時々の雑記帳

音楽のこと、ポリーニのこと、日々の雑感を、
時々(気まぐれに)、書き入れます。

更新状況もここに載せます。
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このほかの日記帳はこちらを、すぐ前のものは「秋」10〜12月を、次のものは「春」4〜6月をご覧ください。

(1月〜3月)

Amadeus
道を曲がるとパッと目に飛び込んでくる白い花花花・・・青い空に咲く乳白色のハクモクレン。暖かな陽射しをカップのような花いっぱいに受けて、高らかに、伸びやかに春を称えているかのようです。けれど、大きな花弁がヒラリと舞い落ちはじめると、この花の儚さも思わされます。春のファンファーレは一斉に、華やかに、そして潔く終えるのでしょう。
次の主役は桜・・・もう蕾がふくらみ、枝先は紅色に霞んで、花開く時を待ち望んでいるようです。

ポリーニの新譜が発売されて2週間、皆様も2つの協奏曲を楽しんでいられることでしょう。私もマエストロの笑顔のジャケットを前に、朝な夕なにモーツァルトと共に、ポリーニと共に、という2週間でした。
協奏曲第12番の第1楽章が流れ始めた時、ホールの光景が、ポリーニの指揮する姿が、まぶたに浮かびました・・・第12番の極めて自然に流れる音楽の中に、ポリーニの繊細さ、緻密さが潜み、生き生きした軽やかさの中に演奏者達の幸福感が溢れていたこと。第24番では厳しい表情の真剣そのものの演奏に、ポリーニの熱い思いが込められ、悲しみは深く胸に迫り、激しい終楽章には演奏者達の全身全霊が込められたかのようだったこと・・・。

それにしても、ここに聴くポリーニのモーツァルトは、なんと純粋で美しく、気高く、愛情に満ちた音楽でしょう。
緩徐楽章の美しさは天上の音楽のよう、特に24番のラルゲットは、心の奥底から溢れる想いが、歌となって聴く人の心に染みとおり、熱い涙とともに昇華されていくような美しさです。モーツァルトの音楽の慰め、そしてポリーニの共感の深さ。豊かな音色のウィーンフィル、管楽器と交わされる親密な対話にも、ポリーニをはじめ演奏者達のモーツァルトへの想いが滲み出るかのよう。
至高の音楽、至純の響き、至福の時・・・。最後の聴衆の拍手で、あぁ、そう、ライブだったっけと、ホール中が一つの心になったかのように聴き入っていたこと、最上の音楽を聴いた幸福感と昂揚感が、黄金のホールに満ちていたことを思い出しました。
“Pollini continues his love affair with Mozart.”DGサイトにある言葉です。もっと「愛」は続く、もっと「愛」は深まる・・・そう信じています。

そんな風にモーツァルトに夢中になっているうちに、マエストロのスケジュールやプログラムがいろいろ明らかになってきました。早くお知らせしなくてはと思いつつ、遅くなってしまいましたm(_ _)m

DGの“On Tour”に6月のロシアでの演奏会が載っていました。詳細はまだ判りませんが、2003年以来の訪露です。
またここにはPrague Spring Festivalも載っていますが、そのサイトを見るとなぜかポリーニの出演は取消され、6月2日はR.Buchbinnderに変わっていました(スケジュール表から除きました)。
秋のシカゴ、来年のアムステルダムのリサイタル、パリではプロジェクトも行われます(これらは2007-2008 Seasonの最後に載せました)。

プログラムも発表されたものがあり、マドリッド、バルセロナのものを載せました。またルツェルンのプログラムには変更がありました。

残念なお知らせが一つ。Martaさんからのメールで、ミュンヘンの演奏会はマエストロの体調のためキャンセルとなったことを知りました。でも、すぐに快復されたようで、代わりの日程を交渉しているとのこと。きっとまたwell temper(good form)でBachを演奏されることでしょう。
彼女はブリュッセルのWell-tempered Clavierを聴いているのですが「素晴らしかったです。特に後半が。彼は1分ごとにますますgreatになっていきました!」そうです。

この他に、“ポリーニのプロジェクト”を更新しました。この1月のローマの分と、新たに2002年パリでの"L'invention du Sentiment:Autour de Maurizio Pollini(感情の創作:ポリーニの周りで)"を追加しました。これは、Cite de la Musiqueで行われた“L'invention du Sentiment”《ロマン主義の源》という副題の、4月〜6月にわたる音楽・絵画・文学の催しの一部で、ポリーニのプロジェクトなのか・・・判らなかったのですが、内容はまさにポリーニ・プロジェクト、また「2002年、パリ、東京でプロジェクトを行った」という記述があるので、遅ればせながら(マエストロ、すみませんでした)加えることにしました(カタカナでは判りにくいのでフランス語のままで)。
来年のパリのプロジェクトは第2回ということなのですね。ここでもBach:Well-tempered Clavierが予定されています。

2008年03月21日 0:45

春のBachはサラサラ行くよ
白、紅、薄紅色、梅は今が盛りと花咲き、枝に小鳥を遊ばせています。その囀りと微かな花の香りにつられて、木の下にしばし佇むのも、寒さが和らいでこそ。春一番が各地に被害をもたらし、その後また真冬の寒さに逆戻り、寒暖の交代が激しい日々だったけれど、ようやく春が一歩ずつ近づいているのを、感じられるようになりました。
いろいろ重大な事件・事故があった2月・・・。今年は1日おまけ(?)があったけれど、やっぱり逃げ月、気がつけばもう三月、お雛祭り。ああ、時の経つのは早いなぁ、と思いつつも、春が早く来るのは嬉しいもの。特にもうすぐ新譜に会えると思うと・・・。

2月中は、ブリュッセルでのリサイタルが1回だけのマエストロでした。Olivierさんからの便りでは「バッハの平均律クラヴィーア曲集第1巻を、マエストロは休憩を入れて2部に分けて演奏し、幾つかミスもあったけれど、とても良い演奏会でした。アンコールはありませんでした。」とのこと。久しぶりに取り組むバッハの偉大な作品、どんな演奏だったのか、気になりますが、ラジオやTVのための録音は無かったようです。
今日3日は再びブリュッセルで、今度はノーノを中心にした現代の作品。ポリーニの音楽世界の広さを思わせる2つのプログラムです。素晴らしい演奏会となりますように!
そして11日にはミュンヘンで再びバッハ。ヘルクレスザールでの演奏はどんなでしょうか。もしかしたら、いえ、きっと、レコーディングにも繋がっていく・・・と、夢想しています。いつの日か、きっと聴ける!と。

今回の更新はLINK集の整理でした。Url変更のサイト、もう無くなっていたサイトなどもあり、長いこと放ってしまっていたなぁ、と反省。また新たに加えたサイトもあります。
その作業の中で、幾つか面白い発見(?)がありました。

その1。Settembre MusicaのArchivioで、過去の演奏会のプログラムを見つけました。
1982年9月11日:モーツァルト「ピアノ協奏曲第22番K.482」ポリーニ指揮・ピアノ、ヨーロッパ室内管弦楽団
1985年9月21日:バッハ「平均律クラヴィーア曲集第1巻」
1990年10月19日:ウェーベルン「変奏曲」、ブーレーズ「第2ソナタ」、ベートーヴェン「ディアベッリ変奏曲」
(2001年、2005年はスケジュール表に載せています。)

その2。パリ管弦楽団のサイトのEcouterで、バルトークのピアノ協奏曲第1番(ブーレーズ指揮)が聴けます(2001年6月20・21日の演奏。以前ラジオClassic7で放送されたものです)。

http://www.orchestredeparis.com/index.php?option=com_content&task=category§ionid=6&id=22&Itemid=1

その3。RAIのRadio3 Suiteで“Ore20”という番組があります。

http://www.radio.rai.it/radio3/radio3_suite/elenco.cfm?Q_TIP_ID=797

2月18日から10回にわたり、カルロス・クライバー特集があり、ポリーニがインタヴューに応えています。放送時間は日本の夜中でしたが、後に聞ける様になっていました。
“Il sorriso della musica: un ritratto di Carlos Kleiber(音楽の微笑み:カルロス・クライバーの肖像)”というタイトルの約20分ほどの番組です。クライバーの姉Veronicaさんから始まり、共演した音楽家達、Flury(VPOのフルート)、Franzetti(スカラのコンマス)、リヒテル(唯一の協奏曲の共演者、生前の言葉)、Meli(Cagliariの音楽監督)、Freni(「オテロ」、「ボエーム」のソプラノ)、Postinghel(バイエルン放響のファゴット)が証言し、クライバーの音楽が流れます。ポリーニは友人代表ということで6回目(2月25日)に登場。

http://www.radio.rai.it/radio3/radio3_suite/view.cfm?Q_EV_ID=240718&Q_PROG_ID=68

Veronicaさんによれば「一緒にいる時は、2人ともまるで少年みたいだったわ」という仲の好さ。きっと親しい交際のエピソードなど聞けるかも、と思いきや、ポリーニはもっぱらカルロスの音楽、芸術について、「椿姫」を例に挙げて熱く語っています(のようです、ちゃんと聞き取れない私、悲しい^^;)。ポリーニらしい、と言うべきですね。声だけでも聞けて、嬉しい!と思う方(私みたいな。聞き取れる方は、勿論!)どうぞお聞きください。
解説文によれば、彼の倫理性、作曲家の書法への誠実さ、繊細な気配り、完璧主義、自己批評について語り、それは現代の音楽界に失われつつあるものであり、彼をもっとよく認識しなければならない、遺されたものを決して忘れてはいけない、と結んでいます。
(※「なお、10回めは指揮者アバドのインタヴューになるようです。」と書きましたが、間違いでした。すみません。アバドは既に1回目に登場、10回目は81年ミラノでのライヴ「ベートーヴェン:交響曲第7番」(少しですが)で締めくくられています。)

スペインの演奏会は、1つだけプログラムが判りました。久しぶりの「テンペスト」はsurprise! スケジュール表に追加しました。

2008年03月3日 09:35

梅見月
三寒四温という言葉があるけれど、近頃は(東京付近では、ですが)二寒二温という感じでしょうか、雪やみぞれが降って寒い日と、晴れの日が交互にやってきます。立春は過ぎたけれど、まだ春は足踏みをしているかのよう。でも、空気は冷たくても陽射しは明るさを増し、ガラス越しには温室にいるみたいな心地良さ。「光の春」を実感してなんだかウキウキしてきます。公園では紅梅や白梅がほぼ満開、近所の家には薄紅の梅も咲いています。如月はまた梅見月とも。光に誘われて、何処かに春を探しに出かけたくなる時季なのかもしれませんね。

さて、ローマのプロジェクトも無事、大成功裡に終ったようです。マエストロも高揚感・充実感とともに、ホ〜〜〜ッとしてミラノに帰られたことでしょう。最後の演奏会への評がまたItalia seraに載っていたので、簡単にご紹介します。

パッパーノとポリーニ。それぞれ個性的な二つの異なる音楽的パーソナリティだが、大きな芸術的連帯を生み出すことができた。演奏会の初めに聴衆に「ノタシオン」について短い説明を試みる外向的なパッパーノ、だが、慎み深いポリーニもまた同様な啓発的な目的に意欲を燃やしている。彼らが共有しているのは音楽する喜びであり、それは彼らの微笑みや、理解しあった視線から明らかだった。
協奏曲第2番の演奏では、パッパーノは、器楽的なラインの中に溢れんばかりの、情念に豊む、堂々たるブラームスを聴かせる。一方ポリーニの身振りは常に控え目で、古典的な磨きのかかった、洗練されたものだった。彼のブラームスは、微細な点にまで音のバランスが考え抜かれた作品なのである。アンダンテの中で、ソリストと指揮者は完全な調和を見出す。強い感情は、決して過度の悲壮感に落ち込むことはなく、ただ音楽の素材を完璧に統御することからのみ生み出されるのだった。終楽章では、ピアノとオーケストラの対話風なやり取りは美しさの極致であり、感銘を与え、輝かしい自然さをもって最後のコーダにまで流れを導くことができた。
いつまでも止まぬ喝采に応え、二人は最終楽章をもう一度演奏した。熱烈な聴衆の拍手、また同じくらい熱いナポリターノ大統領の称賛があった、危機的な政局の激務の中で、わずかな安らぎの時を見つけてホールに駆けつけたにちがいない。
この演奏会でPollini Prospettiveは終ったが、いつも熱心に聴く多くの聴衆(9回の演奏会に23,000人)が参加したことを思うと、確かにポジティブに評価されるだろう。我々の文化活動の中に、現代音楽もまた位置を占め得ることを、証しするものである。
1/30 Riccardo Cenci

これは26日の公演への評ですが、全ての日程の終った30日付けで掲載されています。
時代や様式で差別することなく多様な音楽を演奏し、現代の音楽にもより親しんで欲しいという、ポリーニの思いが、次第に聴衆に浸透し受け容れられていること、それをプラスに評価する記事を、嬉しく読みました。そして本当に大変な状況下にある大統領が臨席したこと、ひと時でも喜びの時を過ごされたことを、きっとポリーニもパッパーノもオケのメンバーも、とても嬉しく思ったことだろうと、華やかなホールの様子を思い浮かべています(某サイトでチラッと見ただけですが^^;)。

今回の更新は、新たに判ったスケジュールをUPし、アンコール曲等を付け加えました。その中に一つお断りしなければならないものがあります。18日のアンコールの第1曲について、Stefanoさんから「Prelude Nr.9ではなく、Etude Nr.11"pour les Arpeges composes"でしたよ」とメールを頂きました。あら・・・。さぁて、どちらだったのかしら・・・? サンタ・チェチーリアのサイトに問合わせているのですが、返事はまだ来ません。ただ、この場合、Etudeの方がポリーニらしい選曲かな・・・と思って、訂正することにしました。また新たな情報があれば、追加させていただきます。

2008年02月09日 00:35

ローマの光
「寒中お見舞い申し上げます。」
といっても立春まであと1週間ほど。今を乗り越えれば、春はもうすぐの“はず”、冬晴れに感謝しつつ暖房控えめに暮しています。北国の方は暖かくしていてくださいね〜。
先週は東京にも雪が降り、次第に薄っすらと白い景色が広がって行くのを見て、家族に「足元に気をつけて!」と言ったけれど、「雪の上の足跡」はできないだろうなぁと、真っ白な雪景色を思い描きながら、寒がりの私は家に閉じこもっていました。そんな日に見つけたのが“Italia sera”という新聞(?)のポリーニの演奏会の記事。丁度良いわ、と、1日掛けて読みました。遅くなりましたが、さっとご紹介しますと・・・。

ポリーニは現代最高のピアニストの一人であるが、その上に、同時代の音楽への冷静で偏見の無いアプローチをする基礎を聴衆に提供することに、力を注いできたという功績がある。
今回の“Pollini Prospettive”でも、良く知られたクラシック曲とあまり馴染みのない20世紀の作品を結びつけて、音楽言語の発展を理解しやすくする基本的な道筋を聴衆に示そうとした。このやり方で、関係者のみの専門的な演奏会となりがちな現代音楽の孤立化を防ぎ、我々の文化活動の生きた構造の中にそれを返すことができるのだ。
ドビュッシーの前奏曲集第1巻にポリーニが示した演奏のビジョンは、この点にすべて一貫性あるものだった。彼のドビュッシーは、前を見る、未来に亘って音楽の発展を見るドビュッシーだ。例えば「アナカプリの丘」という作品、そこでは地中海の雰囲気は精密な論理性ある音楽的思考によって変容させられる。或いは第7曲「雪の上の足跡」、そこでは夢想家の想起する雪に覆われた景色は、まるでパウル・クレーの画布の中のように、抽象的なものになる。ポリーニのビジョンはあまり印象主義的でなく、より思索的であり、常に、又どの点でも、非凡なテクニックに支えられていて、そのことが彼に音色の澄明さと音楽構造の明晰さを決して犠牲にしないことを可能にするのだ。
この後では、ウェーベルンの変奏曲op.27は論理的な結論と思われ、ついには、よくある様に多くの人が退出するのを見ることなく、それどころか聴衆は非常に注意深く、息を詰めて聴くのだった。
ブーレーズの第2ソナタは、驚くべき演奏だった。作曲家が古典的形式に最終的に立ち向かい、それを解体し、決定的に過去と決着を付けた、非常に複雑な作品である。演奏者の明晰さは楽譜の中にある展開の、対比の、関連の多重性に、透けて見えるほどの強い光を与えた。
まるで聴衆に、その注意力に感謝するかのように、ポリーニは4つのアンコールを弾いた(ドビュッシー、リスト、ショパン)、素晴らしい感銘を受けた。
1/22 Riccardo Cenci

マエストロのプロジェクトへの思いが聴衆に伝わった良い演奏会だったようですね。4つのアンコールって何かな?と思っているところへ、Martaさんからメールが届きました。
「2回の美しいリサイタルでした。18日には4つのアンコールで、ドビュッシーの前奏曲9番、リストの超然技巧練習曲第10番、ショパンのノクターン8番、スケルツォ3番でした。22日は、ハーゲン氏が病気で、ブラームスの5重奏曲はキャンセルとなり、代わりにポリーニが素晴らしい『クライスレリアーナ』を弾きました。マエストロはプロジェクトを大いに楽しんでおられます、でも、とてもハードです。」

「クライスレリアーナ」(いいなぁ)・・・22日に関しては「ポリーニとクランクフォーラムはシュトックハウゼンにオマージュを捧げた」という題名のみコリエレで見たのですが、プログラム変更など、大変だったのですね。
“超忙しい”というMartaさんは、ローマとドイツの自宅を行ったり来たりしているのかもしれません。また最後の演奏会の様子を知らせてくれることでしょう。
今日28日、そして明日29日で閉じるProspettive。マエストロ、どうぞお元気で! 頑張って!! 素晴らしい演奏会になりますように!!!

このアンコール情報などと、新たに判った日程(デンマーク!)を付け加えて、簡単な更新といたします。

2008年01月28日 13:25

ローマの輝き
ダイヤモンド・ダストの映像を見ました。キラキラと輝きながら漂う氷の粒。息を呑む美しさ・・・かもしれないけれど、冷たそう、寒そう。いつだったか誰かが、ポリーニの弾くトリルをダイヤモンド・ダストのよう、と書いていたけれど、マエストロのピアノは温もりのある音、輝きはダイヤモンドに負けないけれど。
−33.3℃の北海道はじめ、日本列島の各地で、数年ぶりの厳しい寒波に襲われているようです。 皆様はお元気でお過ごしでしょうか。

ローマのマエストロはお元気で活動中のよう、今日はチクルス真中の一度きりのリサイタルの日です。
前半に関して、Martaさんからメールを頂きました。
「ローマはとてもとても素晴らしかったです。お誕生日には、マエストロはとても好調で、アンコールにショパンのバラード1番を弾きました。8日には協奏曲の終楽章をリピート、大成功でした。ショパンとノーノの演奏会も良かったです。演奏者達は力を出し尽くしたようでした・・・」
調子も、ご機嫌も、とても良さそうなマエストロ(*^^*)v
今日のリサイタルも聴くというMartaさん、また感想を送ってくれるでしょう、楽しみです。

さて、1月5日にはCorriere della Seraにインタヴューをもとにした記事があったのですが、 購読者のみ閲覧可能で、ガッカリ。ところがArchiveに入ってから読めるようになりました。遅くなりましたが、サッとご紹介しましょう。

ポリーニ:もう指揮はしません、ピアノに力を傾けています。

「オーケストラの指揮からは手を引きました、モーツァルトのいくつかの協奏曲のCDは別として。でも、それらは当時の慣習では指揮者を想定していなかったものなのです。ピアノをおろそかにしたくはなかったので、(指揮に関して)確かなレベルに達するために必要とする時間を見つけられなかったのです。(もし続けていたとしたら)私のピアニストとしての能力を傷つけていたかもしれません。」
つまり1981年ペーザロ、ロッシーニ・フェスティヴァルでの「湖上の美人」の指揮の経験が、彼の素晴らしいキャリアにおける唯一のケースとなるのだろう。ポリーニはピアノに、彼の言葉、彼の命であるピアノに、全く心を奪われているのである。
「作曲しようと試みたことは未だありません。私が演奏する作品が、私のイマジネーションを完全に吸収しています。」
しかし、同時代の音楽、それはより伝統的な聴衆にとっては越えるのが難しいハードルなのだが、それを広めようとする彼の衰えぬ情熱はそのままである。そしてミラノの大ピアニストは、5年を経て、古典と現代の曲に“senza confini(境界無しに)”という彼のプロジェクトを携えてローマに戻ってきた。この後、それはパリに行くという。
オーディトリウムにおけるサンタ・チェチーリア主催“Pollini prospettive”は9回のチクルスで、今日(1月5日)から、マデルナ「Aura」とブラームスの協奏曲第1番をもって始まる。指揮はアントニオ・パッパーノ。
「一緒に演奏するのは初めてです。素晴らしい(指揮者だ)と知っていました。音楽的な個性(パーソナリティ)を見出しました。」
ポリーニによれば、音楽教育は20世紀から又過去の巨匠達からを、同時に始めた方が良いという。
「しばしば聞くことでそれを理解するようになるのです。時は熟しています。しかし音楽院のプログラムは時代遅れで、私の頃のままに留まっています。」
ブーレーズのソナタ第2番、1948年にベートーヴェンのハンマークラヴィーアに霊感を得て、わずか23歳で書かれた曲について語る時は、歴史の流れの中で解釈する。
「これは理解するのが難しい作品です。互いに離れた音と音の間に旋律的なつながりを創り出すという、新しい道を開いた一里塚なのです。そこではpause(休止)の重要なことを知るでしょう、それは音楽を中断するのではなく、ある音を別の音へと繋いでいるのです。マデルナの作品は晦渋ではなく、楽しくさえあります。」
ショパンとノーノ、これは大胆な並べ方だ。
「私はノーノと友人でした。でも私が彼の作品を高く評価するのは、我々の友情とは関わりがありません。一つには芸術の、また一つには慈愛(?beneficenza)のゆえです。イタリア・オペラから影響を受けたショパンと共通して、そこには素晴らしい魅力のある声楽的書法があります。」
より若い作曲家はどうですか?
「先立つ世代を聞くことは彼らを理解するために絶対に必要なことです。時に気付くのですが、私が好む人は40〜50歳以上だということです。LachenmannとかSciarrinoのように。Wolfgang Rihmは1952年生まれです。もっと若い人の中ではGerald Grisey、Brian Ferneyhough、Matthias Pintscherが好きです。」
新しい人たちは聴衆との対話を取り戻したいと望んでいます。
「彼らが伝えようとするものを理解することが必要です。聴衆は判ろうと努力すべきであり、作曲家は理解されるようにと月並みなものを書くべきではありません。」
ポリーニはまた厳格なマエストロであり、険しい山に登るような彼のチクルスは、このように鍵盤上の彼の両手の持つ力につながっているのだが、倫理的な意義を持っているように感じられる。
何か、残念に思っていることはありますか。
「ええ、私はラヴェルの音楽をなおざりにしてきました、ドビュッシーを優先させたのです。なんとかして取り返そうと思っています。」

(Cappelli Valerio)

寒いし風邪も流行っているようで、とかく家に籠もりがちな日々。今日はWebradioでポリーニの1976年演奏の“Appassionata”を聴きました。熱い熱い「熱情」でした〜。音質が良くないのでボリュームを抑えていたのですが、霧の向こうから響いてくるような音に、32年の遥かな時を思い、若きポリーニの姿を思い浮かべながら聴いていました。
このEuroclassic Notturnoという番組は東欧・北欧の国々(クロアチア、ブルガリア、ポーランドからノルウェー、スウェーデン、デンマーク、それに英国など計12ヶ国)の放送です。またどこかの放送局から珍しい音源が出てくるかも・・・と、つい期待してしまいますね(^^;)

2008年01月18日 15:35

ローマの新春
すっかり葉を落とした木々は、冬空に黒い幹から高い梢までクッキリと姿を現し、小鳥たちの枝に飛び交う姿もよく見えます。お洒落なネクタイのシジュウカラ、パッチリお目々のメジロ、波のように飛ぶヒヨドリ、ちょっと大きめのオナガ・・・茂った葉に隠れて姿の見えなかった小鳥達の、可愛いさえずりとその姿を一致させられるのも、楽しいことです。緑の季節には木陰の多い公園も、今は明るく広々とした空間になって、冬の柔らかな日射しに満ちています。
東京では穏やかな晴天で迎えたお正月、空気も澄み、静かな三が日を過ごしました。寒波に襲われた地方や雪の多い地域では大変なお正月だったかと思いますが、皆様もお元気で新しい年をお迎えのことと存じます。
明けましておめでとうございます。今年もマエストロ・ポリーニの音楽に親しみ、ご一緒に楽しんでいきたいと願っております。どうぞよろしくお願いいたします。

今日は1月5日。まず、ポリーニ・ファンのセレモニー(???)から始めたいと思います。
イタリアの空に向かって愛(*^^*)を叫ぶ、あ、今年はローマ方向ですよ!

Buon Compleanno! Tanti auguri!

マエストロ・ポリーニ、66歳のお誕生日、おめでとうございます!
今年も、ますますお元気で、ご活躍を!

いつもはゆっくりクリスマス〜新年〜お誕生日のお祝いを過ごされる(でしょう)マエストロは、今年はお誕生日の当日が仕事始め、それも1月一杯続くローマのプロジェットです。
昨年暮れドイツの新聞に載ったインタヴューを、Janさんが英訳して送って下さいました(Danke shoen, Jan! いずれご紹介したいと思っています)。最後に「クリスマスはどう過ごすのですか?」という質問に、マエストロはこう答えています。
「ピアノを弾いてます。多様な役割りのコンサート・プロジェクトのために、セッセと働かなくてはならないんですよ、ローマでパッパーノと行うのですがね。」

ああ、やっぱりネ、忙しい休日なのですね。でも、音楽が何よりお好きなマエストロ、きっと生き生きと充実した日々を送っていられるのでしょう。そして、聴衆の喝采がお誕生日のプレゼント、というのも良いですよね。羨ましいローマっ子の皆さん、大きな拍手と一杯の笑顔と、できたら沢山の花を降らせて、お祝いしてくださいね!

今回の更新は、ディスコグラフィにポリーニのCDの新盤を付け加えました。昨年発売のLP2点と、SHM-CD2点です。
後者についてはレコード芸術12月号「デジタルのEdge」"SHM-CD"とは?(麻倉怜士氏)という記事があり、SHM=Super High Material「液晶パネルにも採用されている透明性の高い特徴を持つポリカーボネイト」を基材に使ったCDなのだそうです。
管弦楽では「音にふくよかさが感じられるようになり、歪み感が減る。」「各楽器の分離もよく見えるようになる」。弦楽四重奏では「内声部が明確に、明晰に出てきた」「スコアがビジュアル的に見えると形容してもいいぐらいで・・・」。
そこに「ペトルーシュカ」についても試聴の文がありました。
通常CDに比べて「響きがやわらかく、しなやかになる。高域の打鍵のアタックが目に見えて鋭く、音の透明感が上がり、見晴らしもクリーンになる。音の情報量も多く、輪郭が力強く、明確に、はっきりとしてくるが、それは刺激的になったり硬くなったりするわけではない。」
聴きたくなりますねぇ。“お年玉”として買おうかな・・・。もう1点はショパンの「練習曲」です。どなたか、お聴きになった方いらっしゃいましたら、感想をお寄せください。
それから、ベートーヴェンの作品表を載せてみました。これはズ〜ッと以前にエクセルで作ったものなのですが、「あの作品はOp.○だっけ? ○長調だっけ?」と思うことがよくあるので、このサイトにも載せておけば、便利かな、と思ったもので。左上に置いておきますので、よろしければご利用ください。

2008年01月5日 16:05

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