2010年の感動
皆様のご意見・ご感想と演奏会評(3)

京都公演

10月29日(金)《京都コンサートーホール》

プログラムC

バッハ
平均律クラヴィーア曲集 第1巻 BWV.846-869

京都 
《おじさん》さん
すみこさん、皆さん。大変お久し振りです。京都でバッハを聴いた後、深夜バスで帰ってきて、今、これを書きながら余韻に浸っている所です。

私は去年のマエストロをまったく聴けなかったので、2006年のルツェルン以来となります。そして聴くのがバッハの平均律ですから、哲学の道を歩いたり、銀閣寺を見に行って、頭の中をリフレッシュしてからホールに向かいました。

舞台上には、フルオーケストラが乗れるほど山台が配置されていましたがここに観客が乗ることはありませんでした。1階席やステージ裏の席は満席でしたが、2階席には少し余裕がありました。

客電が落ちステージだけが明るくなってしばらくしたら、ステージドアの向こうから「ライト… ブラック… ホール…」などと話しているマエストロの声が…、スグにドアが開き、マエストロは天井を睨みながら出て来ました。どうやら客席側上のライトが消えているか気にしていたようです。

1833席だそうですがとても天井が高く感じられるホールにファブリーニスタインウェイが響き出しました。最初の1番ですが思ったよりもピアノが鳴っているように感じられました。CDより少し速いようです。全体に低音を抑え目に弾いたので、少し高域寄りの煌びやかな音。だから、4番や8番。16番などのフーガでは、出すべき所の低音を断固として出すのでスゴイ効果でした。
5番や、特に15番など停滞無しで躍動感のみ。1曲を1つのフレーズと捉え一気呵成に弾き切る迫力はスゴイものでした。それが如実に現れたのが20番。激しくそれにしても速い… フーガなど圧倒的は迫力で言葉に出来ませんが、この最後の音をペダルを踏んで長く伸ばすんですが、20番だけそれが濁ってしまい残念でした。

フーガの最後の和音は、大体ぺダルで長く長く伸ばし、まだその余韻が鳴っている間にハンカチをポケットから取り出し汗を拭く… その姿が何度も見られました。さあ、次に行くぞって感じです。そう言えば、休憩後に登場する直前は、ステージドアの向こうから大きな鼻をかむような音が…  まあ、そんな事はどうでも良いのですが、3番や19番のフーガの躍動感。19番のプレリュードは、普通の演奏だと楽しげなんですが、マエストロが弾くと何か謎めいたひそやかな曲になるなど面白かったです。17番のフーガは、こんな所に仕掛けがあるんだぞ… みたいな演奏。どこを取っても息を抜けない大変集中力が必要な演奏でした。

開演が19:00。前半が終わったのが20:03。後半のマエストロの登場が20:29。24番が終わったのは21:21。やはりというか当然というかアンコールは無しでした。余韻に浸りつつ帰途についたわけですが、素晴らしい一夜でした!

10/30(土) 11:45

京都のバッハ 
《Yamaken》さん
二十数年来待ちに待ったポリーニのバッハを聴くことができました。

一貫して美しいピアノの響きとともに、一曲目の前奏曲から最後のフーガまでが、ショパンの前奏曲集やディアベリ変奏曲のように、一連の流れと様式をもったひとつの変奏曲集のように演奏されました。その中で、曲や調性が変わる毎に様々な情景が次々に現れて、ショパンやシューマンのようにロマンティックなフレーズ、ベートーベンのような重厚で構成的に弾かれる曲がある一方で、モーツァルトやシューベルトのような流れるようなパッセージ、オペラアリアの四重唱を聞いているようなフーガや、時には現代ものを思わせる激しいタッチもあったかとおもうと、バッハに立ち返って、モテットやトリオソナタ、オルガン曲などを連想させる響きもでてくるほど、多彩な展開。最後のフーガなどは、まるで「フーガの技法」を演奏しているかのような密度の高いものでした。ピアノ一台でここまでできるとは・・・。

ホールの響きや会場の静謐な雰囲気もよくて、ポリーニの集中力は最初から最後まで切れることなく持続し、本当にすばらしい演奏でした。古典から現代曲まで幅広いレパートリーをもつポリーニならではの、一晩でプロジェット・ポリーニをまるごと体験できた、貴重な演奏会でした。

10/30(土) 17:41

京都のレポートありがとうございます 
《すみこ》
おじさん様、Yamaken様、京都公演のご感想をお寄せいただき、本当にありがとうございました!

おじさん様は、ご多忙で昨年のショパン・プロなどお聴きになれなくて、残念でしたね。でも今回は京都へと赴かれて、素晴らしいバッハをお聴きになれて、本当に良かったですね。今年の演奏会も3つのプログラム全てがとても充実していて、技巧は勿論、気迫・集中力でも昨年に勝るとも劣らない好調のマエストロです。でも初めての京都のホール、「平均律」の日本での初演奏。どうだったかしら・・・と気がかりでしたが、やはり素晴らしい演奏だったのですね、良かった〜! 嬉しく思いながら、マエストロの登場や演奏中の様子を、目に浮かべつつ読ませていただきました。 CDで聴くだけでも、1曲1曲がみな美しく緻密で「どこを取っても息を抜けない」感じがしますが、その演奏にはどんなに大きな集中力を必要とするのでしょう・・・ましてライブともなれば。本当に偉大なマエストロですね!

Yamaken様もずっと待っていらっしゃったのですね、“ポリーニのバッハ”。願いが叶って、本当に良かったですね。1985年には各地で弾いた平均律なのに、その後長い間バッハに距離をおいていたマエストロ。でも、いつか「鍵盤楽器の旧約聖書」に戻って欲しいと、誰もが思っていたでしょう。それぞれ独自の魅力ある24組の前奏曲とフーガ、本当に多彩な、味わい深い曲集です。後世の多くの音楽家の“父”であるバッハ、ベートーヴェンやシューマンやショパンの作品の中に“子”があるのも不思議は無いけれど、その多様性を感知させながら様式感ある一つの大きな曲集として纏めるのは、至難の技でしょう、やはり“ポリーニならでは”ですね。

本当に素晴らしいリサイタルだったのですね。3日の東京での演奏会が、いよいよ楽しみになりました。予習(CDを聴くだけ、ですが)しなくては!!

11/01(月) 00:33

京都に於いての平均律 
《クロチルド》さん
わたくしは京都での平均律の演奏を素晴らしいと思いました。暗譜で弾かれたのですが、譜面をご覧になられながらであったとしても、この感想に変わりはなかったと思います。
ピアノをお弾きになる方々や、また音楽への造詣の深い方々の多いこのホームページで、全くの素人/ファン暦も短いわたくしが失礼すぎるとは思うのですが、わたくしがマエストロの演奏でもっとも感動することは、毎回マエストロのコンサートではなにか「展開」があるところなのです。練習、研鑽を積んだ結果の発表会にとどまるという事が全く無く、聴衆はその都度に、音楽の展開や進化といった素晴らしい現象を証人として立ち会うというか、経験できることが言葉では言い表せない至福なのです。またこのことはCD録音にも感じられると思います。
東京での平均律の演奏の前半は不本意ではあられた様と知りましが、それは譜面を付けられたことで解消されたとのこと、京都での演奏もミスはあったということですが、円熟であるとか、角が取れたという言葉を跳ね返すような最近のマエストロに感じられる、音楽を歴史に埋ない、いつも作曲家の意図を現代に蘇らせるというマエストロの念いを目の当たりにした一夜であったと、帰り道をスキップしたくなる程心が躍りました。
11/06(土) 03:41



今回も三十三間堂を訪れたというマエストロ
これは1974年の初来日時に訪問した若きポリーニ

Bravo e Grazie! Maestro!! 2010年の感動

東京公演(プログラムA)

東京公演(プログラムB)

東京公演(プログラムC)

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