第7夜です… 《おじさん》さん すみこ様、私の体調の事を気遣っていただいてありがとうございました。ポリーニの翌日はすべて出勤日。危うく遅刻しそうになった日もありましたが大丈夫でした。 zoo様。11月11日のレポートありがとうございました。現代音楽への熱い思いは私も聞きたかったです。 さていよいよリサイタルです。皆様、いかがでしたか。いや〜〜〜〜〜〜良かった! 何時ものように舞台上には50人程の学生さん達が乗っています。サントリーホールは満員なのでますます人で密集している感じです。ポリーニ登場の拍手の後、一瞬の静寂、しかし直ぐにポリーニは演奏を始めます。1曲目はブラームス幻想曲集op.116。第1曲の出だしはピアノが鳴り過ぎです。フォルテの音が混濁してうるさい感じ。私の耳がまだ慣れていないのかもしれません。第1曲が終わるとイスの高さを調整しています。第2曲も、ルバートがリズムの歪みみたいに成ってしまい落ち着きません。第3曲も印象が薄い演奏… しかし、第4曲から本来のポリーニに戻って来ました。ぐいぐい引き込まれます。何て美しい音楽… ブラームスが58歳〜59歳で作曲した曲です。今、ポリーニは60歳。同世代だけが通じるものが何か有るんでしょうか… 第4曲〜第6曲の間奏曲は本当に美しかった… 随所に現れる不思議な音が、これからの音楽を予感させる響きだったと聞こえるのは、このプロジェクトのおかげなのですね! 2曲目はウェーベルンの変奏曲です。アンコールを除くと確か3回目となります。1回目は1974年で残念ながらこれは聞いていませんが、1995年の時は何か落ち着かないウェーベルンでした。今回は、やや速めのテンポながら美しいとしか言いようが無い演奏でした。第1楽章は特に名曲。その弱音の音の素晴らしさ… 11度の連続なのにポリーニの手では余裕でコントロール出来るようですね。第2楽章にはリスクがあって、音の跳躍の所が2度とも鳴らなかったのは残念でした。 3曲目はシュトックハウゼンの第5と第9。1989年と1998年に続いて3回目です。1989年の時、記者会見の記事で、この曲は新しいレパートリーだという発言が有った曲です。ピアノの音の鳴りがガラっと変わりました。第5は、ドイツの古典的な厳しい音が聞こえ、ああ、ここにシュトックハウゼンを演奏するのは、休憩後のベートーヴェンとの繋がりを考えてなんだな、と感じました。1989年の時もブラームスから始まって、シェーンベルク、シュトックハウゼン、ベートーヴェンと続きましたから、ポリーニのプログラムビルディングの中でも気に入っている一つなのかもしれません。第9は現代音楽の中でも有名な方なので、この曲はポリーニ以外の人でも聞く機会が結構ある曲で、私も数人の人の演奏を聞いています。しかし、今日ほどロマンティックに感じた事はありません。前半の執拗な和音の連打。中間の和音とその中のトリル。後半の高音部の急速なフレーズとトリル。どれも即興性というか、まさに今ここで生まれている音楽なんだと実感させてくれる演奏でした。どうしてこんな響きの曲に引き込まれるんだろう、と思ってしまうぐらいグイグイ引き込まれました。後半の急速なフレーズは、楽譜にすべての音が書いてあるんですが、見事に楽譜から離れてポリーニの音楽になっています。やはり、第5、第9、第10とレコーディングしてもらいたい曲です。 休憩中にファブリーニ氏登場。ピアノの微調整をしました。ファブリーニ氏の特徴である単音重視のテクニックは、何時見ても不思議な感じです。普通、調律といったら、主になる音を大きく弾いて小さく他の音を弾いてその響きに耳を傾けてする、と思われるのですが、ファブリーニ氏は、中音域から一つ一つ単音で上がっていき、気になる音をチューニングして、低音域に飛んで下に下がって行きました。88鍵の内半分ぐらいはチェックしたようですが、和音を弾いたのは1〜2度だけでした。前に、客席の一番前でその様子を見ていた人がファブリーニ氏に話しかけるという事がありました。まったく非常識な事で、ファブリーニ氏も両手を広げて、首を横に振っていましたが、今回はそういう事もありませんでした。 休憩後はいよいよベートーヴェンです。第24番と第23番「熱情」。1986年も1993年もこの組み合わせでした。1986年の生は聞いていませんが、この時は録音が放送されたのでそれを聞いてました。「熱情」はその他に1976年のザルツブルクのライブの録音があるので、これがもっとも気に入っている演奏です。1993年は、ベートーヴェンのソナタの夕べだったのに、もっとも印象が薄い演奏会でした。 さて24番です。ゆったりとした優しさで曲が始まりました。もうこの部分が聴けただけで幸せです。第1楽章前半は、そのゆったりした優しさが保たれて素晴らしい演奏でした。途中からちょっぴり速くなってしまい、ちょっと残念でしたが、とにかく美しい演奏でした。第2楽章は、速いので私は少し取り残されてしまいました。こういう小さなソナタの、第19番とか第20番をポリーニが弾いたらどんな感じなんだろう、早く聴いてみたい、とちょっぴり思いました。 いよいよ「熱情」です。ポリーニの弾く音が次から次へと有機的に結びついていく感じ、今回のバルトークのピアノ協奏曲やさっきのシュトックハウゼンの第9でも感じられたこの感じ、ポリーニの出す音すべてが音楽の表現に向かっていて見事の一言です。ゆったりとした大きくガッチリした「熱情」でした。1976年の録音の時は、強弱の対比がその頃のポリーニらしくダイナミックで、どんな急速な所でもスッフォルツァンドがあればちゃんと大きくするような、一種、律儀ともいえる演奏でしたが、今日はそういう場所も控えめで少し抑えた感じです。やさしい感じです。でも内面的に秘めた熱情がほとばしるような演奏でした。この演奏を聴くと、1976年当時のポリーニは、外面的にほとばしっていたんだなと納得させてくれました。どっちも好きですが、やはり生演奏にはかないません。今日の「熱情」も一生忘れられない演奏となるでしょう。 この後にはもう良いです、と言いたいんですが、ポリーニは3曲アンコールを弾きました。ベートーヴェンのop.126のバガテルの3番と4番。そしてシェーンベルクの6つのピアノ小品op.19です。このシェーンベルクは綺麗で素敵でした! 11/14(木) 01:34 |
第7夜ちょっとはらはらしました(3) 《ホワイティー》さん 第7夜、現代曲は生で見ながら聴くと面白いですね。以前、ウェーベルンの2曲目で左右の手が交差して弾いているところなど、CDで聴いているだけでは絶対に判らないことを目のあたりにして感心しましたが、今回も楽しかったです。 アンコール最後のシェーンベルクも良かったですが、現代曲になると途端に咳き込む人が増えるのに閉口しました。 ベートヴェンは最初の24番で、ミスがぽろぽろと目立ち、ちょっとはらはらして、これでは次の熱情はどうなるか? とちょっと心配したのですが、こちらは大きなミスも無くほっとしました。以前と同じですが、最後の部分で腰を浮かせて全体重をかけるようにして弾いているところは何度見ても興奮しますね? 93年と比べて左手の ff が弱いように感じましたが、これはどうも聴いた場所によるもののようです。 昨夜は1F 中央の通路より少し奥、招待席の少し後ろでしたが、ここでは既に全体的に少し弱く聴こえてしまうようです。93年は文化会館だったという違いも関係しているでしょうか? なお、熱情が終わって拍手が続いている中、奥様が席を立たれました。講演会の際にアンコールは既に決めてあると聞いていましたので、あぁ、今夜は無しかなぁ、と内心がっかりしていましたがアンコールが始まりうれしかったです。 予想通り? バガテルで、2曲目まででおそらく終わると思っていたところで、マエストロが曲目紹介(おそらく国内では初めて?)してのシェーンベルクでした。最初は意外に感じたものの、74年ザルツブルクがベートヴェンとシェーンベルクというプログラムでしたし、今回のプロジェクトの曲目の中にシェーンベルクのピアノ曲が入っていないのに疑問を持っていましたので、アンコールは既に決めてある、ということから、この曲は今回のポリーニ・プロジェクトではアンコール曲として取り上げる、ということを予め決めていたのだろう、と納得しました。 次回は第6夜と同じのもう少し前の席なので、もっと良い音で聴くことができるでしょう。楽しみです。では、また。 ※第6夜・講演会・第7夜のご感想をまとめて頂きましたが、ここでは1夜ずつ掲載させていただきます。ご了承ください。 11/14(木) 12:14 |