時々の雑記帳

音楽のこと、ポリーニのこと、日々の雑感を、
時々(気まぐれに)、書き入れます。

更新状況もここに載せます。
Menuへ

このほかの日記帳はこちらを、すぐ前のものは「秋」10〜12月を、次のものは「春」4〜6月をご覧ください。

(1月〜3月)

春のフェスタが始まって
桜が咲くはずだったのに・・・とボヤいてみてもしょうがない。東京にも“初雪”がチラついて、冬に戻ってしまったようなこの数日。北国では大雪や雪崩の報道もあり、季節の変わり目は天候も体調も、気を許せないものと思い知りました。
膨らみかけた桜の枝先を眺めながら「♪春よ来い 早く来い♪」と待ち望む気持ちです。そう、こういう期待感もワルくはないですよね。

日本におけるイタリア2007・春(Primavera Italiana 2007, Italia in Giappone)」が今日から始まります。6月にかけて各地で300のイヴェントがあるというこの催し、イタリア旅行はムリとして、オペラ鑑賞もムリ?としても、せめて「ダ・ヴィンチ展」には行きたいと思っています。

本場イタリアでも、ローマで“Festa di Primavera 2007”が行われています。6月まで、800にも上るイヴェントのあるFesta、そのオープニングとなったローマでのポリーニの演奏会は、大成功だったようです。
大統領はじめ各界の要人が参加し、聴衆はポリーニに愛情の全てを捧げ、10分間のスタンディング・オヴェーション。
3つのアンコールで応えたマエストロ、終了後にはサイン会も。
また、主催者の意向で、目の不自由な若者達が招待されていたとのこと。

概要は判ったものの、マエストロの演奏はどんなだったのかしら?と記事を探したのですが 「皆ポリーニに熱狂」という評は有料で読めず、やっと見つけた評は「ロマンティシズムであってもセンティメンタリズムではない」というタイトル。
ザッとご紹介してみましょう。(3/16 Il Manifesto.Arrigo Quattrocchi)


おそらく他のアーティストは誰も、ローマの聴衆との間に、ポリーニほど深い共感(親愛の情simpatia)ある関係を育めはしないだろう。
ナポリターノ大統領夫妻も参加し、ローマ県の“春の祭り”の支援を受けた演奏会は、パルコ・デラ・ムジカの大ホール2740席が完売、ホール内の待ち望む雰囲気は手に触れられそうなほどだった。
ポリーニは、その期待を裏切ることは無かった。リラックスし、集中して、本当に魅惑的な夕べをもたらした。
ポリーニが手を鍵盤に置く時、その楽器を扱う能力に、やはり驚かされる。それは妙技、指のすばやい動きだけではなく、音のもつ力と共にその清らかさ、精密さ、異なる音域の内のバランス、どんな細部をも知覚させる透明さへの感嘆である。このインパクトの強さを再現するのは、レコードにはできない。

シューマンとショパンの作品を、ポリーニは何度ローマで演奏しただろう? 数え切れないほどだ、だが、これらロマン派の音楽家への彼の解釈は、魅力を失わない。それは感傷的ではなく革命的な、ロマン主義の考え方の中にあるのだ。

シューマンでは、稀にしか演奏されない「アレグロop.8」を演奏する。これはある種の構成主義が刻印された作品だ。
次に有名な「クライスレリアーナ」、ホフマンの短編集の人物にインスピレーションを得た8つのミニアチュール(細密画)である。これらは、そこに内包される感情的な爆発が強調されることが多いのだが、ポリーニが表すシューマンのイメージは、どちらかといえば前衛的な音楽家であり、コントラストに焦点を合わせ、夢想家の論理性を追求するものだ。

ショパンでも8つのミニアチュールだったが、大いに明瞭に演奏された。「夜想曲op.48」、「4つのマズルカop.33」、「スケルツォ第3番」それに「英雄ポロネーズ」である。
ポリーニのマズルカへのアプローチは珍しい。これにはなによりも音色の繊細さとリズムの複雑さを目立たせていた。
スケルツォは彼にとって、初めからずっと中心となる作品だった。構造主義者の論理をもって、極限状態にしながら豊かな表情の極みを表した。本当に忘れることのできない演奏だ。
英雄ポロネーズは、ある種のレトリックで磨き上げられたが、そのことで固有の叙述的な表現力が失われることはなかった。

選り抜きの演奏集の中になにかキズを見つけようとすれば、夜想曲op.48-1にごく僅か欠ける点があるといえようか、カンタービレの素っ気なさと、反復部での激情の不足から、少しだけ減点されると思われる。
ホールの聴衆の熱狂は3つのアンコールによって報われた。やはりショパンで。「夜想曲op.27-2」、柔らかく愛撫するように。「練習曲op.10-12(革命)」、強靭な指で立ち向かって。そして「バラード第1番」、本当に素晴らしい(bellissima)夕べの中で、おそらく最も熱い時だった。


ああ、本当に“素晴らしい夕べ”だったことでしょう! マエストロのアンコール曲・・・想像するだけで、ウットリですね(*^^*)

今回の更新は、パリのリサイタルのプログラム、このアンコール曲目、Disco d'oroの記録を加えました。

2007年03月19日 14:35

メジロ、シジュウカラ、ウグイス…?
春めいた空の下に乳白色の花が一斉に開くと、木蓮の木は一きわ鮮やかになって、その生命力溢れる姿は心を解き放してくれるようです。沈丁花は清々しい香りを放ち、赤い木瓜や黄色の水仙、紫の菫が土を彩り、もうすっかり春の景色。木々の芽もふくらんで、飛び交う小鳥の声も賑やかです。
真冬も早春もアッという間に通り越し、もう一週間もすれば桜が咲いて、春本番になるのでしょう。明るい春は嬉しいけれど・・・なんだか時の経つのが早過ぎるようで、ちょっぴり寂しい気もします。やっぱり春は、待ち侘びて、期待を込めて、迎えるものなのかもしれません。

イタリアでも早い春、街は黄色のミモザに彩られているでしょうか。マエストロのリサイタルも順調に進んで行くようです。
ジュネーブの演奏会は“most beutiful”、アンコールは「雨だれ」と「バラード第1番」だったと、お聴きになったMartaさんからの便り(熱心な彼女のこと、きっとミュンヘンでも聴いたのでしょう)。
いよいよ14日にはローマで。これはローマ県「2007年春のフェスタ」のオープニングを飾るリサイタルです。音楽・美術をはじめ様々なイヴェントがあるフェスタですが、今年の音楽の話題は「オスカー」。Ennio Morricone(今年度、キャリアへの特別賞)、Luis Bacalov(1995年度“Il Postino”で音楽賞)、Nicola Piovani(1999年度“La vita e' bella”で音楽賞)の曲が演奏されるそうです。
マエストロの受賞したグラミー賞も、いわば「音楽のオスカー」。シューマンとショパンの曲で、春のフェスタの華やかさを導くのに相応しいリサイタルになることでしょう。

さて、いくつか受賞のニュースがありましたが、もう一つ受賞のお知らせ。いえ、オールド(?)ニュースとも言うべきなのですが・・・。
オランダのレコード賞“Edison Award”のページを見ていたところ、1971年に、ポリーニの「ショパン・リサイタル」が、Instrument Solo部門で受賞していました。8年もの長い研鑽を終えて初の、EMIで録音したLPで、早くも受賞していたのですね。ポリーニの名声を一気に世界に広めたのは、DGからリリースしたあの“驚愕”の「ペトルーシュカ」と、あの“完璧”な「ショパン:24の練習曲」なのでしょうが、それに先立つ68年の録音も、ヨーロッパでは高い評価を受けていたのだと判り、嬉しくなりました。
先日日記帳に書いた“Die Zeit”はこの録音を音源にしています。デジタル・リマスタリングは2001年に為されています。

73年にリリースされたDG盤「ショパン:24の練習曲」も、また同じ“Edison Award”を受賞しています。このページでは「73年」の受賞ですが、DGサイトでは「74年」となっています。「年度」と「発表された年」の食い違いでしょうか。ともあれ、71年の「ショパン」に続いて、73年にも「ショパン」で受賞というのが、当時のポリーニの勢い、輝かしい実力のほどを物語っていますね。

今回は、この賞に関する追加と、ロンドンのプログラム、ジュネーヴのアンコール曲目を加えて、更新といたします。それから、ジュネーヴとローマのプログラムの中の、ショパンのマズルカop.33を「3つの」と書きましたが、「4つの」でした、訂正いたしますm(_ _)m。

2007年3月11日 14:45

日脚も伸びて
ベランダに出るとフッと花の香りが・・・庭のすみに水仙が一本咲いていました。三寒四温というけれど、今年は二寒五温って感じでしょうか。昨日は真冬の寒さだったのに、今日は春の陽気。淡い色合いの青空が広がり、白梅も紅梅も薄紅の梅も満開で、もう小さな花びらの散り敷く木もあります。木蓮の花芽も膨らんで薄い緑の光を帯びています。
早い春の訪れは、花粉の襲来も早まり、辛い時期を過ごす方もいらっしゃることを思うと、喜んでばかりはいられませんが、なんとなくウキウキする心は抑えられません。

マエストロは2月の公演を終えて、今はミラノでノンビリ過ごされているのでしょうか。
アムステルダムでの2回の“65th Birthday Recitals”は、主催者がすぐにアンコール曲をウェブに記してくれたので、その様子をうかがい知ることができました。4日のショパン・リサイタルは「雨だれ」とバラード第1番。18日はクラリネットのダミアンとの共演でしたが、東京のプロジェクトUと同様にベルクの作品をもう一度演奏しました。シュトックハウゼンのピアノ曲VIIIも、もう一度。リストの後は「沈める寺」と超絶技巧練習曲。とても聴き応えのあるリサイタルだったことでしょう。
チューリッヒでも好評だったようで、4つのアンコールの最後にリストの超絶技巧練習曲が演奏されると、マエストロもビックリするほど、聴衆が熱狂的な歓呼で称えていたそうです。

今回の更新では、やっと判明したジュネーブの曲目や、来シーズンの日程、それに前記のアンコール曲目をスケジュール表(2007年、2006-2007 Season)に付け加えました。
それにGrammy賞の受賞を「レコード賞」と「ディスコグラフィー3」に載せました。

また、このディスコグラフィー3に、“Maurizio Pollini Die Zeit Klassik-Edition”を載せました。これは以前ゲストブックでも話題になりましたが、ドイツ、ハンブルクに本拠を置く全国紙(週間新聞)“Die Zeit”が、EMIと共同で編集したCDです。
曲目は既出のものだし、体裁はCDというより立派な(小さいけれど)「本」なので、ディスコグラフィに載せるのはどうかな、とも思ったのですが、ご紹介したいと思って載せてみました。
写真も含む60ページほどの本です。まず、バイオグラフィ(ショパン・コンクールや若き日のことに詳しい)、ショパンとその作品の解説があり、次いで“Die Zeit”に掲載された記者や批評家の文が収められています。
@ショパン・リサイタルと60歳の誕生を記念するCDについて(2002年) Aバッハ演奏に言及しているインタヴュー(1987年) Bブーレーズの演奏について(1978年) Cショパン:ピアノ・ソナタのCDへの批評(1987年) Dブゾーニ・コンクールの頃のこと(1956年!!) E公演評(多分。1995年) Fベルリンにおけるベートーヴェン:32曲のソナタ演奏会について(1994年) Gモーツァルトについてのインタヴュー(2006年。これは「ポリーニは語る(6)」としてご紹介しています)、最後に1995年のエッセー風の短い文章が載っています。
内容は勿論全部ドイツ語で、勿論サッパリ判りません(汗、涙)。ゆっくり、じっくりでも読んでいけたら・・・いつの日にか、ご紹介したいと思っています。

一つだけ、冒頭に掲げられているマエストロの言葉をご紹介しましょう(ue、aeはウムラウト)。

《Es geht nie darum, dass der auf der Buehne den da unten gut unterhaelt. Musik funktioniert nur in einer gemeinsamen Kommunikation.》

『舞台の上の者がその下にいる人々を上手に楽しませる、ということでは決してないのです。音楽は相互(共同)のコミュニケーションの中でのみ、その力を発揮するのです。』

CDの内容はすべてEMI録音のものですが、音質は改良されているようです。クッキリした音で奏でられる瑞々しい詩情のノクターン、力に満ちた英雄ポロネーズなど、久しぶりに聴く若き日のポリーニのショパンは、やっぱり、とてもステキでした。

2007年2月21日 17:35

梅が好き
暖かさに誘われて近所の公園に散歩に行くと、紅梅をはさんで2本の白梅が咲いていました。周囲にはまだ蕾のままの木が多いのですが、くすんだ風景がそこだけ華やかになって、お年寄りや幼い子とママ達、また犬連れの人達が、樹の下で寛ぎ、冬の陽射しを楽しんでいました。写真を撮る人もいて、私も携帯を向けましたが、青い空のもとにクッキリした紅白の梅は美しく、飛び交う小鳥の姿も楽しげな光景でした。
今年は本当に暖冬で、東京にまだ降雪が無いのはともかく、一月中新潟に積雪が無かった、なんて聞くと、地球はどうなっちゃったんだ〜?と不安にもなりますね、温暖化防止に努めなくては。2月はもう少し寒くなっても「可」としよう、なんて思いながら、今日もお散歩に出かける私。これは正月以来の体調管理(肥満化防止)に迫られてのことですが、やっぱり暖かい冬だからこそできること・・・しっかり成果を上げなくてはッ!

ヨーロッパでも暖かい冬のようですが、2月のマエストロはイタリアよりもっと寒そうな国での演奏会。毎年、新年から春にかけては、ヨーロッパで北へ南へと活動されるマエストロ。お元気で、お風邪をひかれませんように!と願うばかりです。
それにしても、先日のTVに出演されたマエストロの姿を見られたのは嬉しいことでした(見られた、としか書けないのが残念! 内容が判れば・・・^^;)。イタリアでもポリーニが"Che Tempo Che Fa"(どういう意味か不明)という番組に出演したのは驚きをもって見られ、その熱心な語り方に感心した人も多いようでした。
近頃はインタヴューにも積極的に応じ、どんな時も誠実に、熱心に語るポリーニ。今回はWeb上のあるサイトで、そんなインタヴューを見つけたので、ご紹介します。
“MATEMATICA(数学)”というページで、数学の先生が話を聞いているもの。物理・数学や、その音楽との関係などに触れられていて、ちょっと珍しい、興味深いものです。いつ、何処で行われたのか不明ですが、多分昨年イタリア国内でのことと思います。(また、聞き手が"La Repubblica"に寄稿している人なので、もしかしたら、そこに載ったものなのかもしれません。)

それから、DGの"What's Coming"に“Grand Prix Series”のバルトーク:ピアノ協奏曲第1・2番が載っています。これって、Gramophone Awardだけでなく、他に4つも受賞していたのですね! レコード賞のページに追記しました。
また、2007−2008年シーズンもそろそろ発表になりはじめ、10月のロンドンで、ロイヤル・フェスティヴァル・ホール改修後の演奏会にポリーニが出演します。ちょっと先のことですがスケジュール表に書き入れました。

2007年2月2日 17:30

真っ直ぐに、ゆっくりと
明けましておめでとうございます。
楽しいお正月を過ごし、そろそろ仕事初めの方も多いことでしょう。我家も穏やかなお正月を過ごしましたが、今日からは普通の日常生活。つまり私は掃除洗濯買物食事の支度等々に追われることになるのですが、その前に一つ大切な仕事(?)をしなければ!
西の方、ミラノの空へ向かって

マエストロ、お誕生日おめでとうございます!
幸多き良い1年となりますように!
お元気で素晴らしいご活躍を!

暖かい陽射しの中に「1月5日」を迎え、きっと良い1年となる・・・そんな予感がしてきます。いえ、良い1年にしなければ!
時間の流れは留まることも無く、新年が来たといってもな〜んにも世界は変わらないのだけれど、やはり“一年の計は元旦にあり”。自分のささやかなる“計”は持ちたいし、社会へ向けた“計”も、少しでも、一歩一歩でも、進めていきたいものです。そう、真っ直ぐ進むイノシシみたいに。イノシシは首が短いので方向転換が苦手なのです。本来は臆病な動物で、ノンビリしているのが好き、でも追い詰められると猪突猛進してしまうのだそうです。イノシシでもノンビリできるゆとりある社会にしたいですね。そして、より平和な世界に近づけますように。より広い土地で人々が平穏な暮らしを楽しめますように。より多くの人に豊かさが行き渡りますように。子供たちの未来が、希望が失われませんように。

マエストロの初仕事は暖かいスペインにて、ガリチア交響楽団とモーツァルトのピアノ協奏曲12番・24番での共演です。この交響楽団とモーツァルトの協奏曲を演奏するのは2回目(私の知る限りですが)。前回は2004年春、17番・21番を弾き振りし、翌年ウィーンフィルとの同じ2曲の弾き振りが録音されました。今年は初夏に今回と同じ2曲をウィーンフィルとの弾き振りで共演、クラーゲンフルトへの演奏旅行にも同行します。
この名曲を、ウィーンフィルと録音して欲しい、CDとして(DVDなら尚good!)世界中のファンに聴かせて欲しい・・・と切望しています。そのためにも、このスペインでの演奏会が成功することを、心から願っています。

さて、世界中のファンの喜びである昨秋の新譜「モーツァルト:ピアノ協奏曲第17番・第21番」が、“HMV Classical Awards 2006(協奏曲)”を受けました。これは、「HMV JAPANのクラシック専任バイヤーが中心となり、国内盤/輸入盤を問わず、独自の視点からその年を代表するアイテムを選出するもので、今回が9回目」だそうです。『ポリーニがウィーン・フィルを弾き振りした話題盤。オケのまろやかなアンサンブルの絨毯の上で悠然とまろぶ美しいピアノの音色にうっとり。巨匠ならではの風格に溢れた名演。』というコメントがありました。
レコード・アカデミー賞ほどの“権威”(?)は無いかもしれないけれど、公平で良識ある、ハイ・センスな選択に、Grazie!

今回はこれを記念して(?)、“レコード賞の受賞”のページを更新、全てのジャケット写真を載せました。それから“スケジュール”にアムステルダムとリスボンのプログラムを追加。“バイオグラフィー”にも少し追記しました。

このホームページも7年目を迎えました。温かく見守ってくださる皆様のご協力、お励ましに感謝いたします。
ラッキー・セブンを願って、今年も頑張って行きたいと思います。ご意見、ご感想を頂けたら、また少しでも楽しんで頂けたら、幸いです。これからも、どうぞよろしくお願いいたします。

2007年1月5日 17:05

Topへ