美しい季節を輝かせてはくれず、私も小旅行先で雨と強風にたたられましたが、最後の1日だけやっと晴天になって北国の春を楽しむことができました。でも休めるだけでも、平凡な日常をちょっと離れることができるだけでも、有り難いことです、被災地の、先が見えずいつまでも続く、過酷な日常を思えば・・・。
そして東京ではもう溢れるほどの緑。若い緑から夏へ向う緑へ、濃い緑へと移りゆく旺盛な生命力に驚かされます。目に青葉・・・少しリフレッシュして気分も新たに、まずは更新を・・・と思いつつ、なかなか捗らないのは、お土産にもらった(?)風邪のせいかしら。

マエストロのこの3〜4月の健康が気がかりでした。アメリカ・ツァーを断念されたけれど、4月末のロンドンではお元気に復帰を、と願っていたのですが・・・。
やはり体調がすぐれず、シーズンの最終に近い日6月28日に延期されました。もっともこの日「4月29日」は“ロイヤル・ウェディング”でした。街中、いや国中が興奮に湧き立っていたでしょうから、ロンドンでも落ち着かない状態で過ごされたかもしれません。

医者は2〜3週間の静養を勧めたそうですが、5月のベルリン公演は? と、これも気がかりでした。
ベルリンフィルのサイトには予定通りの公演日程と、デジタル・コンサートホールの予告が載っています。
きっと、大丈夫、元気を快復され、アバドさんとの共演を楽しみになさっていることでしょう。もうベルリン入りして、リハーサルに臨んでいられるかもしれませんね。
美しい季節に相応しい美しい音楽、モーツァルトの協奏曲が、爽やかで涼やかな、光あるピアノの音色が、演奏者にも聴衆にも幸せを齎してくれますように! 世界中で聴くことができるデジタル・コンサートホールに、感謝!

“Beijing's best classical concerts awarded”
中国の音楽評論サイト“Musical China”から、ポリーニの北京でのリサイタルがベスト・リサイタル賞に選ばれました。2010年に北京で行なわれた379の演奏会の中から、18のジャンル別に選考されたものです。中国人のリサイタル賞としてチェン・サが選ばれているので、マエストロは海外からの演奏家として、かも知れません。
北京のホールのピアノがお気に入りで、中国公演に意欲的なマエストロ、この受賞をとても嬉しく思っていられるでしょう。おめでとうございます!

来シーズンのいくつかの演奏会のプログラムが判り(Thank you Jan!  Thank you Joachim!)、新たな日程も入ってきました。
来年70歳を迎えるポリーニを祝って、ミラノやローマでは特別演奏会が催されます。
Perspectives Polliniはパリに続きベルリンでも行なわれます。
2012年のスケジュール表を作りましたので、どうぞご覧ください。

2011年 5月11日 20:30

彼の地へ春を
白い花が目につく春のはじめでした。白い椿、白い沈丁花、純白のユキヤナギ、白木蓮・・・いつも春を迎える賛歌のように空に向う花は、祈りをこめて天を仰ぐかに見えました。
ここ数日の陽射しを受けて、いつになく堅い枝先だった桜も色づきはじめ、蕾がふくらんで、今日は二分咲き、三分咲き。淡い桜色が霞のように空を蔽うのも、間もなくでしょう。ようやく東京にも春がやってきたようです。明るい気持ちになり、前向きな心が生れる季節、春。自然の優しさ、美しさを目の当たりに出来る季節、春。でも、今年は・・・。

毎朝の新聞で、被災した方々の姿や言葉に涙ぐみ、TVの原発関連のニュースに憤り、不安感を増しつつ過ごしていますが、被災地から離れているほどに、後ろめたささえ感じさせられる“平穏”な日々は、かえって心を塞がれるようです。
早く被災の地に春の日が射すように、悲しみの中に居る人に暖かさが届くように、やっと残った木々が芽吹き、花が咲くように・・・東北の遅い、けれどとても美しい春が、希望をもたらすように、祈らずにはいられません。

自然、大自然という、その前には本当に小さな人間という存在です。でも、今回の地震・津波は、大自然の根底をも覆すもの。自然すらも地球の巨大なエネルギーの前には無力な存在だったと思い知らされます。
「国破山河在 城春草木深」と謳う詩(杜甫『春望』)があるけれど、今の東北地方では昔のままにあるはずの自然、山河は破壊され、春の草木も根こそぎ失われてしまったのです。“国破れて=戦火で滅茶苦茶になって”ではないことだけが、まだしも救いなのでしょうか・・・。
実際、この未曾有の国難を前にしてはいかにも微力な政府ですが、幸いにして平和な国家ではあり、世界中から支援の手を差し延べてもらえる日本です。本当にありがたいことです。なんとか心を一つにして、力を合わせて、困難を乗り越えていかなくては・・・!

それにしても、“小さな人間”が扱うには巨大すぎる力「原子力」を、統御できる、安全である、と豪語した傲慢、不完全な装置でよしとした瞞着、危機意識の欠如にみる無能、現場の人、周囲の人の安全を軽視する非情・・・。何十年にも亘って政府と経済界が作り上げてきたものの実態が明らかになるにつれ憤りが湧きますが、その電力を享受してきた私達の生活を考えると、なんとも遣り切れない思いです。原発の地の人々に申し訳ない気持ちでいっぱいです。
せめて、土地の、空気の、海の汚染を最小限に食い止めて欲しい、地球全体、世界全体への被害をもたらさずにいて欲しいと、願うばかりです。

「音楽」からもしばらく遠ざかっていました。先日はシューベルトの遺作のソナタを聴きましたが、悲しみに満ちた、暗い色調のメロディーがずっと頭の中に繰り返し響いていました。「ああ、楽しい音楽なんて、あるのだろうか!?」と言ったシューベルト・・・。今は「平均律」を聴いています。“小さな人間”(大バッハですが)でも、こんな素晴らしい偉大な音楽を生み出すことが出来るのだ、と思いながら・・・。
音楽はやはり「力」になりますね。地震発生直後は多くの音楽会が取りやめになりましたが、近頃は「音楽の力で励まそう」という音楽家達の活動も立ち上げられてきました。また海外でも「日本の被災者のために」と祈りと慰めの音楽が演奏され、「日本の復興のために」と励ましを込めて音楽会が催されています。音楽の結ぶ絆、その力を信じたいですね。募金も行なわれているとのこと、ありがたいことです。

マエストロ・ポリーニはこの3月〜4月、アメリカ・ツアーのご予定でした。先月の日記帳でボストンとストラスモアの演奏会がキャンセルになったと記しましたが、その後のニューヨーク、プリンストン、シカゴの演奏会も残念なことにキャンセル、つまり今回のアメリカ・ツアーが取りやめになりました。インフルエンザということでしたが、肺炎をも併発されたようです。マエストロ・・・どうか、ゆっくりと療養し、一日も早く、すっかり快復されますように! 4月末のロンドンに、お元気で登場されますように! 心からお祈りしています。
カーネギーホールには1回目はジェレミー・デンクという若手ピアニストが代りに登場しました。2回目は当初マレー・ペライアが引き受けたものの辞退し、演奏会がキャンセルになりました。ペライアはシカゴのリサイタルも引き受けていたのですが、やはり自身の体調を考慮して辞退し、ジョナサン・ビスが代りに登場することになりました。ポリーニ・ファンには、本当に残念なこの春のアメリカ・ツアーでしたが、耳の肥えた熱心な聴衆を前に、若いピアニストが演奏を披露する、よいチャンスとなるのかもしれません。

クロチルドさんから、ロンドンの4月29日のプログラムが変更になったとのお知らせを頂きました。ドビュッシーの練習曲から前奏曲への変更、曲目をスケジュール表に載せました。そのメールには、ロンドンでもニューヨークでも多くの見知らぬ方から日本へのお見舞いの言葉を受けたとのこと。世界からの暖かい心、嬉しいですね。
ドイツのJanさんからも、お見舞いのメールをいただいています。
来シーズンの予定も大分判ってきたので、“2011-2012 Season”のページを作りました。

2011年 4月5日 20:15

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