二月は逃げ月とか。節分、立春を過ぎ、気がつけばもう三分の一月ほどが経過していました。暦の上では春といわれ、この数日は暖かめの気候に春の訪れを思いましたが、でも、“春は名のみーの風の寒さや〜♪”。北風の冷たさに、寒さはまだまだこれから・・・と、気を引き締めさせられます。
マエストロのプロジェクトは、先月末パリで、2日にはミラノで幕を開けました。
パリのプロジェクトは“Pollini Perspectives"と名付けられ、全9回(10回ではなく)のプログラムが、来シーズンに行われるものも含め、発表されました。“L'EXPRESS”には長いインタビューもあり(残念ながら全く読めません^^;)、注目されているプロジェクトであることがうかがえます。
25日の公演評(仏語)もありましたが、読めず(T_T)。ただ、ブーレーズも客席にいて、演奏後、共に賞賛を受けていたこと、アンコールが「沈める寺」だったことが判りました。
あるブログ(英語)にブーレーズのソナタについての考察があり、「ポリーニのこの曲の録音は私の人生を変えた。音楽は、ピアノは、その響きをこんなにも激越な、激烈なものにできるのかと、衝撃的な体験だった。今日のポリーニの演奏も、やはり同じように〈顎の外れるような〉驚愕を呼び覚ました・・・。」そして、「前半のベートーヴェンの“熱情ソナタ”も驚くべきものだったが、その終りの時よりも更に熱狂的な喝采を、ホール中が送っていた」というような記載がありました。
パリでの第1回は大成功だったようですね。
ミラノの演奏会の評は、イタリア語なのに少々読みにくい文章でした(近頃不勉強で、すみません^^;)。ザッと拾い読みしてみると・・・。
ピアノの前に座り、天を仰ぎながら弾き始めるポリーニ、幾度も演奏し、探求した曲から、純粋な音を再び見出そうとするかのように・・・とマエストロの演奏姿を描きながら、次いでポリーニは老けた、髪が少なく、白くなった・・・などと(失礼な!)書いています。
にも拘らず“テンペスト”は今まさに我々の目の前で生まれたようだった、と感嘆しています。いつものようにエネルギーに満ちて、力強い低音、素晴らしい歌。アルペッジョは水晶のように澄んで、色彩の祝祭。そして非常に明晰に、素晴らしい明澄さで(結局、ポリーニはちっとも老けちゃいないよ、と言いたいのかしら^^)。
“熱情”はまた堂々として力強い演奏だった。第二楽章の歌は最高の調和ある歌、ギリシャの神殿建築を思わせるような、調和の歌だった。崇高で、簡素で、反復を続けながらより豊かに、また対位法をつけてゆき、変奏は基本の核心を常により美しいものにしていった。
(前半については手放しの称賛ぶりです。けれども、後半については・・・。)
しかし、その後はブーレーズだった。この曲はポリーニの意思表明的な選択であり、美の博物館の優秀な管理人となることを拒否する彼の立ち位置を示すものだ。曲は60年まえに生れた時と同様に、響きとフォルムの探求であり、氷のように冷静な知的なしぐさであり、より熱い者たちからは咳払いを受けたりもしていた、つい数分前には息を殺しているばかりだったのだが。
ポリーニはこれまでずっと〈新しい〉音楽を保護することに邁進してきた。しかし(その曲も)年を経てきた今、当時それを擁護するのに勇気を要した時代と比べ、今ではそれは無用なように思われる。
20世紀に“少々固執した”偉大なマエストロのベートーヴェン1曲、あるいはショパン1曲の素晴らしい演奏を聴くために払う勘定は、一般的には滑り落ちて(減って?)いるのに、ポリーニ一人が気付かないふりをして、その友ピエールと一緒に世界中に「ミックス・パック」のプロジェクトを提案し続けている。Beethoven、Schumann、Bach、MendelssohnそしてChopin。その代わりに、Boulez、Stockhausen、Schonberg、Webern、BergそしてNono。イエスかノーかのジャンルだ。
だが、ともかくも、この夕べはこのソナタで終りではなかった。より馴染み深いフランス近代、ドビュッシーの2曲のアンコールがあった。こうして、とても心地良く(dolce)家路についたのだった。ポリーニはよく判っている、我々はそう信じている。
“まったくもう、髪の白いアバンギャルドなんてナンセンスだ”などと書いているこの評者は、ポリーニのプロジェクトには批判的な目を向けているようです。一評論家の見方はともかく、スカラ座を埋めた聴衆は、どのように受け取っていたのでしょうか。マエストロのお膝元ミラノのプロジェクト。成功を願ってやみません。
今回の更新は、パリのPerspectivesを付け加えました。「2009年のスケジュール」には今年の分だけですが、English版の Pollini's Schedule [2008-2009 Season] には2010年の分まで全9回を載せました。
昨年12月のチューリッヒのプログラム、その後の演奏会のアンコール曲も、付け加えてあります。